岡山の教育文化による人づくり・地域づくり活動を応援する福武教育文化振興財団は、フォーラム<ここに生きる、ここで創るvol.7>を開催。学校や地域と連携した活動を行う若手三氏と、元鳥取県知事の片山善博氏を招き、「地域からの教育再生」をテーマにトークセッションを行いました。

子どもが社会に出たとき知的に自立するためのサポートを、地域全体で考える。

片山氏の基調講演では、「学校教育のミッションは、子どもたちが社会に出たときに知的に自立する、そのサポートをすること。そばにいる先生(の役割)が一番大事。ところが不登校などの問題や新しい教育手法の導入で先生も忙しく、子どもと向き合う余裕を無くしている」と指摘。解決のためには現場で抱え込むのではなく、学校外の力を活用するなど、地方自治全体で考えるべきとの意見が述べられました。

片山善博氏(早稲田大学公共経営大学院教授)

社会課題に自ら関わってみる“手ごたえ”を、 子どもに体験させる。

トークセッションは片山氏に加え、中高生・若者と地元の社会人とが「生き方」「働き方」を本音で語り合う場を提供する柏原拓史氏、「山村シェアハウス」で引きこもりの若者の支援などを行う藤井裕也氏、若者と政治をつなぐ活動で出前授業などを展開する原田謙介氏が参加。それぞれの活動の目指すところを語り、地域の課題は地域の一人ひとりが関心を持ち取り組むのが基本という指針が共有されました。

議論はさらに、子どもと地域社会をつなぐ現場の迷いにも及び、子どもに直接関わる社会課題もある今、「たとえば教育現場の問題を解決するために、中学生をどこまで関わらせるか?知らないことを赤裸々に伝えて議論させるのか、それともどこかで一線を引き、解決は大人が請け負うべきか?」という原田氏の問いかけに、

原田謙介氏。特定非営利活動法人「Youth Create」代表理事。「本職はちゃんとあり、他の所でも専門のことをうまく変換して広げていける人が増えるといいと思う」

「街づくり、自治のマインドを持った人を育てるには、参画させる過程が大事。課題解決の仕組みは考えてもらい、解決は大人がやるなど、地域住民や学校を巻き込んで子どもたちの意識を育てていきたい」(藤井氏)

藤井裕也氏。特定非営利活動法人「山村エンタープライズ」代表。「不登校・引きこもりの若者が仲間をつくり、それが生きる力になるような“人おこし”をやりたい」

「社会と関わる“手ごたえ”を、若い人たちに譲っていくことが大切。大人がそれを握っている限り、(社会意識は)育たない。若い人たちが、課題の解決へと向かう実現力を身に付け、自ら関わったことで“手ごたえ”を得る。そうなるために教育は大事」(柏原氏)など、子どもや若者の気持ちをふまえた意見が交わされました。

柏原拓史氏。NPO法人「だっぴ」代表。「色々な関係性の中で、自分の居場所をしっかり作って行ける人を育てたい」

学校現場にも立つ片山氏は、大学での実践型授業を例にあげ、学生が地方議会の傍聴を申し込んだが何度も壁にぶつかったこと、自分たちの知恵を尽くし問題意識を持って交渉し続けた結果、ようやく参加を許されたこと、さらには参加しての感想を求められるまでに至ったプロセスを振り返り、「生徒と先生の関係でいえば、先生はメンターになってほしい。前に出ずに後ろで助言する役割。すると自分たちで門戸を開き、成功体験を得る」と、学ぶ環境をどう作るかへの示唆もありました。

子どもや若者が、地元にとって何が課題かを日常の中で考えてみる。大人との対話で問題意識をぶつけてみる。地域の未来を担う力は、そんな体験の積み重ねで育まれるのかもしれません。その後押しとなる活動が、これからも地域の様々な場で展開していきます。

来場者参加の交流会では、岡山・玉野市の高校生が瀬戸内の食材で作ったおむすび「玉結び」が振る舞われ、活発なコミュニケーションの場に。

公益財団法人 福武教育文化振興財団

  • 1986年に福武書店(現ベネッセホールディングス)創業社長福武哲彦氏の遺志を継ぎ、福武總一郎氏が財団法人福武教育振興財団を設立。その後の変遷を経て現在の活動に至る。
    関連サイトはこちら  http://www.fukutake.or.jp/ec/index.html