高齢者向けホームのご入居者様の生活の質(QOL)向上を目指すベネッセスタイルケアでは、高い専門性をもつ介護スタッフを認定する社内専門資格制度(社内通称:「マジ神(かみ)*」制度)を設けています。2022年には「マジ神」の知見や観点を教師データとした「マジ神AIソリューション」の開発を推進するセンシングホームの運営も開始し、「人」ならではの気づきとテクノロジーを融合させた介護DX(デジタルトランスフォーメーション)に挑戦しています。大切なのは、ご高齢者に、その方にとっての「ありたい姿・状態」に近づいていただくこと、介護スタッフがそのお手伝いをする仕事に喜び・やりがいを感じられること。テクノロジーをどのように活用してその目標を実現しようとしているのか、現場の声をもとにご紹介します。

「マジ、神ッスね!」から生まれた介護スタッフ「マジ神」の真髄は、高い専門性と実践力

「マジ神」という言葉が生まれたのは、ホームでの出来事がきっかけでした。認知症をお持ちのあるご入居者様のケアがうまくいかず悩んでいた現場に、高い専門スキルをもつ介護スタッフがサポートに入り、その方のこれまでの生活記録といまのお気持ちを照らしながらケアをした結果、ご入居者様の笑顔を引き出すことができたのです。その様子を見た若手社員が思わず発したのが、命名の発端となる「マジ、神ッスね」という言葉でした。

この「マジ神」であるベネッセスタイルケアの枝松裕子は、各ホームでのケア向上に取り組むとともに、社内研修の講師も務めています。お一人おひとり事情が異なり求めるものも違うご入居者様に対し、ケアの正解を見つけることは難しく思えます。そんな中で枝松は、介護や薬、病気などに関する豊富な専門知識を身につけ、その方に関するさまざまな記録や情報を見ながらご本人の「ありたい姿・状態」を想像し、「いま何をすべきか」を考えて行動していると言います。

「介護のセンスがあるからできるんですね、と言われることがあります。でも私たち『マジ神』がやっているケアは、基本的には、科学的な根拠による知識と経験をもとに考え、動いているんです」(ベネッセスタイルケア 専門性開発部 枝松裕子・介護職「マジ神」)

ベネッセの介護の現場では、数年前からテクノロジーの活用に力を入れていますが、睡眠の状態をセンサーで測る実証実験を行った際には、こんなこともあったとか。「睡眠センサーのデータが好転したものの、ぼんやりと過ごすことが多くなったご入居者様がいらっしゃいました。『これが、この方らしい姿だったかな?』とスタッフ間で話しあい、医師と連携して投薬を調整するなどしたところ、その方は本来のお世話好きな人柄を取り戻し、いきいきと過ごされるようになったのです。データ上はうまくいっているように見えても、その方が求める暮らしに近づけるとは限らない、QOLが上がるとは限らないのです」。

経験が少ないスタッフにも早い時期に仕事の喜びを知ってもらうため、AIを活用

その方らしい暮らしに近づいていただくためのケアは、超高齢社会を豊かに生きるうえでますます求められます。ベネッセスタイルケアではいま、「マジ神」の知見を取り入れた「マジ神AIソリューション」の開発・活用をすすめています。介護の現場での日常の記録やセンサーのデータを、高い専門性を持った「マジ神」が深く解釈し、その観点を「教師データ」としたAIを、介護スタッフの育成・研修にも活かそうというものです。

専門性の高いスタッフのノウハウを共有することで経験の少ないスタッフにも早い時期に成功体験・仕事の喜びを感じてもらい、介護職の定着を促すこともねらいとしている。

枝松は、「マジ神AIソリューション開発に参加することで、機械でできることと「人にしかできないこと」がそれぞれあると、わかってきたと言います。
「センサーデータからはさまざまな気づきを得られます。見るべきデータはこれで、どの情報とどの情報が関係しているかといったマジ神の経験や知識をもとにした思考まで「マジ神AIソリューション」で共有できれば、より多くのスタッフの育成にも役立つはずです。そして、私たちがお一人おひとりの『ありたい姿』に寄りそい、その実現のために深く考え行動することは、人にしかできない大切な役割だと思うのです」。

テクノロジー活用の真の目的は、ご入居者様のQOL向上。その実現のために、「マジ神AIソリューション」が「人だからこそできること」をサポートし、質の高いサービスにつなげる。

ご高齢者がよりよい人生を過ごすことのできる社会へ。その一翼を担う仕事はすばらしいと思えるように!

2022年3月には、「マジ神AIソリューション」の実証実験も行うホーム「グランダ四谷(東京)」がオープン。ご入居者様の生活リズムや健康状態を把握するための各種センサーを全居室に設置し、それらのデータも参考に、専門性ある多職種が連携してQOL向上に取り組んでいます。「マジ神AIソリューション」を活用することで、より多くの人が、その方らしさに深く寄りそった介護ができる社会になるよう、志を同じくする他社とも協力しながらの挑戦です。

「ベネッセの介護」の根底にある「自分や自分の家族がしてもらいたいサービス」を実現し、そこに関わるスタッフが仕事の喜びや意義を心から感じられること、さらには日本の介護のステージを変えていくことを目指して、これまでの既成概念にとらわれない試みが日々進んでいます。

情報提供

・株式会社ベネッセスタイルケア
https://www.benesse-style-care.co.jp/
「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを提供する」という理念のもと、「その方らしさに、深く寄りそう。」ことを大切に、介護事業を運営しています。