民間企業における障がい者雇用は増える一方、長く活躍するのは難しいという現実の中、障がい者一人ひとりの特性を活かした活躍の場の創出と成長支援を続ける会社があります。今般のコロナ禍でベネッセビジネスメイトが挑戦したのは、障がい者の働き方改革でした。「彼らとならば一緒にできる」確信を元に、新しい働き方を推進した担当者に、新しい試みの過程や、彼らを通して感じた“働く”ことへの思いを聞いてみました。

コロナ禍で行った働き方改革。開発も運用も障がい者によるリモートワーク

2019年の法改正によって、従業員数45.5名以上の民間企業には障害者雇用義務が定められ、2021年3月より法定雇用率が2.3%に引き上げられた中、民間企業における障がい者雇用は増える傾向にあります。しかし、その一方で、障がい者が職場で長く活躍することは難しい、という課題も明らかになっています。

働く意欲ある障がい者に対し雇用の場を創出・提供する、ベネッセグループの特例子会社であるベネッセビジネスメイトは、近年オフィス系業務の遂行だけではなく、業務を効率化・自動化するためのシステム開発も行うなど、業務の拡大や多角化を進め、ベネッセグループのさまざまな事業に貢献をしています。その中で、システム開発を担うDX人材として活躍しているのががいのある社員です

DX人材として働く障がい者の職場定着率は100%(※1)になるなど、一人ひとりの特性に合わせた依頼方法や強みを生かす支援によって、しっかりと職場に定着し活躍を見せていた中で発令されたのが新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言でした。

前例のない事態の中でベネッセビジネスメイトが実施したのは、新しい働き方への挑戦。リモートワークで、システムの開発も運用も障がい者という体制で、試行錯誤の中、新たな業務効率・自動化ツールの開発が行われました。

※1 DX人材として働く障がい者5名の勤続年数。
入社7年目:1名、5年目:1名、3年目:2名、入社2年目:1名。

新しい働き方のメリットとデメリット。少しずつ手応えを感じ、多くの開発を実施

障がいのある社員をサポートしながら、働き方改革を推進した担当の野口に話を聞いてみました。

「緊急事態宣言を受けて、感染防止のために2020年4月から開発を含めた全ての障がいのある社員が自宅待機となりました。それまで手掛けていた開発も中断せざるをえない状況となり、その状況が長引くにつれ、次第に生活リズムの崩れや、曜日感覚の希薄化など、体調維持に対する不安の声が聞こえるようになってきました。そこで、環境や準備を整え、5月中旬からリモートワークを開始しました」

「実際に始めてみると、彼らにとってテレワークによるメリットは色々あることが分かりました。例えば、通勤に伴う体力の消耗や、執務中に気になる周りの声などのストレスが減ったことで、より開発に集中できるようになったのです。Teams(マイクロソフト社が提供する、ファイル共有やチャットなどが行えるプラットフォーム)との相性も良く、指導員と同じ画面を見ながら、どう開発するか綿密に打ち合わせを行うことができ、確認したいときは都度チャットを利用し、口頭の伝達ではなく文字化することで認識の違いも少なくなりました。出社している時は他の人に声をかけるのも小さなストレスだったのが、チャットは好きな時に確認できるので、コミュニケーションに負担を感じる社員にとって良いツールとなりました」

「一方で、課題になった点もあります。仕事とプライベートの区切りがつきにくくなり、生活のリズムが再び崩れ始めたことで、十分な睡眠が取れない人も出てきました。この問題は早めにアラームをキャッチし、本人にとって無理がないよう支援機関やご家族と相談して一緒に解決に向けて動きました。また、毎日の業務量や内容を本人の体調と相談しながら優先順位をつけ、焦りや不安のない環境を用意するとともに、疲れが残っているようであればこまめな休憩や休息を促すなどで、次第に体調面・業務面ともに安定していきました」

朝会の様子(イメージ)。リモートワークを始める前には、戸惑いが生じないよう詳細な手順書などを用意。スタート後は「チームでやっていく」点を大切に、体調や環境に問題がないか、毎日確認するオンライン朝会を行っている。

こうして新しい働き方が軌道にのったことで、開発スピードは通常の3倍以上に。例えば、備品貸し出し業務など、それまで管理簿へ手入力していた業務をタッチパネルで依頼でき、未返却者にはボタン一つでメールを作成できるシステムを作るなど、業務効率化・自動化につながる開発を手掛け、結果として多くの成果を生み出すことができました。

“働く”ことは人が人として生きることにつながる。誰もが“働く喜び”を感じられる社会をつくりたい

新しい働き方に挑戦した背景にあった思いと今後について、野口は次のように語りました。

これまで仕事をしてきたみんなとならば、リモートワークでの開発業務を一緒にできる、と確信がありました。それぞれの強みを活かして、みんなで新しい働き方に挑戦したい。そう思って社長(ベネッセビジネスメイト社長の茶谷宏康)に直訴したところ、理解をしてもらい今回の試みを進めることができました」   

「ベネッセビジネスメイトでは、コロナ禍においても、それぞれの社員に合わせた柔軟な働き方を共に考え、お客様へのサービス向上をめざしています。彼らはみな、どうしたらお客様に喜んでもらえるか、日々の業務の負担をなくしたい、という熱い想いで仲間と議論し、業務に取り組んでいます。『誰かのために自分の力を活かして喜んでもらえることがうれしい』というのが彼らから届いた声です。また、『プライベートでうまくいかない時、仕事があるから乗り越えられた』という声もありました。日々彼らと接している中で思うのは、“働く”ということは単に衣食住のためだけではなく、人が人として生きることにつながっているのだ、ということです。“働く喜び”を多くの人が感じ、働きがいのもてる社会をつくりたい。そう心から願いつつ、彼らが長く活躍できるようサポートを続けていきたいと思います」

ベネッセビジネスメイトはさらなる障がい者雇用の促進、そして多様な人材が活躍する社会を目指して、これからも取り組みを続けていきます。

情報協力

株式会社ベネッセビジネスメイト

ベネッセグループの特例子会社として2005年設立。
メールサービス・クリーンサービスなどの業務を受託。2017年より、ベネッセグループ全体のシェアード業務を受け負うなど、「ベネッセグループの事業支援」にも業務を拡大中。
個々人に合わせた働きやすさを大切にしながら、社会にとってなくてはならない存在をめざしている。
https://www.benesse-bizmate.jp/