学生の英語力を幅広く、客観的に測り
学生のモチベーションと
内部テストの質・評価をセットで向上させる

愛媛大学
教育・学生支援機構/副機構長 英語教育センター/センター長
折本 素 先生

教育・学生支援機構 英語教育センター/准教授
三浦 優生 先生

学校情報

愛媛大学(愛媛県/国立)

  • 設立年:1949(昭和24)年
  • 学部:法学部、教育学部、社会共創学部、理学部、医学部、工学部、農学部
  • 学生数:約1万人

ポイント

  • 「学生が自身の英語力を把握する、内部テストの妥当性を検証する、成績評価の補足とすることを目的に、外部の英語試験を導入
  • 2つの外部試験を経て、問題の質とレベルが受検者層(学生)にマッチしていて、かつ出題される問題の幅、実施・運営の手軽さが担保されている GTEC Academic の導入へ
  • 当初の目的とは別に、選抜コースの出願要件としても活用

I.大学の紹介

愛媛大学は愛媛県師範学校、松山高等学校などを源流に、1949年に設立された国立大学。現在は法文学部、教育学部、社会共創学部、理学部、医学部、工学部、農学部の7学部を抱える四国最大の総合大学となっている。2004年に法人化してからは、「学生中心の大学」「地域とともに輝く大学」を目標に、種々の大学改革に邁進している。
愛媛大学の英語教育は1年次の共通教育、2年次以降の学部教育に大きく分けられる。1年次の共通教育は英語教育センターが実施。同センターは全国に先駆け、外国人教員による少人数の英語教育を提供してきた実績を持つ。なお、クォーター制が導入されており、1年次の必修科目は各クォーターで1科目ずつ、週に2回授業が行われている。

Ⅱ.取り組みに至った背景

愛媛大学は全学部の1年生に英語の必修科目を課しており、その成績評価の一部にGTEC Academicのスコアを反映させている。
実は外部英語試験の活用自体は、GTEC Academicの導入以前から行われていた。主な目的は

  1. 学生自身に自分の英語力を客観的に認知させ、自らの英語学習計画に活用させる
  2. 英語教育センター独自の成績評価テストの妥当性を検証する
  3. 授業成績評価の一部として活用する

ことの3つだ。英語教育センター独自の英語成績評価テストは、期末テストとして用いられる到達度テストであるが、その内容やレベルが本学の学生にとって妥当かどうかを判断するには、外部の客観的な指標がないと難しい。また、教員間で成績評価の基準に差がある状態を解消させるためにも、何かしらのデータが必要だった。②・③が目的とされたのにはこうした背景がある。
英語教育センターが初めに導入したのは紙媒体のいわゆるPBT(Paper based test)型の外部試験であり、テストの公正性、妥当性を確保するために、同一日時に一斉実施する必要があった。そのため、英語教育センターの教員だけでは実施できず、大学入試センター試験に準ずる形で、全学部に監督業務の協力を依頼せざるを得なかった。また、同一レベルの1種類だけのテストを使用するので、多様な学力を持つ学生の英語力を適切に測りきれないという問題もあった。テスト問題と解答用紙を全て回収し、その枚数を確認するという作業もかなりの負担であった
これらの問題を全て解消してくれたのがCBT(computer based test)型のGTEC Academic(当時の名称「GTEC College Test Edition」)だった。受検者の正答率に応じて、出題問題が変わるので、短時間で、多様なレベルの学生の英語力をかなり正確に測ることができる。また、理論的には、すべての受検者がそのレベルに適した違う出題パターンの試験を受けることになる。そのため、同一日時に一斉に試験を実施する必要もない。CBTの場合、まず問題用紙の配布、回収が必要ない。解答上の注意も画面上に表示されるため、英語教員が学生をコンピューター室に引率し、監督するだけですむ。このお陰で,英語教育センターの教員だけで試験を実施することが可能になる。
加えて、成績返却の速さも重要だった。過去に導入した外部英語試験は、返却までに1週間~1ヶ月程度待たなければならなかったのに対し、受検者は、受検後のモチベーションが高いうちに、即座にテスト結果と具体的なアドバイスコメントがついたレポートを確認することができる。教員も受験者の成績をすぐに把握でき、成績評価がスムーズに行える
こうしたメリットを総合的に検討した結果、GTEC Academicが新たに導入され、今も継続されている。

