2022.4.21
次世代との対話から考える、これからの時代の「Well-being」とは?
ベネッセという社名は、ラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」の造語で、「よく生きる(=Well-being)」を意味します。心身と社会的な健康などを意味するとされる「Well-being」への社会的関心が高まる昨今、ベネッセは1990年より「よく生きる(Well-being)」を企業理念として掲げながら、事業を通してその追求を続けてきました。加えて、ベネッセ教育総合研究所では「Well-being」をテーマとした対話や調査研究に取り組んでいます。時代や環境の変化が著しい社会において「Well-being」であるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」で行われた、対話の中でこれからの時代の「Well-being」を考えるセッションについてお伝えします。
若年社会人への調査から見えてきた「Well-being」のキーワード:「人とともに学ぶ」
2月24日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」では、「Z世代との対話から考える、これからの時代のWell-being」をテーマにしたセッションが開催され、ベネッセ教育総合研究所の小村俊平がファシリテーターとして登壇しました。
セッション冒頭、小村から2月に発表されたベネッセ教育総合研究所、立教大学の中原淳教授、パーソル総合研究所による「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」について紹介がありました。
「調査対象となった25歳から35歳の若年社会人。興味深いのは、幸せに活躍する人の多くには、学習への取り組み方として人とつながり、人と交わりながら学ぶ『ソーシャル・ラーニング』という学び特性があることがわかりました。つまり、幸せに活躍する、特に『Well-being』であるためには、『人とともに学ぶ』ということが、ひとつのキーワードになると感じています。」
未来を担う「Z世代」が考える「よく生きる」とは:人を巻き込みながら「みんなのWell-being」を実現していく
では実際のところ、これからの社会を担っていく「Z世代」と呼ばれる年齢層の若者の考えはどうなのでしょうか。パネリストとして登壇したのは、さまざまな領域で各々活躍する3人。
それぞれ学生という立場でありながら、社会課題の解決を目指した活動に取り組んでいます。そもそも社会への関心が広がった起点はどこにあるのでしょうか?
平田氏「高校1・2年生のときに経験した海外での研究発表や留学の学びを生かせる大学受験をしたいという思いから、総合型選抜(*1)に挑戦。自分と向き合い、『将来何をしたいか』と主体的に進路を考える中で、総合型選抜は『自分の可能性に気づくきっかけになる』と感じました。これから同じように総合型選抜を目指す学生たちを支援する取り組みにつながっています」。
久保氏「ABABAでは就職活動の最終選考で落ちてしまった学生に対し、それまでの取り組みを評価して他社の選考に推薦するサービスを展開しています。立ち上げのきっかけとなったのは、就職活動で苦戦していた友人の存在。彼と同じように就職活動で精神的にダメージを受けるような現状を変えたいと思い、大学4年生の時にABABAを起業しました」。
江連氏「インターネット上で見た女性の体や下着に関する広告に強い疑問を持ち、その疑問の根本にある想いを自分でも理解するために周りにヒアリングを重ねました。口に出しづらい女性の体の悩みの声やニーズを知り、そういった課題を社会に問題提起していくべく、「I_for ME(私は、”わたし”のために)」というブランドを立ち上げました」。
3人のエピソードから見えてきた活動の原点。小村から「みなさんにとっての『Well-being』とは?」と問われると、自身の活動と結び付けてそれぞれが想いを語りました。
平田氏「没頭できているときが、一番『Well-being』な状態だと思います。没頭できるものを見つけるためには、まずは自分に興味を持つことが大事。『自分は何が好きなのか』と自問自答を重ねることが大事なのではないでしょうか」。
江連氏「没頭できることはすごく大切。加えて依存先をどれだけ増やせるかも「Well-being」を保つためには大事だと思います。弱さを自覚して受け入れ、自分のネットワークの中でどう生きていくかが重要だと思います」。
「没頭する」という共通点も見えてくる中で、小村から次の問いかけがありました。
小村「3人のお話から、自分に向き合うことが『Well-being』につながると感じました。一方で3人とも、『私』の問題意識に閉じこもることなく、活動が「みんなのWell-being」にも広がっているように思いました。ご自身の関心が『私』から『みんな』に高まったきっかけがあれば教えてください」。
江連氏「『他者のために』という考えではなく、自分で見つけた課題を突き詰めた結果、実は他の誰かの役に立っていた、ということが往々にしてあります。『社会課題を解決するんだ』と思うのではなく、自分自身や自分から半径5m以内にいる人たちを幸せにしたい、という思いが出発点にあります」。
久保氏「弊社では『隣人を助けよ、自分事であれ』を社訓に掲げています。これまで立ち上げてきたサービスは全て、私の友人や周りの人が抱えている課題を解決したい想いが起点にあります。周りの人を幸せにしてお金をいただくことがビジネスの本質であり、隣人に寄り添える起業家でありたいです」。
(*1)総合型選抜:旧「AO入試」。エントリーシートや小論文、面接などで受験生の能力や適性を総合的に評価する大学入試の方式
誰もが幸せに活躍できる未来を目指して:あらゆる世代の人との対話を通して「Well-being」を問い続ける
セッションを終え、小村に話を聞きました。
「今回登壇してもらった3人の活動は三者三様。しかし、それぞれに『私自身』の想いを大事にしながら、社会全体をよくしようとするところに共通点がありました。一般的にZ世代は『社会貢献意識が強い』と言われていますが、3人の原動力は、『社会貢献がしたいから』というわけではありません。ものすごく自然体で、自分の身のまわりのことと社会の問題がつながっている。そして、自分の価値観をもったうえで、それを押し付けることなく共感者を増やそう、という意識が感じられました」。
「先般の調査や今回のセッションで、これからの時代において『Well-being』であるためのヒントを探ってきました。私自身が『Well-being』の要素として大切だと考えるのは、『自分で選び取る』ということ。なおかつその選択によって自分と自分を取り巻く社会がよくなっていく期待感を持てることです」。
「『Well-being』は相手の幸せが自分の不幸せになるようなゼロサムゲームや奪い合いということではありません。自分の想いを大切にしながら、人とのかかわりの中で学び、『私だけ』ではなく社会全体の幸せを考えていくことが『Well-being』につながると感じています」。
「私が参加させていただいたOECDのEducation 2030というプロジェクトの国際会議では、これからの教育のゴールは『Well-being』であるという議論がなされました。ベネッセは『Well-being』を指す『よく生きる』を理念に掲げていますが、時代に伴い『よく生きる』も変化します。これからもこうした対話や調査研究を通じて教育や『Well-being』の在り方を問い続け、誰しもが自分らしく幸せを実現できる未来につなげていきたいと思います」。
情報
「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」
https://www.sustainablebrands.jp/event/sb2022/
米カリフォルニア州で2006年に誕生したコミュニティ「サステナブル・ブランド国際会議」は、学びと共創の場として世界10カ国以上で開催。今年の世界共通テーマは、昨年に続き、サステナビリティの一歩先を見据えた「Regeneration(再生)」です。日本での開催は6年目を迎え、国内では最大級のSDGsイベントとして、200人以上のスピーカーが2日にわたって70以上のセッションを繰り広げました。
「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」
https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/education/2022/02/22_5677.html