学校に通いづらさを感じる子どもが増えています。不登校やひきこもりのほか、発達障がいなどの理解の深まりから、“より自分に合う環境を求める”という社会的風潮もあいまって、今13人に1人(※1)の高校生が「通信制高校」に通っており、その人数は毎年増加しているといわれています。ベネッセグループの一つで、進学塾や習い事のほか、保育・アフタースクールなど総合教育サービスを展開するアップ教育企画は、これまでの事業で培ったノウハウを元に、そうした子どもたちに合う空間を提供し、柔軟な学習をサポートする通信制高校のサポート校として「アップ高等学院」を2024年4月兵庫県西宮市に開校します。担当者に、開校にかける思いを聞きました。
※1)文部科学省「学校基本調査(2022年(令和4年度)より)

人とゆるやかにつながりながら学ぶ場や
“居場所”として、学習と生活をサポート

サポート校とは、通信制高校と連携しながら、そこに通う生徒を支援するために設けられた教育機関です。新たに開設する「アップ高等学院」では、提携している通信制高校にレポートを提出したり、短期集中で行うスクーリング(学校や会場に登校して、先生から直接指導を受けること)に参加したりすることで、高等学校卒業資格を得ることができ、さらに一人ひとりに合う形での日常学習と大学進学まで総合的にサポートします。

その開校は、トップダウンで決まったのではなく、「現場から“開校したい”と声があがった」と新規事業を立ち上げる部門・研究開発本部開発部の責任者である高尾は言います。
「個別指導を行う塾の現場にいると、塾には通えても高校には通うことができない、という生徒が年々増えているのを肌で感じていました。元々アップ教育企画は40年以上塾を運営しており、一貫してお子さまへの寄り添いを大事にしてきました。不登校など、学校に通いづらいという子どもたちにとって必要なのは、大学受験のノウハウだけではなく、今を大事にして自分の気持ちに合う居場所をつくること。アップだからこそ、人とゆるやかに繋がりながら学習や生活をサポートするような新しい場所をつくれると思いました」

通信制高校の多くは自宅学習を基本としており、自学自習力が必要なため不安に思う人も。サポート校(※2)では「生徒の主体性に任せた学び」の部分をサポートしていく。
※2)サポート校は学校教育法第一条で定められている高等学校ではなく、学習や生活を支援する民間教育機関。高校卒業資格を得るには別途、通信制高校への入学と卒業が必須となる。

自分に合った安心できる学びの環境
進学塾を運営しているからこその大学進学サポートも

「アップ高等学院」は、一人ひとりの希望に合わせた学びを支えられるよう、多様な通学型やコースを設けています。通学型は週5回の通学からオンライン参加まで、柔軟に選ぶことができ、コースは学校推薦を目指すものから、6教科をバランスよく学び国公立大学への合格を目指すコースまで、豊富に用意しています。
アップ教育企画には、長年にわたり大学受験塾を運営してきたため、教科指導のプロはもちろん、総合型選抜/学校推薦型選抜(旧AO入試/推薦入試)対策のプロが在籍しています。また、これまでの個別指導で確立してきた、一人ひとりに合わせた教育の手法を活かしながら、生徒にフィットする大学進学を支援することができます。

校舎内には気分と目的に合わせて居場所を変えられるように「QuietRoom」「StudyRoom」「RecreationRoom」の3つの空間がある

大学受験は「未来の居場所づくり」
未来を考えるための寄り添いを大事に

高尾に加え今回の開校を推進した深田・松崎・井芹にも、これから始まる「アップ高等学院」を通じて届けていきたい今後の思いを聞きました。

「生徒たちに『将来のことを考えよう』と言っても、まずはそれぞれに合う“今の居場所”がなければ、大学受験のことや将来のことも考えることができないのだ、と気がつきました。これまで、アップ教育企画ではずっと『大学に合格させることがゴールではなく、合格後の未来のことも考えること』を大切にしてきました。今回のサポート校においても、一人ひとりに寄り添いながら、単に高卒の資格を取るだけでなく、多感な時期である今に他者との関わりをもち、そして将来に思いを馳せることができる、そんな未来の居場所づくりをしていきたいと考えています」(深田)

これまでに進学塾の現場で生徒を指導してきた松崎は、塾講師として高校生を見てきた視点からその抱負を語りました。

「日本には、ほかもいろいろなタイプのサポート校がありますが、『アップ高等学院』では“今、ここの充実”を大切にしていきたいです。これまでに長年、塾講師として高校生たちを見てきましたが、学力が伸びる子は総じて『落ち着きのある子』でした。それはつまり、安心してその子らしく過ごすことができる居場所があり、まわりの人とコミュニケーションが取れることが、生活においても学習においても重要だということです。うちは多様な子どもたちが、その子らしく過ごせるような、アップならではの支援をしていきたいと思います」(松崎)

自身も子育て中だという井芹は、これからの展望を話してくれました。

「今回、開校するのは高校生を対象とするサポート校ですが、この事業を検討しているときに、日本には小学生・中学生でも学校に通いづらさを感じ、不登校となっているお子さんが本当にたくさんいるのだ、という事実に気がつきました。今回は高校生向けですが、求めてもらえるのであれば中学生・小学生にもお子さまの居場所という輪を広げていきたいです」(井芹)


学校に通いづらい高校生のいまの居場所づくりに寄り添い、大学進学という将来の居場所に共に思いを馳せる。「アップ高等学院」の挑戦は始まったばかりです。

情報協力

高尾 知憲(たかお とものり)

高尾 知憲(たかお とものり)
株式会社アップ 研究開発本部 開発部 部長
アップ入社後、中学受験指導部門にて算数を指導。進研ゼミ小学講座「考える力・プラス」等に出演。2019年より現職。アップ高等学院のプロジェクトマネージャー。

深田 智弘(ふかだ ともひろ)

深田 智弘(ふかだ ともひろ)
株式会社アップ 研究開発本部 開発部
大学院在学中に中高一貫校で教員経験を経て、アップへ新卒入社。大学受験部門で化学・物理の指導、科学実験教室サイエンスラボで小学校高学年の指導を担当。2022年より現職。アップ高等学院のプロジェクトリーダー。

松崎 友美(まつざき ともみ)

松崎 友美(まつざき ともみ)
株式会社アップ 研究開発本部 研究部
アップ高等学院のPJメンバー
アップ入社後、大学受験指導部門にて中学生・高校生に国語を指導。私立大学にて論文作成指導講座も経験。2022年より現職。

井芹 友香(いせり ゆうか)

井芹 友香(いせり ゆうか)
株式会社アップ 研究開発本部 開発部
アップ高等学院のPJメンバー
アップ入社後、大学受験指導部門にて英語を指導。発音とリスニングを体系的に学べる教材開発に取り組む。2022年より現職。


アップ高等学院ホームページ
https://up-edu.com/up-gakuin/