2024.09.25
子どもたちの学びと先生の働き方が変わる!パワーアップデートする「ミライシード」のさらなる挑戦
コロナ禍を経て急速に進んだ「GIGAスクール構想」(※)は、教育現場のICT環境を充実させ、児童生徒と教員の学びの力を最大限に引き出すことが狙いです。ICTの活用は、単にノートや黒板をデジタルデバイスに置き換えるということではなく、一人ひとりにフィットする個別最適な学びや、子ども同士が学び合い多様性を活かした協働学習など、授業のスタイルや学び方にいたるまで、大きな変化をもたらしています。
ベネッセコーポレーションは、個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実を可能とするオールインワンソフト「ミライシード」を全国約1万校の小中学校に提供し、350万人を超える小中学生、そして約20万人以上の教員に活用されています。児童生徒一人ひとりに合わせた学びと、自分とは異なる考え方にふれながら学びを深める協働的な学びの支援。さらに教員の業務負荷を軽減するという多くの役割を有する「ミライシード」は、教育現場の声を元に2024年に大幅なアップデートを実行中。さらなる新しい学びに挑戦する「ミライシード」の現在、そして今後の展望について担当者に聞きました。
※GIGAスクール構想:2019年より文部科学省により進められている教育現場のICT化の取り組み。1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークの一体的整備を実施。個別最適化された教育により、子ども一人ひとりの資質・能力をより育成できる教育環境の実現を目指す。
多様性にあふれるクラス。児童生徒一人ひとりの個性に合わせた学びは、先生方の努力に支えられている
「子どもたちが多様化する中で、教師一人による紙ベースの一斉授業スタイルは限界に来ている。」これは、2023年に文部科学省が示した「義務教育の在り方ワーキンググループ 中間まとめ参考資料集」で、教室の中にある多様性と課題を指摘した一文です。
1クラスの人数を35人とした場合、ADHD(注意欠如多動性障害)やLD(学習障害、読字障害)といった学習面又は行動面で 著しい困難を示す子どもは3.6人(10.4%)、家であまり日本語を話さない子どもは1.0人(2.9%)、特異な才能がある子どもは0.8人(2.3%)。多様な子どもたちが1つの空間の中で学んでいるのが現状であることも同じ資料で示されています。
例えばLDの特性では、文字を読むことが難しく、読んで学習する従来の方法では理解が難しいこともあります。また、外国をルーツとする子どもの中には日本語の会話や読解ができない子がおり、そうした子どもたちが一斉で行われる授業についていく困難は想像に難くありません。先生方は個別に子どもそれぞれの状況に応じた対応を行っており、ただでさえ多忙で煩雑な業務にさらなる負荷が生じています。
教育現場におけるICTの導入は、こうした子どもたちの状況に合わせた個別対応や、先生方の負荷軽減につながることを目的として、急速にその活用が進んできました。新学習指導要領で示された指針をふまえ、子どもそれぞれの状況や学習習熟度に合わせた「個別最適な学び」、その学びの成果が「協働的な学び」へと生かされていくこと。さらには、先生が抱える授業に宿題、テストなどのさまざまな業務支援となることが期待されています。
個別最適な学びと、協働的な学びを実現する「ミライシード」とは?
