2023年に厚生労働省が公表した令和2年3月に大学を卒業した新卒就職者の就職後3年以内の離職率は32.3%で、約3人に1人が早期に退職する状況が続いています。(※1)
日本の労働力人口は1998年をピークに近年は減り続けており、未曾有の採用難の時代に突入しています。その中で多くの企業には今、人を経営の重要資本と考える「人的資本経営」の実践として、自社らしさを生かした人の育成が問われています。
一方の学生は、終身雇用が過去の時代のものとなり、若手のうちから裁量をもって成長実感を得て働くニーズが高まっています。
ベネッセコーポレーションは「人を軸」とする経営の実現に向け、ラーニングカルチャーをベースに、個人の自律的な成長支援を目指しています。新卒採用においては、20年以上前から大学生向けキャリア教育プログラムを実施、時代とともにそのアップデートを行っています。プログラムに参加した大学生は、どんな成長を実感したのでしょうか。プログラムを企画・実施している採用担当の思いとともにご紹介します。


(※1) 厚生労働省が発表している新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)より

8割以上の学生がインターンシップに参加
企業選考にも影響し、新卒採用では「当たり前」に

学生と企業とのすれ違いである“新卒ミスマッチ”を防ぐため、インターンシップを実施する会社と、それに参加する学生が増えています。

インターンシップとは、学生が企業で業務を体験することができる制度です。
学生にとっては、業務内容だけでなく、会社の文化等も感じながらその会社で働く具体的なイメージを持つことができ、入社後のギャップを減らすことができるインターンシップは、就職活動の中で「当たり前」に参加するものとなりつつあります。


【グラフ1】
「1社」から「10社以上」の回答合計が82%となり、約8割以上の学生が夏インターンシップに参加。
【グラフ2】
参加理由は業界理解、企業理解が上位。
※株式会社ベネッセ i-キャリアが運営する「dodaキャンパス」の「2025年卒大学生 夏のインターンシップ」に関する調査より

さらに、2019年に実施された調査では、インターンシップに参加した人の3年以内の離職率は、非参加者に比べて約2分の1となるなどその後の大きな差にもつながっています。インターンシップは実施する企業側にとっても、自社に定着し活躍する人材と出会える大きな機会です。

インターン参加者の入社後3年以内の離職率は16.5%なのに対し、非参加者は34.1%。また、インターンを経験した後、同じ業界の会社に入社した場合の離職率も23.1%と、全くインターンに参加していない人に比べると低い ※パーソル総合研究所「企業インターンシップの効果検証調査」より

人々の暮らしの何を解決し
次にどんな価値を創っていくかを考え抜く

ベネッセコーポレーションが実施しているインターンシップでは、単なる職業体験ではなく就職活動中の大学生がより「成長を実感できる」内容となっています。

たとえば「End-User・企画メソッド」と呼ばれる、事業会社における企画策定の体験プログラムでは、参加した大学生がエンドユーザーである顧客のペルソナ(架空のユーザー像)を理解したうえで、その課題を解決するための商品やサービスを企画して発表を行います。

「発表して終わりではなく、市場の最前線を知り実際に企画から商品・サービスの開発や提供を行っている社員などからの講評をしていきます。講評する中堅社員たちには、学生たちにとって学びが多くなるよう、お客様扱いすることなく新人や2-3年目の若手社員にするのと同様のフィードバックを依頼しています」と採用領域の責任者である北村(ベネッセコーポレーション 人財部)は語ります。そのため、「それは顧客の課題解決となっておらず企画の筋が通っていないのでは?」「競合優位性はあるか?」といった本気のフィードバックへとつながり、学生からは

「企画という言葉は知っていても、体系的に学ぶのは初めてだったので有意義だった」

「世の中に役立つサービスを提供している事業会社での仕事を体感でき、自分もその一部になりたいと思った」

と、成長を実感しながら、ベネッセで働くことのイメージが持てると反応が数多く寄せられています。

4種類あるプログラムのうちの1つ。ベネッセの企画メソッドを通し、自分の思考を形にする術を学べる

受け入れる側の企業と学生側双方の深い相互理解

長年、新卒採用に携わり大学生と接してきた北村は「学生のキャリア観は時代とともに変わってきていて、新卒で入社した会社で生涯働くような意識は今の学生たちにはほぼなく、2社目・3社目と転職しながら働いていくという考えがスタンダードになりつつあります。1社目はいったん入社する“ファーストキャリア”と考える人もいますが、 またとない大切な若手時期だからこそ、そこで選択する1社目をただの通過点とするのではなく、『顧客価値を考え抜きながら働く面白さ』を知り、ぜひ何かを成し遂げる期間にしてもらいたい」と語ります。

「働くことで何者かになりたい、と漠然と思ってはいても具体的に何を実現したいのか、イメージできていない学生も多くいます。それでもこのプログラムに参加することで、『世の中の役に立つ事業にコミットして、その先にいる人に関わる社会課題を解決したい』と目標がハッキリと定まっていく様子を何度も目にします」

最後に、北村にインターンシップのプログラムを通して大学生に何を感じてほしいかを聞きました。

「プログラムの目的は、学生たちと会社双方の深い相互理解です。今の学生の情報の取り方はSNSが中心で、我々が知ってもらいたい最新の会社の姿は届けにくくなっています。ベネッセは、世の中で最も不易(※2)な『人の営み』に事業の軸を置いています。時代にあわせた進化をとげながらも、赤ちゃんからお年寄りまで一人ひとりの「よく生きる」を実現することが、我々の企業活動の原点。自分や家族に使ってほしいサービスを企画・提供している事業会社であることを、プログラムを通して感じていただきながら会社の今を知り、同時に働く面白さにも気づいてもらえればと思います」

「様々な企業がインターンシップを提供していますが、学生の方には、自分自身の体験を元に魅力と感じることができたら応募へと進んでくれればうれしいですし、そこで違うなと思うのもアリです。こうした機会を活用して企業のことを深く知り、幸せな社会人生活の一歩を進んでいただきたいですね」

ベネッセの大学生向け職業プログラムは地方の学生にも広く参加できるようすべてオンライン開催で実施されています。今後も、働くことの解像度をあげ成長実感を体験できるプログラムを提供していきます。

(※2)「不易」とは時代を通じて変わらないこと。不変のもの。

情報協力

北村 洋子(きたむら ようこ)

株式会社ベネッセコーポレーション
人財・総務本部 人財ソリューション部 採用課 課長
2008年に新卒で大手金融機関へ入社後、教育事業の持つ可能性の大きさに心揺さぶられ、2011年にベネッセコーポレーションに中途入社。個人向けの商品企画・開発に携わり、2017年に人事へ異動し採用に従事。現在は、採用領域全体の統括。

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