外国語大学に比肩する質・量の英語科目を展開し
小学校英語教育の早期化・必修化に対応できる教員養成をめざす

桃山学院教育大学
英語教育コース長・教授 鈴木 寿一 先生

学校情報

桃山学院教育大学(大阪府/私立)

  • 設立年:2018年
  • 学生数:約900名

ポイント

  • 2020年度からの小学校英語教育の早期化・必修化に対応するために、英語教育コースを新設。外国語大学並みの英語教育と、充実した指導法に関する授業の両輪で、初めて本格的に英語に触れる小学生のモデルとなれる教員養成をめざす。
  • 学生が自身で英語力を把握するきっかけをつくるために「GTEC」Academicを採用。学生の英語力を伸ばすためのアドバイスを全体または個別で行うためにスコアレポートを活用している。

I.大学の紹介

桃山学院教育大学は、学校法人桃山学院がプール学院大学から経営権を受け継いで改組し、2018年に開設した人間教育学部のみの大阪府の私立大学である。「小学校教育課程」(「小学校教育コース」「国語教育コース」「英語教育コース」)「健康・スポーツ課程」(「スポーツ科学コース」「学校保健コース」)「幼児教育課程」の3課程5コースを設けている。
今回取材したのは小学校教育課程英語教育コース。小学校における英語学習の早期化・必修化に対応した人材育成をめざし、同大学が2021年度に設置した新しいコースだ。大きな変革が求められている英語教育に対して、大学ではどのような人材育成が求められるのか、またその人材育成に対して「GTEC」Academicがどのように貢献できるのか、英語教育コース長の鈴木 寿一教授にお話を伺った。

桃山学院教育大学キャンパス

Ⅱ.英語教育コースの教育の特長

2020年度より小学校から順次実施された新学習指導要領から小学校5・6年生では教科として外国語、3・4年生では外国語活動が行われるようになった。また、小中高間のスムーズな接続や、中学と高校では言語活動を通してコミュニケーション力を育成することがこれまで以上に求められている。このような背景も踏まえ、まずは英語教育コースの教育の特長について、鈴木 寿一教授にお話を伺った。

Q:このような動向を踏まえて設置された英語教育コースの特長をお話しいただけますか。

鈴木教授:本学の英語教育コースでは、新学習指導要領に基づいて、校種間のスムーズな接続を意識して小中高の英語教育を効果的に行うことができる英語力と指導力を兼ね備えた教員を養成するために、小学校教員免許に加えて中学及び高校の教員免許も取得できます。
本学英語教育コースのカリキュラムの主な特長は次の4つです。
①学生の英語力を伸ばすために、英語力養成科目は外国語大学並みの科目数(半年換算で、必修28コマ、選択20コマ)を開講しています。英語力養成科目では、教養や専門知識を身につけながら、卒業後に教員として4技能統合型の指導ができるように、1年次では一般的な話題の教材、2年次以降はSDGs、異文化間コミュニケーション、教育一般、外国語教育をテーマにした教材を用いて、4技能統合型指導法で授業が行われます。
②教員免許を取得するうえで必要な「英語科教育法1~4」に加えて「Practical English Teaching Workshop A~D」という実習形式の授業を開講しています。テスト問題の作成や評価法の演習(2コマ)、音読指導法(1コマ)、特に小中学校で効果的なTPR(Total Physical Response)による語彙指導と文法指導(1コマ)、教材の英語をよりやさしい英語に置き換えるトレーニングとオーラル・イントロダクションの演習(2コマ)、模擬授業に特化した授業(2コマ)を開講しています。
③英語力養成科目と英語指導力養成科目は相互に関連を持たせています。例えば、文法力を伸ばす科目では文法指導法も、発音力を鍛える科目では発音指導法も扱われています。
また、特に力を入れているのが学生の発音力・音読力を高めることです。教員の発音や音読が不適切ですと、児童や生徒は不適切な発音や音読をするようになります。もちろん、母語が日本語で、英語は外国語ですから、教員の発音にも日本語的な特徴が含まれていても仕方がありません。しかし、コミュニケーションで支障をきたすような不適切な発音や音読を児童や生徒に聴かせるべきではないと思いますので、英語教育コースでは、1年生で発音力を高める科目、2年生で音読指導法と音読力を高める科目を必修科目として課すだけでなく、他の英語力養成科目でも教材の英文を音読させることに力を入れています。
④学生が自立した学習者になることを支援し、児童や生徒に効果的な学習法を教えることができ、適切な辞書指導ができる教員になれることを目指す科目を1年次で必修としています。英語教育コースの「総合英語」は、効果的な英語学習法と辞書活用法をトレーニングする内容になっています。この科目では、学んだ学習法を使って英語を学習することと、辞書の読み方、様々な辞書を目的に応じて使い分けることができるようになること、それぞれの辞書のどこを見ればどんなことが調べられるかを身につけてもらうことを目指しています。
英語教育が早期化・必修化された今、質の良い授業が求められます。そのためには、質の高い英語を身につけ、指導できる教員が必要となりますので、このような特長を兼ね備えたカリキュラムを作りました。

