DX化が急速に進む昨今、全国の自治体や中小企業も積極的にデジタル技術を活用した変化を求められています。

政府が推し進めるデジタル田園都市国家構想(※)は、テレワークの普及や地方移住など社会情勢が大きく変化している中、今こそデジタルの力を活用して地方創生を加速・深化し、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指しています。その構想の中で、地域の特性や成り立ちに根差したDX推進や人材育成が求められており、全国各地で動きが拡大しています。

ベネッセコーポレーションは日本におけるUdemy社の独占的事業パートナーとして、個人だけではなく企業や自治体のDX人材育成の支援をしています。近年では、DX推進の必要性は感じていても、その実施が難しい中小企業に対して、各自治体と連携しながら、地域ごとの特色や企業の特性に応じた学ぶ環境の提供やリスキリング支援を展開中です。地域におけるDX推進や人材育成の課題、それに対する「Udemy」を軸とした取り組みと実現したい未来について、担当者に聞きました。

※デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術を活用して、地域が直面している人口の減少や少子高齢化、過疎化、産業の衰退などの社会課題を解決し地域の活性化を加速するために、2021年に政府が定めた方針です。

日本全体でDXの流れは加速する一方で、中小企業ではDX推進人材育成のノウハウが圧倒的に不足

今や、あらゆる企業や自治体でDXが意識され、それぞれの形で取り組みはされているものの、実施の状況や進展の度合いには地域や企業規模によってグラデーションがあります。地方の中小企業ではDXを推進できる人材がいない、スキルを習得するためのノウハウがない、そもそもコストがかけられないなど、必要性を感じながらも取り組めないというジレンマを複数抱えている企業も多くあります。

DXの取り組み状況が地域×企業規模別にまとめられたデータ。東京や政令指定都市を中心として、「大企業」は2018年以前からDXに意欲的で、なんらかの取り組みを実施している割合が高いのに対し、「中小企業」は東京23区でも「実施していない」が約6割。地方へと広がるほどに「実施していない」割合が増加し、地域・企業規模によって取り組みへの差は歴然としている。 出典:総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」をもとにベネッセが作成
人材育成、リスキリングの課題は「育成のノウハウ不足」、次いで「コストの課題」と並ぶ 出典:「全国の中小企業のDX・デジタル化、人材育成・リスキリングに関する実態調査」(ベネッセ独自調査・2023年実施。従業員数300名以下の企業の経営者・役員が対象、回答数:1,760名)

リスキリングで企業成長をかなえるため
地域・企業ごとの課題に応じた支援を提供

Udemy事業の行政担当領域では、“人の学びで地域は進む”をスローガンとして、各地域の自治体内でのDX推進や人材育成を支援してきました。それに加えて昨今増えてきているのが、自治体からのニーズにこたえる形で始まった、地域の中小企業に対する人材育成・学びの支援です。

自治体と連携しながら、各地域でのリスキリング支援を推進している山端(ベネッセコーポレーション 事業戦略部 事業開発推進課 課長)はその開始のきっかけを次のように語ります。

「ある自治体の方とお話しした際に、『自治体の中だけではなく、これからは地域の中小企業に対してもっと学びの環境を整えたい』というご相談を受けました。これまでは、自治体が行う企業のデジタル化支援は、ツール導入支援や補助金の交付が多い状況でした。しかし、デジタルの知識不足や、何から手をつけて良いか分からないという声、また人材育成の必要性は理解しつつも育成ノウハウがなく、結果としてどのようにDXに対応していけばよいか悩んでいる企業が多数いることが、調査を通じて見えてきました。自治体としてもそうした企業に寄り添い支援しながら、地域をより活性化したいという思いがあり、そこから、自治体とタッグを組んで、地域の企業に対するリスキリング・学びの環境を提供する活動が始まりました。」

ベネッセコーポレーションが運営する中小企業のDX・リスキリング推進プログラムでは、Udemyで公開されている世界約25万の講座から、日本向けに厳選した約1.4万以上の講座を定額で利用できる法人向けのサービス「Udemy Business」を提供しています。各地域でDX・リスキリング推進プログラムの内容は異なり、ある自治体では「業務効率化コース」「集客・販路拡大コース」のように、企業が直面する「DXで解決したい課題」ごとにコースを作成し、各地域企業のニーズに応じたプログラムを提供しています。さらに、学びに伴走するパートナーとして受講者の学習の進捗管理を行い、定期的な面談を通じて受講生の学習習慣の形成も支援しています。

