CASE STUDY

トラブル対処で得た知見をサービス全体の安定化に活用。開発スピード高速化を目指す

ベネッセは早くから学校現場におけるICT導入に取り組んでいる。タブレットで利用する学習支援ソフト「ミライシード」の提供もその一つだ。しかし社会情勢の変化による急速な普及増加は、時に想定外のトラブルを呼び込んでしまうこともある。2021年12月に第39回IT賞(顧客・事業機能領域)を受賞した「ミライシード」を、システム面から支える梅村善則に、障害解決の顛末や今後の課題を聞いた。
  • インタビューは2022年に実施

梅村 善則

学校カンパニー フロントサービス開発部 小中サービス開発マネジメント課

新卒でSIerに入社し、SE、PMとして製造業を顧客とする部門で10年以上勤務。2020年にベネッセに入社し、ミライシードの技術を担当。

ISSUE(課題)

オンプレミス版の想定性能が出せず授業がストップ

ミライシードは全国の小中学校の子どもたちの学びを支援するオールインワンのタブレット学習用ソフトです。2014年から提供を開始しているサービスですが、2020年以降、コロナによる休校やGIGAスクール構想(※)の前倒しなどから急激にアクセス数が伸び、サーバーの高負荷を引き起こすようになりました。その安定化のために、入社直後から奮闘することになりました。安定化についてはさらなる向上を目指していますが、今後は開発スピードを劇的に高速化するための新アーキテクチャ構築も目論んでいます。

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ミライシードには、ASP版とオンプレ版の2つがあるのですが、このオンプレ版の性能が出ないことが課題としてありました。2つの大きな違いはサーバーです。ASP版とは、クラウド上にサーバーが存在し、全国どこからでも使っていただける提供形態。オンプレ版はサーバーをお客さまに納品して、学校内や自治体内のみで使っていただく提供形態です。それぞれ利点がありますが、オンプレ版はお客さまの要望にあわせてカスタマイズでき、セキュリティの面で有利です。
ところがオンプレ版で納品したサーバーが想定性能を出せず、子どもたちの授業を止めてしまう事態が2つの自治体で発生してしまいました。お客さまからは厳しいお言葉もいただきましたが、絶対に解決するという強い意志のもと取り組みました。

SOLUTION(ソリューション)

ファクトから原因を推測し、仮説を立てて検証を繰り返す

オンプレ版ではサーバーはお客さまの元にありますから、何も分からない状態からのスタートです。方針としては、基本に忠実に徹底的な見える化から着手しました。サーバー監視サービスを導入し、見えることからファクトの確認。ファクトから仮説を立てて検証し、違っていたら別の仮説を立てて検証、その繰り返しです。
具体的には、サーバー内のアーキテクチャや設定値を列挙していって、そこからいくつかの原因を推測して仮説を立て、別環境でも同じことが再現されるかを確認。原因が特定されたら、今度は解決のための手立てを見つけて再検証。という地道な作業の繰り返しになります。2つの自治体では、それぞれ別の事象が発生していたのですが、なんとかどちらも無事解決できました。もちろんこうして得た知見は他のオンプレ版にも共有し、オンプレ版全体の安定化につなげています。

RESULT(結果)

トラブル対処で得た知見を活かしてミライシードを安定化。IT大賞の受賞につなげる

今回お話ししたのはトラブル対処事例なので、そのこと自体はマイナスを挽回したものですが、得られた知見を横展開したことでミライシードのサービス全体の安定化にもつながっていると思います。ミライシードは2021年12月に第39回IT賞(顧客・事業機能領域)を受賞しましたが、サービス開始からずっと続けられてきたであろう、こうした地道な改善も評価の一部を支えているのではないかと思います。個人的には、厳しいお言葉をいただいていたお客さまから感謝のお言葉をいただいたことが嬉しかったですね。

PERSPECTIVE

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今回の事例を推進する中で、企業理念「よく生きる」を実践できたことはありますか?

自分自身の「よく生きる」についてですが、今回のオンプレ版の性能対応では、アプリケーションから、ミドルウェア、ハードウェアまで幅広い知識を求められ、なんとか必死に勉強して解決までたどり着けました。この経験を通して、知らないことを知る、学びを広げることの大切さと、スキルアップし成長を実感することの楽しさを改めて実感しました。
前職ではアプリケーションSEがメインでしたが、ベネッセに入ってからはシステム全体を扱っています。そもそもメインという風に自分の領域を狭めてしまう必要もないんですよね。そうした意味で、いま「よく生きる」を実践・実感できていると思っています。

今後の仕事におけるチャレンジを教えてください。

ベネッセに転職を決めたのは、40歳を前にして新たなチャレンジをしたかったのと、自分の子どもに影響を与えるような仕事がしたいという思いからです。ミライシードを担当することになったのは、入社のタイミングもあると思いますが、自身の子どもが小学生ということもあり、まさにやりたかったことができていると感じています。サービスの質をさらに改善、向上させていくことで、遠くない将来、自分の子どもがミライシードで学ぶ日がくるかもしれないと楽しみにしています。

ベネッセのDXにもチャレンジしたいです。サービスではなく全体的な話ですが、ベネッセにはエンジニアがまだまだ不足していると思っています。教育の会社だけあって、スキルアップのためのコンテンツは充実しているのですが、DX能力を向上させていくなら、エンジニアの質だけでなく数も必要です。ですからベネッセでエンジニアが活躍できる環境を整えて仲間を増やしていく、そのお手伝いもしていきたいですね。ベネッセのサービスのシステムをすべての面で支えることができる仲間たちをつくることで、ベネッセのDXはさらに加速していくと思っています。

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