Q:どのようなことに留意して英語教育コースの学生を指導なさっていますか。

鈴木教授:学習成果を他人と比較するのではなく、過去の自分と比較して、どのくらい進歩したかを重視することと、自分の進歩がわかるように学習の軌跡(記録)を残すことを勧めています。
少人数制であることを活かして、例えば、学生が書いた英文の誤りをすべて添削してしまうのではなく、まずはヒントとして、「時制」「名詞の用法」などのように誤りの種類をコメントして返却しています。学生はそのコメントに従って辞書や文法書で調べて英文を修正して再提出してきます。それに対してまたコメントして返却するというプロセスを繰り返して、学生自身の力で完全な英文に仕上げます。そこに至るために必要な説明や例文を辞書や文法書で調べる過程で、忘れていたことを自然に復習でき、調べる力も身につき、自らが自立した学習者となることが可能です。
最初の提出から完成まで1つのファイルを使いますので、学生は自分の進歩がわかり、それが自信につながります。教員になってからも、自分が学生であった頃の誤りと修正の過程が残っていれば、学習者がどんな誤りを犯すか、どこに困難点を抱えているかがわかります。

Ⅲ.「GTEC」Academicの活用

Q:英語教育コース新設当初から「GTEC」Academicをアセスメントに活用されていますが、なぜ「GTEC」Academicを選ばれたのでしょうか?

鈴木教授:例えば、教員から見て、この学生は海外で働けるレベルだなと感じても、エビデンスは出せません。我々の感覚ももちろん大切ですし、自信もありますが、やはり外部の客観的な指標から見てどうか、という視点は必要になります。その中で「GTEC」Academicを選んだのは次のような理由からです。まず「GTEC」Academicは項目応答理論に基づいて作成されていて、学生の英語力をかなり正確に測定できるということ、TOEICやTOEFLに比べてずっと短い時間で4技能を測れますし、費用も安いです。どちらも学生の負担を考えると大きなメリットになります。それから「GTEC」Academicはスコアレポートの質が高いですね。技能別にレベル判定が出ますし、アドバイスまでついていますので、スコアをもとにした指導がしやすく、学生自身が自分で気づくための情報が多いことも「GTEC」Academicを選んだ理由です。

Q:「GTEC」Academicをどのような点に留意して活用しておられますか。

鈴木教授:「GTEC」Academicという指標で学生自身が英語力を把握することは大切ですが、スコアだけに注意が向き過ぎる傾向がありますので、学生には、実施前と実施後に「スコアだけに一喜一憂しないで、スコアレポートをよく読んでこれからの授業や学習に臨みなさい」と言っています。スコアが伸びていなくても、先に述べましたように、学習の軌跡を残すことで確実に進歩していることがわかること、そして、学力が伸びていても、学力の伸びがテスト結果に現れるにはしばらく時間が必要であることなどを強調しています。
本学の英語教育コースでは、学生が使える英語力を4技能で養成することと、英語を通して教養や専門知識を身につけることを目標にしております。そのため、卒業要件として、外部テストのスコアは定めていませんし、対策授業も行っていません。対策授業の代わりに「GTEC」Academicのスコアレポートを活用して、全員に共通することは授業で学習法をアドバイスし、特定の学生に必要なことは、個別に面談を行ってアドバイスしています。

Ⅳ.今後の展望

Q:これからの英語教育にはどんな教員が必要とお考えですか。

鈴木教授:年齢や性格が異なる児童や生徒に寄り添って彼らの特性に応じた指導ができることが教員として不可欠でしょう。それに、英語を指導する教員としては、本学の英語教育コースが目指しているような、児童や生徒にとってモデルとなれる英語力を持っていること、そして入門期やそれ以降の英語指導・評価に熟知して児童や生徒を指導できる教員が必要だと思います。小学校の教員は、中学・高校での英語指導の内容と指導法を知った上で、小学校卒業までに児童にどのような力を身につけさせなければいけないのか、先を見通して指導していくことも求められるでしょう。

鈴木 寿一 先生

お話を伺った方

英語教育コース長・教授 鈴木 寿一 先生