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制作のスピードを加速し、顧客価値を上げる挑戦とは?

子どもたちの期待に応え続けるための、
「進研ゼミ」制作プロセスの改革

「大切なのはDXの目的を明確にし、作り手の当事者意識を強く引き出していくことです」
こう語る「ものづくり改革本部」室長の清水里子に話を聞いた。

Benesseは「進研ゼミ」において、デジタル学習の可能性を追求し続けてきた。
その原動力は「日本中の子どもたちに、良質な学びの機会を広く提供する」という創業時からの信念と「子どもたちのニーズに応え続ける存在でありたい」という強い想いである。
スピード感をもった事業の挑戦をかなえるべく、ものづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)にも挑戦中だ。2018年に「ものづくり改革本部」を設立。第1段階として編集工程の一部をオンライン化するなど、改革を推進するために様々なトライアルを重ねている。
「大切なのはDXの目的を明確にし、作り手の当事者意識を強く引き出していくことです」
こう語る「ものづくり改革本部」室長の清水里子に話を聞いた。

※所属・役割は2021年3月時点でのものです。

子どもたちのニーズに
応え続けるために必要なのは、
ものづくりのスピードをあげる改革

「進研ゼミ」が創業時から最も大切にしている精神。それは日本中の子どもたちに、良質な学びの機会を広く提供することだ。開講以来、自宅で一人で学習する子どもたちに寄り添い、学ぶ意欲を引き出す教材作りを追求し続けてきた。

2021年4月には、年間約190万人に上る会員の学習データを元に、「一人ひとりにあったデジタル学習」と「やる気を引き出す人の指導」を組み合わせた「ブレンディッド学習」の提供を発表。これまでの動画やオンライン授業での学びに加え、学習量、目指すレベルや正答率などからAIが提案する学習プラン、そして、デジタル赤ペンやオンライン質問などによる温かみのある人の指導を加えたサービスである。

「お客様の学校での学習は、地域や学校ごとの授業進度、どういうツールを使って学ぶかなど、これまで以上に多様になっています。そのため校外学習に求めるものもどんどん変化しています。変化し続ける顧客ニーズに素早く的確に対応し、価値をスピーディに改善・創出する制作スピードを高めることで、組織としてのデジタル競争力を高める必要があると考えています」と清水は語る。

デジタルでの即時性が当たり前になる中、お客様の期待に応え続けるには、教材の制作スピードを圧倒的に上げること、また、そのことにより生まれるリソースを多様なニーズに応えるために振り向ける改革が必要となった。

コロナ禍が後押し、
編集工程のDXを10日間で導入

改革では「制作にかかる時間を半分にする」を目標に掲げた。
これまでは各工程を担当するスタッフが、「紙」で出力した校正紙に赤入れを書き込む形で編集を行っていた。また,やり取りは宅配便などで行うため、その往復に2日間をとられていた。そこで、紙で出力しやり取りしていた校正紙を、オンライン上のやり取りで完結させるオンライン送稿の導入を検討した。
また、内容をよりよくしていく工程、ファクトに基づき内容を正確なものにしていく工程など、何度も工程を重ねて磨き上げるものづくりから脱却し、制作期間を大幅に短縮する取り組みも始めた。教材のデジタル化に伴い動画や音声データの確認も必要になっており、紙のやり取りに頼らないデジタルサービスならではの、ものづくりのあり方を大きく考え直す必要もあった。

2020年度の体制下で工程の一部オンライン化等を実行しようとしている最中、4月に新型コロナウイルスの感染が拡大した。政府が緊急事態宣言を出し、社員や編集スタッフの在宅勤務が不可欠となった。
そこで「ものづくり改革本部」は、これまで少し先を見据えて、制作のオンライン化に向けて共同で開発に取り組んでいた株式会社Brushupに対して、「状況が変わったため、すぐにでもBrushup※を全面導入したい」と、協力を要請した。
電話とチャットツールでやり取りを行い、開発担当者などの協力を得ながら、約千人に上るスタッフや社員がBrushup機能をすぐ利用できるように校正業務に必要な機能を絞りこんでいった。そして最終的には相談を開始した約10日後に使えるようにした。