自治体と企業に伴走しながら中小企業のDX・リスキリング推進プログラムを企画・運営しているのが三原(ベネッセコーポレーション 事業戦略部 事業開発推進課 グループリーダー)です。

「中小企業のDX・リスキリング推進プログラムによって、受講者の学習を確実に支援できている実感があります。ある企業では、DXについて受講者全員にほとんど知識がありませんでしたが、レベルに応じた個別最適な学習カリキュラムをプログラム内で作成したことにより受講者の学びが進み、会社に適した業務改善ツールの内製開発・運用することができました。」

「プログラム終了時に実施したアンケート回答の結果、本プログラムに参加したことにより『もっと学びたいと思うようになった』と考える人が6割以上、『学んだことを業務に活かせた・また今後活かすことができそうだ』と答えた人が9割を超えるなど、受講者からは高い満足度を得られています。」

DX推進に成功する企業の共通点は「学び続ける人材」の存在。新しいスキルを持続的に学ぶことができる人材の育成がポイントと定義し、学びのインプットとその実践としてのアウトプットをサイクルで回しながら、その伴走をするプログラム構成としている。

地域の持続的な成長を、人材育成支援で日本全国に生み出したい

自身の実家も地域に根差した企業を営んでいるという三原は、中小企業の人材育成にはさまざまな壁があると言います。

「大企業であれば人事の専門部署があり、研修など人材育成の体系ができていることも多いですが、地域の中小企業はリソースが限られています。人事や総務、経理といった仕事を一人で担当している場合もあり、実際のところ人材育成まで手が回らない企業が多いです。」

そして、今後は人材育成だけではなく、さまざまな地域の課題にもこたえていきたいと夢をふくらませます。

「地域における企業支援については、支援機関もバラバラで、経営支援であれば地域の金融機関や商工会議所、人材支援であれば人材会社やハローワークが担っているなど、領域ごとに支援体制や政策が点在しているのが実情です。これまでは、自治体の職員の方や地域企業のDX・リスキリングを支援してきましたが、今後は複雑化する地域課題にさらに寄り添い、より広く深く支援ができるようにしたいと考えています。地域ごとの戦略を起点に、どういう人材を育成するのがよいか、その地域を支える企業をどう活性化していくか。地域のステークホルダーとタッグを組みながら、より包括的な支援を検討していきたいと思います。」

最後に、山端にも、地域における学び支援の先に見たい世界を聞きました。

「これからは、地域課題に寄り添いながら、人材育成を根づかせていくことで、地域が持続的に成長していく姿を日本の各地で生み出していきたいと思います。実際に、自治体の方と接する中で、地域企業や地域人材の育成をどのように支援していくかみなさんとても悩まれていると感じています。地域によって主軸の産業や抱える課題も異なる中で、地域のありたい姿を実現するために、どういった人材戦略をもって人材育成をしていけばよいのか。今後は『Udemy』にとどまらず、さまざまなソリューションを提供しながら、継続的な支援を行っていきたいと思います。」

現在、「Udemy」を活用する自治体は70を超え、さらに自治体と連携した中小企業支援の事例も増えています。今後も、ベネッセの人材育成支援の活動は全国各地へと広がっていきます。


情報協力

ベネッセ自治体向けDX人材育成支援

https://www.benesse.co.jp/udemy/government/

山端 薫(やまはた かおる)

株式会社ベネッセコーポレーション 事業戦略部 事業開発推進課 課長 大手通信会社にて、教育事業の立ち上げや法人企業のデジタルマーケティング支援を担当したのち、2020年5月ベネッセコーポレーション入社。社会人教育領域の行政事業の立ち上げを行い、地域に根差した事業・サービスの開発を担当。2024年4月より現職。


三原 裕人(みはら ひろと)

株式会社ベネッセコーポレーション 事業戦略部 事業開発推進課 グループリーダー 新卒で大手通信会社に入社し、中小企業を含む様々な規模・業種の企業へのコンサルティング営業を担当。株式会社ベネッセコーポレーションに入社後は、プロジェクトマネージャーとして、約400社の中小企業へDX人材育成プログラムを提供し、中小企業のDX推進支援を行う。