2024.09.09
「まなぶ と はたらく を つなぐ」
大学1・2年生へのキャリア教育で、未来への扉を開く
変化の激しい時代の中で、従来の延長線上ではないイノベーションを創出するため、企業が従業員に求める能力や必要とする人材像は変わりつつあります。人生100年時代を生きる個人もまた、フリーランスなど含めた働き方の選択肢が多様化。1つの会社で定年まで勤めあげリタイアする、という終身雇用制度や生き方が過去のものとなる中で、長い人生における自らのキャリアを自律的にデザインすることが求められるようになりました。とりわけ、これから就職活動に向かう学生には、どんなキャリアを選択していくかを早期から考えることが求められています。
ベネッセホールディングスとパーソルキャリアの合弁会社 ベネッセi-キャリアは、「まなぶ と はたらく を つなぐ」という企業理念のもと多様な学生・大学・企業を支援する中で、大学1・2年生のキャリア教育を支援するプロジェクト「キャリアゲートウェイ」を2022年から実施しています。プロジェクトを立ち上げた担当者に、実施に至った背景や企画に込めた思いを聞きました。
早期化する大学生の就職活動
狭い世界観からの選択が生む入社後のミスマッチ
急速に進展するデジタル技術など活用しながら、多様な人々の力を融合して新しい価値を創造していく時代。企業はイノベーションを産み出すため、より多様な人材の力を必要とするようになりました。そのような中で、これから採用する学生に対しても自ら課題を発見し解決していく力や、思考力を期待する企業が増えています。
一方、就職にのぞむ大学生の状況はどうでしょうか。学生が学業に専念し、安心して就職活動に取り組めるよう、政府から企業に要請される採用活動のスケジュールは、「卒業・終了年度の6月以降に採用選考活動を開始」という一方で、実際はそれ以前の大学3年生の3月頃から選考が始まるケースも増えています。
2022年6月に、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(三省合意)の改正が行われ、 一定基準を満たした「インターンシップ」で得た学生情報を採用活動に使用できるようになりました。これも後押しとなり、就職活動の実態は大学3年生の前期から始まっていると言えます。
実際に大学生に聞いたアンケートでは、就職活動の始まりの早期化を反映し「大学3年生の前期」までに進路に向けた準備や活動を開始している学生は2021年の調査時点で5割以上にのぼっています。
そのような状況に危機感を抱いていたのが平山 恭子(ベネッセi-キャリア dodaキャンパス 副編集長)です。
「いわゆる「就活」の早期化によって、学生たちは志望する業界や企業研究の時間が十分にとれず、企業の知名度や表面的なイメージ、あるいは興味関心をもつ分野というだけで企業の選考に臨むという、限られた世界観からの選択をするケースが散見されました。その結果として生じるのが入社後のミスマッチです。せっかく就職した会社を早々に退職する人も少なくありません」
「この状況を企業側も危惧していました。企業の新卒採用のご担当者と話す中で『就職活動に入る前の学生、将来の可能性を模索し始める(大学に入学して間もない)1・2年生にこそ、自分のキャリアをどうしたいのか? どうなりたいか? どうあるべきか? 主体的に考える“キャリアオーナーシップ”の本質を早くから伝えるべきなのではないか』という声が多くありました。
実際に働くことのリアルを語ることができる企業と学生をつなぎながら、将来的なキャリア形成のための支援ができないだろうか。キャリア教育を通じた長期視点での人材育成に貢献したい、という使命感のようなものがその時、生まれました」
大学1・2年生がなりたい自分を
思い描くために始まったキャリアゲートウェイ
2022年、学生のキャリア形成支援に賛同する企業とともに平山は「キャリア教育パートナー」のコンソーシアムを発足します。そして、大学生が1・2年生ときから自身の今後のキャリアについて考える機会を提供しようと、パートナー企業14社と共に、キャリア教育プロジェクト「キャリアゲートウェイ」が始まりました。
「キャリアゲートウェイ」は、「なりたい自分を思い描き、キャリアオーナーシップを育むための大学1・2年生限定プログラム」です。各業界のリーディングカンパニーがキャリア教育パートナーとして参加しながら、3つのプログラムを学生たちに提供しています。
1)働くことの楽しさを学べ、企業で働く先輩のリアルな声が聞けるキャリア教育オンラインイベント「サマフェス」
2)アイデアをビジネスとして具現化するプロセスをプロ直伝で学べる「アイデアジャーニー」
3)実践的なアイデアを企業担当者に向けてリアルにプレゼンできる「アイデアコンペティション」
2024年8月、「キャリアゲートウェイ」のプログラムの1つとして開催されたキャリア教育オンラインイベント「サマフェス」には14社の企業で働く人が次々に登場。第一線で働く先輩たちが大学生のときに何をしていたのか、それぞれの経験談を元に、イベントに参加した1・2年生たちに「今のうちに何を意識して行動したり、経験したりするのがいいのか」。等身大の目線で語り、力強くエールを送りました。
2日間にわたり開催されたイベントには1,500 人を超える学生たちが申込み。今後の働き方に思いを巡らせながらキャリアを考える機会として、盛況のうちに幕を閉じました。
志を同じくする企業とともに
キャリアオーナーシップを持つ学生を増やしたい
最後に、「キャリアゲートウェイ」の実施を通じて実現したい未来を平山に聞きました。
「働くこと自体にポジティブな印象を持つ学生を増やしたいです。大学1年生にアンケートを取ると『働くことはしんどく、責任が重いもの』というネガティブな印象の回答が並びがちです。1社だけではなく複数の企業同士がタッグを組むことで、社会には様々な会社や仕事・働き方があることを知ってほしい。そして、働くことの面白さを感じ、どんな使命感のもと自分は働いていきたいか。学生が自信をもって自分の道を見出し、自らの言葉でありたいキャリアを語る未来を創りたいと思います」
「そのためにも、自分のキャリアに対して主体性を持って取り組む意識と行動を指す『キャリアオーナーシップ』という言葉や考え方をもっと広めていきたいです。一人でも多くの学生にその必要性を伝え、様々な選択肢から意思をもって将来を決める学生が増えれば、この国や社会もきっと変わっていくのではないかと信じています」
志を同じくするパートナーと企業とともに。「まなぶ と はたらく をつなぐ」ためのベネッセi-キャリアの挑戦は続いていきます。
情報協力
- dodaキャンパス
- 平山 恭子(ひらやま きょうこ)
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株式会社ベネッセi-キャリア dodaキャンパス副編集長/サービス企画推進室 室長 株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、高等学校向け事業に従事。その後、語学教育、グローバル人材育成に関わる部門を経て、2015年より株式会社ベネッセi-キャリア。大学生のキャリア教育プログラム開発のほか、産学連携講座のための教材開発や教員研修、講演など精力的に取り組む