Ⅲ.取り組み内容

 試験の対象は1年次の英語の必修科目を履修する全学生。4月と1月の2回にわたって受検する。成績評価に含まれるのは1月分だけ。第4クォーター(学期)の成績の10%に反映される。当初は成績の30%に反映させていたが、外部英語試験を導入して以降、内部試験の調整・質の向上を進めることができたため、比率を引き下げた。また、授業の中で試験の対策を行うことはない。あくまで学生自身の能力を測るための試験として位置付けられている
英語教育センターが提供する必修科目は、1年次の第1~4クォーターそれぞれに1科目ずつ置かれている(.図参照)。授業は30名前後の少人数制を取り、クォーターごとに重点を置く技能が違う点が特徴で、第1クォーターからSpeaking、Listening、Writing、Readingの順に学びを深めていく。専任の外国人教員の授業担当率が極めて高いのも特徴である。
「必修科目で学ぶ英語は、コミュニケーションに役立てる英語です。それもあって始めにSpeakingを教えています。1年次の必修科目ですからそれほど難しい内容ではありませんが、英語で話したことが伝わるのはやりがいにつながるようで、以降のクォーターの学びに向けたよいきっかけになっていると感じています。入学直後の少人数クラスであり、学生同士のコミュニケーションで成り立つ授業ですから、友人をつくりやすい点でも好評です。クォーター毎に違う能力に焦点を当てることで、当初は、学習の継続性に関しての懸念もありましたが、実際に実施してみると、第1クォーターで学習し習得した技能が、第2クォーターの学習に生かされ、さらに、第1クォーター、第2クォーターで学習し習得した技能が、第3・第4クォーターの学習活動の中で繰り返し使われる事になり、結果的に反復学習を行うことができることが分かったのも予想外の成果でした。」
(教育・学生支援機構 英語教育センター 折本 素 副機構長/センター長)
1月と4月の受検結果を学年ごとに比べたところ、全体としては成績が落ちていない、または僅かではあるが上昇しているそうだ。受験勉強を終えた直後の入学時が最も英語力が高い、と言われることもある中で、全体として成績が落ちていないことは十分な成果に値する。
「クォーターごとに実施しているアンケートでは、力が伸びていたかという自己達成度に関する設問に対しては、強い肯定の回答をしている学生は余り多くありません。一般的に、短期間で目に見えて力を伸ばすのは難しいのと、日本人学生は、自己評価に関しては控えめあるいは厳しめに評価する傾向にあることを考えれば想定内の反応だと思われます。ただ、ほとんどの学生が、授業内容や教員の指導、レベル感については非常に高く評価しています。」
(同教育センター 三浦 優生 講師)
学生の満足度という点では、現在の授業のあり方に自信があるようだ。
なお、必修授業は1年次のみ。以降の英語学習は基本的に学部ごとの実施となるが、2年次以降の希望者に対しては「英語プロフェッショナル養成コース」という発展科目群も英語教育センターが提供している。このコースでは英語でアカデミックスキルを伸ばす科目、海外研修に関わる科目などバラエティ豊かな選択科目が用意されており、必修科目以上に濃い内容となっている。授業の質を保つため、年度ごとの募集定員を30名程度に絞っており、出願要件としてGTEC Academicのスコア提出を求めている

Ⅳ.今後の展望

当初の目的とされていた内部テストの妥当性の検証や、学生の英語力の把握、成績評価については、既に十分達成された。これから課題となっていくのは「4技能入試」への対応だ。今後は大学入試で英語の4技能が活用され、学生が初めから客観的な4技能のデータを持って入学してくる。そうした中、2技能の検定の実施やスコアの成績反映をいつまで続けるべきなのかを考えなければならない
仮に活用する試験をGTEC Academicの4技能版へと切り替えた場合、第4クォーターの成績だけに反映していた試験のスコアを、各クォーターの成績に反映することが可能になる。また、高校の教育内容との関連性を深めることにも、クォーターごとの授業の設計にも役立つだろう。今後の活用に向けて、既に一部の学生には試験的に4技能版を受検してもらっている。受検費用、実施時期、成績への活用方法の再検討などの問題もあり、英語教育センター、及び大学全体で今後の活用を慎重に検討していく予定だ。

【資料】 GTEC図版

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お話を伺った方

教育・学生支援機構/副機構長 英語教育センター/センター長 折本 素 先生(左)

教育・学生支援機構 英語教育センター/准教授 三浦 優生 先生(右)