※Brushup社が開発する複数の人が文書や音声、動画をオンライン上で共同編集できるツール

  • ▲タップで拡大して表示します

    ▲クリックで拡大して表示します

もともと、このBrushupは、ゲームやWebデザインの制作現場で利用されていたものだった。そのため、教材の編集にも対応できるよう、独自に校正記号の機能も追加した。またスタッフとの受発注工程も電子捺印化した。
この改革により、「進研ゼミ」の編集工程では、紙のやり取りのためだけに出社する必要がなくなり、やり取りにかかっていた各工程での2日分を新たな企画や教材づくりにあてられるようになった。また、デジタルサービスのものづくりには、オンライン送稿だけでなく、工程そのもののオンライン化が向いていることへの気づきもあった。これは、質とスピードの両方をあげるやり方が、従来の制作方法以外にもありそうだという実感につながった。

今後は、オンライン送稿をすることで蓄積される校正等の赤入れや、担当者の判断データを活かしたさらなるDXをねらい、すでに具体化しはじめている。

大切にしてきた、
学びの「型」を体得する教材
それが、ものづくりDXに活きてくる

今回の事例である送稿ならびに各工程業務のオンライン化は、大きな1歩ではある。しかし、「どうしたら、この業務をデジタル化できるか」という考えから脱却しきれていないと清水は語る。「質やスピードを圧倒的に上げるためには、データやツールを元に社員の意識改革をしながら、業務そのものを変えていくことが大切だ」と、さらなる展望を清水は思い描いている。

また、これまで「進研ゼミ」が40年間大切にしてきた教材の「型」もDXに役立つという。「進研ゼミ」の教材は複数の教科を子どもたちが同じステップで学べるように工夫されている。1回分の学習の始まりには、必ず、はじめての内容に取り組むときにも復習として取り組むときにもスムーズに学習ができるように、単元の学習目的や内容が大まかにわかるように工夫された導入がある。その後に、穴埋め式で重要なポイントを確認できるコーナーがある。最後に、学習内容を定着させるための問題と解説があり、さらに応用問題に取り組むという学びの「型」が提示される。この「型」を通して、自然と勉強のやり方を体得できるのが「進研ゼミ」の強みである。国語から数学、数学から英語と、学ぶ教科を変えたとしても、この型があるので勉強に迷わない。暗記と演習を仕分けて勉強を効率的にする方法、そして演習の反復を通して知識を定着させることの必要性を、自然と身につけていくことができる。

この学びの「型」は、多くの場合、並大抵のことでは実現できなかった。教科や科目にはそれぞれの教科の特性があるからだ。そのため学習の内容だけでなく、学習の方法を身につけてほしいという編集者の強い意志がなければ、教材の中身はバラバラになりがちである。このため「進研ゼミ」では、各教科や科目の編集者が、教科間のすり合わせに苦労しながらも時間をかけて議論を重ね、子どもたちの取り組みやすい「型」を追求してきた。それが、今、Benesseとしての大きな資産となり、教材を生み出す上でのDX推進を促す鍵になっているという。なぜなら、高いレベルで質を均質化すると同時にスピードを上げるためには、工程・工期、また、各コンテンツの持つべきメタデータ、タグ、データ種別は、学年、教科ごとの独自ルールを可能な限り排除し、標準化されている状態が必要だからだ。

「進研ゼミが、これまで大切にしてきた教材の「型」。この「型」が、これからの時代のものづくりにも、魂として活きてくると思う。編集者はこれまでやってきたことを、もっと誇りに思っていい」と清水は語る。

この「型」により、今後、編集プロセスのDXは、さらに進みそうだ。この改革で生まれた時間や知見を使って、Benesseは、さらなる教材の顧客価値創造のために、これからもチャレンジを続けていく。

取材:2021-03
掲載:2021-04