CASE STUDY

市場ニーズに応える新規事業をどう生み出すか。推進力の源泉は「縦」と「横」の両輪

ベネッセグループは全社でDXを推進していくため、2021年にデジタルイノベーションパートナーズ(DIP:Digital Innovation Partners)と呼ぶ横断組織を社内で設立した。コンサルティング、データ分析、インフラ構築など様々な部門が統合され、現在では850人ほどの組織に成長している。会社が定めた成長分野の一つ、介護HR(Human Resources)で新規事業の立ち上げを推進しているのがDIP、DXコンサルティング部デジタルイノベーション推進課の中村潤平氏だ。新規事業を進める上での課題、そしてどのようにその課題を乗り越えているのか、話を聞いた。

中村 潤平

Digital Innovation Partners DXコンサルティング部 デジタルイノベーション推進課

ICT業界を経て、前職の総合コンサルティング会社で金融機関に向けたDX戦略の立案やDX推進を担当。ベネッセに入社してからは、DXコンサルティング部にて介護事業のコンサルティング案件や、教育・介護・生活領域のデジタルプレイヤーの調査を行う「ディスラプションウォッチ」を主導、ファンド事業であるデジタルイノベーションファンド(DIF:Digital Innovation Fund)においては、スタートアップ向けのソーシング活動から出資検討、成長支援などを手掛ける。

ISSUE(課題)

独自の強みを生かしつつ、サービスを早期に立ち上げる

DIPのDXコンサルティング部には主に2つの仕事があります。ベネッセグループの様々な事業部と一緒にプロジェクトチームを立ち上げて推進していく仕事、そしてスタートアップに代表される新たなプレーヤーの動向を見極め、場合によっては外部の力を借りながら新たな教育や介護のサービスを生み出していく仕事です。
ベネッセグループは2023年5月に発表した「ベネッセグループ変革事業計画」の中で、介護HR分野を今後の成長分野と定義しています。現在、ベネッセホールディングスの子会社で、介護・医療業界で情報提供や人材紹介などを手がけるハートメディカルケアと一緒に新規事業の立ち上げを進めています。
介護分野は今後、確実に人材の需給ミスマッチが予測される領域です。介護職の人材不足は今後、社会課題化していくのは目に見えています。こうした機会をビジネスとして捉えようとする企業は弊社以外にも数多く存在しています。実際に介護施設を運営している我々の強みを新規事業でどう生かすか、どれだけ早く新サービスを立ち上げていけるか。これが我々の現在の課題です。

SOLUTION(ソリューション)

全社の知見とノウハウを惜しみなく新規事業に注入

介護分野の需給ミスマッチは既に起きており、これによって困っている人たちがいます。そのため、なるべく早くサービスを立ち上げる必要があります。横断組織であるDIPが、ハートメディカルケアと一緒にプロジェクトを進めている理由はまさにそこです。
DIPはほかの様々なプロジェクトにも参画して事業を進めてきた実績があります。市場分析、システム開発、プロジェクトの進行など、知見とノウハウを持っています。特に、現在はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる先の読めない不確実な時代です。こうした時代に即してサービスを開発していくためには、企業の技術や意向を優先して製品を開発するプロダクトアウトから、顧客ニーズに立って考えるマーケットインの思考が求められています。

RESULT(結果)

「縦」と「横」の協業。開発スピードがおのずと加速

新規サービスがまだ立ち上がっていないため会員数や売上といった具体的な成果を出せるフェイズにはありません。ただ、まさにスピード感を持って事業開発が進められていることが現時点での成果といえるでしょう。ベネッセは歴史ある会社です。しかし、伝統的企業にありがちなセクショナリズムがありません。DIPの取り組みをはじめ、組織の分断が起きていないのです。事業部が持つ「縦の知見」と、横断組織が持つ「横のノウハウ」がうまくかみ合い、新規事業を生み出す力となっています。

PERSPECTIVE

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中途採用でベネッセに入社した理由はなんでしょう?

20代のときはITの仕事をしていました。その後、コンサルティングファームに移り、3年前にベネッセに入社しました。プロジェクトを進めていく仕事は前職でも経験済みですが、一つだけ経験できなかったことがありました。それは、「“自分事”にできなかった」という点です。コンサルティングファームはクライアントの事業成長を支援するのが仕事ですから宿命でもあります。過去の経験を生かしつつ、社会意義の高い仕事を“自分事”として取り組みたい。こうした思いでベネッセに入社しました。この3年を振り返ってみて、事業サイドはやはり特有の面白さがありますね。

今後、介護HR分野でどのようなチャレンジをしたいですか?

ベネッセは「教育」と「介護」を手がける社会意義が高い会社と思っています。この会社で社会課題を解決するソリューションを生み出していきたい。入社した際、同僚から「この会社の事業は自分の人生そのままだ」と言われ、鮮明に記憶に残っています。幼児教育をどう考えるか、子どもが勉強し続ける気持ちをどう育てるか、高齢者が最後まで自分らしく生きるためには何が必要か。確かに考えてみると自分の人生と事業内容がかなり一致しています。介護HR分野ではこのままでは高齢者は増え続け、人手不足はよりいっそう深刻になります。ベネッセとしてできることは何かを常に考えながら、役立つサービスを提供していきたいと考えています。

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