ベネッセがICTツールとして提供する「ミライシード」は、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両方が行えるオールインワンソフトです。
「個別最適な学び」を実現するコンテンツには、個々の習熟度に合わせた問題を出題する『ドリルパーク』や単元確認テストの『テストパーク』、児童生徒それぞれの考えや意見を引き出す『オクリンク』があり、一人ひとりの学びの状況に合わせて、より主体的な学びを支援します。また、「協働的な学び」では、クラスの意見を共有できる『ムーブノート』を使って児童生徒同士の学び合いを支援します。
ミライシードの活用支援を担当する岡部に、ミライシードの特徴と教育現場へのICT導入の状況について聞きました。
「例えば、『ドリルパーク』では、児童生徒一人ひとりの学習進度に合わせた問題や宿題を提供します。学習内容でつまずくポイントがある子どもにはスモールステップで理解を促し、学習進度の早い子どもには応用的な問題を出題するなど、子どもそれぞれの学習状況に合わせて対応することが可能です。また、『テストパーク』では、CBTならテストの丸付けも一瞬で自動採点することで先生の校務負荷軽減を実現します。
また、「協働的な学び」を支援する『ムーブノート』のアプリは、子どもたちが書いたそれぞれの意見を1つの画面上にまとめ、共通点や違いについて話し合い、意見をまとめていくのに役立ちます。多様な意見があることで学びが深まり、さらに個人の考えや意見を深めることにつながります。先生にとっては模造紙や付せんの準備がなくなり、授業に学び合いを取り入れやすくなっています。話し合いの履歴を保存し、学びを継続的に深めていくことも可能になりました」
2024年度、「ミライシード」は現場からの様々な声を反映し、大幅なアップデートを行っています。
「『ドリルパーク』では個別最適な学びをさらに進化すべく対応した問題の量がぐんと増えます。そして、これまでの『オクリンク』と『ムーブノート』の特長を統合し、新しいアプリとしてより一層協働学習を深める『オクリンクプラス』も追加されました。これまで以上に一人ひとりに合った学びへと内容が変わることで、子どもたちが主体的に授業に向かうことができ、さらにはクラスの多様性がその学びをより深める—つまり、学校内で“先生や仲間がいるからこそできる学び”を体感できるようになります」
ICTの活用は、子どもたちの多様性の課題解決にも役立つ
ミライシードの活用で実際に先生の業務負荷も軽減されながら、特性のある子どもに学びの変化が見えた、という実例も寄せられ「ICTの力を実感している」と岡部はさらに語ります。
「外国にルーツをもつ児童を受け持つ先生のケースでは、ミライシードの問題をブラウザ上で言語変換することで作業時間の大幅削減につながった、という先生からのうれしいお声もありました。児童としても、言語のハードルに縛られずに問題を解くことでき、本来の実力を発揮してテストに挑めたと聞いています」
「また、特別支援学級では学習のつまずきや遅れの課題を抱えるケースが多くありますが、ミライシードでつまずきのポイントを発見しながら、個別の解説と組み合わせることで、たとえ間違えても、時間がかかっても最後まで解くことができ、自力での理解につながるといいます。また、手を上げて発言をすることが苦手な子どもも、タブレットに文字や手書き、あるいは動画などで考えを表現することで、その子に合った表現方法によって考えを伝えることができるようになります。誰一人取り残すことなく一人ひとりが主役の授業がどんどん全国に広がっていくのが嬉しいですね」
このような子どもたちの学びの変化、先生の働き方の変化は全国各地の学校現場で起きているものの、そのような事例やノウハウが学校を超えて共有されることは、あまり多くはありません。そこでミライシードでは、活用事例などを共有する「ファンサイト」を公開するほか、先端事例を共有し表彰する「ミライシードSUMMIT」を年に一度開催しています。
ICT活用で目指す新しい学びは、「全員参加型授業」
全国の先生方とともにミライシードの活用を推進している岡部は、今後の構想について思いを込めて語ります。
「ミライシードが目指すのは、子ども自身がより主体的に参加したくなるような『全員参加型授業』です。自分の意見をもちながら、他者の意見を聞くことで、さらに新しい気づきや学びが次々と生まれるような、そんな授業が行われる様子をいつも思い描いています。単に知識を得るだけでなく、子ども一人ひとりの学習進度や内容にあった学びができることで、わかるうれしさが生まれ、学習への前向きな意欲が育まれます。そして、仲間と一緒に学ぶ楽しさを感じられることが世界を広げてくれる。そんなアクティブな学習者を増やすことが、きっと日本の明るい未来に続いていくと思います」
「また、先生方の業務負荷の軽減は今後の日本の学校教育を考える上で必要不可欠です。これまで改善が難しかった業務をICTで効率化し、生まれた時間を子ども一人ひとりと向き合う時間に使っていただけるように。教育データの利活用が進めば、一人ひとりの課題や成長に気づきやすくなり、先生のサポートもしやすくなります。子どもたちにも先生にもよりよい学びの環境が実現できるように進化をしていきたいと思います」
教育現場にICTが取り入れられることで、子ども一人ひとりの個性や資質にあった学びと、仲間がいる学校ならではの協働的な学びも進んでいます。教育データ利活用による先生と子どもたちの向き合い方が変わる可能性も秘めています。子ども一人ひとりの未来をひらく学びと先生の働き方改善のため、ミライシードのさらなるアップデートは続きます。
情報協力
- 岡部 優
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株式会社ベネッセコーポレーション
小中学校事業本部 教育DX推進課 「進研ゼミ小学講座」のマーケティング担当を経て、2015年より地方自治体の教育施策支援を担当。現在は小中学校の教育DX推進に向け、カスタマーサクセスの責任者を務める。