昨今、さまざまところで 「SDGs」 という言葉や考え方、活動などにふれることが多くなりました。その背景には、社会や環境、人権など、地球規模の課題が山積している現実があり、それらの課題に対して多くの人の関心が高まっている状況があります。
「SDGs」 について知り、行政や地域、企業の取り組みにふれることで、未来に向けてできることを一緒に考えてみませんか?
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SDGs(エス・ディー・ジーズ)とはSustainable Development Goalsの頭文字をとった略称で、日本語では 「持続可能な開発目標」 と訳されています。
2015年9月の国連サミットで、193の国の首脳の参加のもと、全会一致で採択された 「アジェンダ2030」 に含まれており、世界が平和かつ持続的な成長をしていくための、17の目標と169のターゲットが設定されています。
2030年を達成期限とし、地球規模の社会、経済、環境の側面を統合した目標として、「誰一人取り残さない」 という指針のもと、全ての国の行動を促すものです。
目次
世界共通の目標であるSDGsは、世界規模の課題を、飢餓や貧困、環境、人権などの17の目標に分けて設定しています。 またSDGsが掲げる 「2030アジェンダ」 では、17の目標を以下の 「5つのP」 に分類しています。17の目標はそれぞれが重なり、つながり合っており、5つのPと合わせて理解することで、より全体像がとらえやすくなります。
- 出典:
1800年代後半からの技術革命、1900年代の経済発展や国際紛争は、世界に大きな変化をもたらしました。1950年代には特に経済発展が進み、その裏側では、大きな気候変動や、資源開発や廃棄物による環境汚染、人種や地域間の貧富の格差が拡大するなど、課題が山積していきました。 そのような状況から、「このままでは地球を次世代に残すことができない」 という危機感が生まれます。1970年代以降は、環境問題や飢餓や貧困、人権や紛争など、地球規模で取り組むべき課題の解決に向けた国際会議や、条約の締結が進みました。
SDGsの歴史
MDGsからSDGsへ 残された課題とさらなる目標
2000年9月に開催された、国連ミレニアム・サミットの中で、来る21世紀に向けた国際社会の目標として、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)が掲げられました。
MDGsは発展途上国の開発問題にフォーカスし、先進国はそれを支援するという位置づけでした。MDGsは 「極度の貧困と飢餓の撲滅」 「乳幼児死亡率の削減」 などの保健分野、初等教育の普及、ジェンダー平等の推進、環境の持続可能性確保といった、教育、人権、環境分野にわたる8つの目標が設定されました。
2015年末までの達成を目指したMDGsの後で、依然として残る貧困や環境の課題がSDGsへと引き継がれています。
SDGsは、MDGsの課題を引き継ぐとともに、枠組みをさらに広げ、経済・社会・環境というより大きなテーマで、先進国にも共通の課題を取り上げながら、全世界を対象として新たに設定されました。
現在は、2015年に掲げられ2016年1月1日に発効されたSDGsのスタート年から、達成期限である2030年までの折り返し地点にあたります。しかし、現時点でのSDGsの達成状況は目標にはほど遠く、世界が協力と連携して様々な課題の解決に本気であたることが求められています。
国際社会の状況
2023年に発表されたレポートの中では 「2030アジェンダの中間点では、全ての項目が大きく軌道から外れている。全ての国は自国の戦略を振り返って検証と修正を行い、多国間で強化すべきだ」 と述べられており、世界全体でより一層の取り組みが必要とされています。
また、SDGsの各国の取り組みや状況は、毎年ランキング形式で評価が発表されています。世界の166ヵ国を対象とした2023年の評価では、ヨーロッパの国が上位を占める結果となりました。
現在、日本のSDGsは、どのような状況にあるのでしょうか。
「SDGs」 という言葉は、様々なメディアや取り組みで聞かれるようになりました。その結果、認知率は年々向上しており、実践意欲が高い人の割合も増えています。
しかしその一方で、2023年の国際評価※では、日本は2022年の19位から21位へ後退しています。
日本のSDGsの進捗状況は?
17の目標の達成度をみると 「4:質の高い教育をみんなに」 「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」 は達成しているとの評価ですが、「5:ジェンダーの平等」 「12:住み続けられるまちづくりを」 「13:気候変動の具体的対策を」 「14:海の豊かさを守ろう」 「15:陸の豊かさも守ろう」 の項目は、4段階で最低基準の評価を受けています。
各項目には詳細基準が設けられており、「5:ジェンダー平等を実現しよう」 では、国会に女性が占める議席数、男女の賃金格差、「13:気候変動に具体的な対策を」 では化石燃料の燃焼や、輸入に伴うCO2の排出量などで低評価につながっています。
評価の背景は複雑に絡み合っており、個人や単独の組織の努力だけで改善するものではありません。目標達成に至るには、行政、企業、個人が連携し合い、改善への取り組みが必要です。
そうした状況をふまえ、日本政府はSDGsの推進と達成に向け、毎年、優先的に取り組む内容の具体策を 「アクションプラン※」 としてまとめています。
- 出典:
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- ※ 2023アクションプラン【PDF】
アクションプランを道しるべの一つにしながら、行政、企業、個人がすでに様々な取り組みをしています。
- ※ 2023アクションプラン【PDF】
2023年度のアクションプランとは?
2023年度のアクションプランでは、特に注力する内容として、5つのPに基づき、以下の8項目を優先課題として掲げています。
SDGsは世界の人々がより幸せに生きていくための目標です。 この目標のもとに課題を解決することで、より暮らしやすい地域、やりがいのある仕事が生まれ、将来の世代のためによりよい環境や社会、経済の成長へとつながっていきます。ここでは、地域と企業の取り組みを紹介します。
地域の取り組み状況は?
SDGsに関する全国アンケート調査によると、70%を超える自治体がすでにSDGsの推進に取り組んでいます。
注力する目標は 「3:すべての人に健康と福祉を」 「4:質の高い教育をみんなに」 「11:住み続けられるまちづくりを」 が突出していますが、他の目標への取り組みも数多くあり、地域の特色ある環境や資源をもとにした独自の取り組みで、SDGsを地方創生につなげている自治体が多くあります。
先進的な取り組みとは?
内閣府はSDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として 「地域創生プラットフォーム」 を設置しています。
また、2018年からはSDGs未来都市を選定し、特に先進的な取り組みを行う自治体では⾃治体SDGsモデル事業を推進する取り組みを行っています。SDGs未来都市は、全国182都市(183自治体)※2023年度時点が選定されており、政府は2024年度までに累計210都市を選定することを目標としています。
企業の取り組み状況は?
企業は社会を構成する一員として、企業活動には社会的責任が伴います。また社会的責任を果たすことは、今日の企業イメージにつながる重要な役割を担っています。
帝国データバンクの調査によると、各企業のSDGsへの意識も高まっており、調査結果では約5割を超える企業が積極的な取り組みへの意識をもっています。ただ、業界や企業規模による差も大きく、今後一層具体的な取り組みが求められる状況です。
ベネッセグループの取り組み
ベネッセは企業理念として 「Benesse(よく生きる)」 を掲げながら、人の生涯に寄り添い、教育・介護をはじめとしたさまざまな事業活動を行う企業グループです。SDGsへの貢献として、これまでの事業で培った知見やノウハウを元に様々な取り組みを行っています。
一部の教材・サービスの事例をご紹介します。
- しまじろうのもったいない ちゃれんじ 幼児にもわかりやすい手法で物を大切にする心を育む 「まみむめもったいない」 キャンペーンを展開。全国の幼稚園や保育園に紙芝居を無償提供しました。
- まるぐランド 一人ひとりに合った学びかたが求められる今。テクノロジーの力で、多様な子どもたちが“学ぶ喜び”を感じられる、特性に対応した学びを提供しています。
- マジ神AI 超高齢社会の中で、介護の匠である人と、最先端のテクノロジーの強みをかけ合わせ、スタッフの負担を軽減しながらご高齢者のウェルビーイングを支援します。 ※ 「マジ神」 とはベネッセスタイルケアの社内制度で介護の高い専門性と実践力を認定された介護の匠のこと。
「ESG投資」 や 「PRI」 とは?
SDGsに関連して、昨今 「ESG投資」 や 「PRI」 という言葉もよく聞かれるようになりました。
ESG投資とは、財務的な要素に加えて、企業の環境(Environment)や社会(Social)への取り組み、ガバナンス(Governance)という非財務情報に着目して投資先を選定することをいいます。SDGsの目標と重なる部分が多くあり、企業が社会的責任を果たすことが、リスク・収益機会双方の観点から重要 であるとの認識が定着してきています。
企業側への責任とともに、機関投資家への責任を求める原則が 「PRI(Principles for Responsible Investment)」 で、ESG課題(環境、社会、企業統治)を考慮することを6つの投資原則にまとめています。
ここまで国や行政、企業といった大きな枠組みでの取り組みを見てきましたが、大切なことは一人ひとりの個人がSDGsの意識をもち、行動していくことです。 まずは知ること、そして小さなことから行動し、毎日の生活でできることを積み重ねていきましょう。
毎日の生活の中でできるSDGs
普段何気なくしていることも、行動を見直すことでSDGsの目標達成に向けた一歩につながります。身近なことからできることを考えてみませんか?
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食品ロスを減らす
日本の食品ロス量年間523万トンのうち、家庭系からは244万トンで、主に食べ残し、手つかずの食品(直接廃棄)、皮の剥きすぎなど(過剰除去)が発生要因です。大量の食品ロスが発生することにより、様々な影響や問題があります。食品ロスを含めた多くのごみを廃棄するため、ごみ処理に多額のコストがかかっています。大切な食べものを無駄なく食べきることで、環境や家計にも優しくなります。
- 出典:
- 消費者庁 「食品ロスって何?」
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「3R」 を実践する
「3R」 とは、「Reduce(リデュース)」 「Reuse(リユース)」 「Recycle(リサイクル)」 の頭文字をとった総称です。消費者としては 「Reduce」 は物を大切に使い廃棄を減らす、「Reuse」 は再使用やリユース回収を行う、「Recycle」 は資源ごみの分別回収やリサイクル製品の積極利用などができます。
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「エシカル消費」 を意識して購入する
エシカル消費とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うこと。フェアトレード商品や環境配慮の高い製品を選ぶ、地産地消の食材を購入するなど、目標12の 「つかう責任」 のある行動につながります。
「おうちでSDGsについて考えてみたいけれど、子どもに伝えるのが難しい…」 というかたに、SDGsアイディアシートをご用意しました。SDGsの内容をお子さまもわかりやすい言葉でまとめています。また、知ったことを元に、考えたことをワークシートに書きこめます。SDGsを知って、未来のためにできることを考えてみませんか?