CASE STUDY

ITインフラが企業の盛衰を決める難題に取り組んでこそ実現するスピードとコスト減

ベネッセグループ全社のDXを支えるデジタルイノベーションパートナーズ(DIP:Digital Innovation Partners)。インフラソリューション部はその中でも「縁の下の力持ち」ともいえる存在だ。ベネッセの様々なサービスの基盤となるITインフラを構築したり、運用・保守したりする部署になる。単なるクラウド移行にとどまらず、クラウドを使いこなしてベネッセサービスへ貢献することを目指し、挑み続けているのがDIP、インフラソリューション部インフラ構築課の宮本理帆氏だ。大学時代の専攻はフランス文学で文系出身ではあるが、現在はインフラエンジニアとしてベネッセのITインフラを支える宮本氏に話を聞いた。

宮本 理帆

Digital Innovation Partners
インフラソリューション部 インフラ構築課

2019年に新卒でベネッセのIT子会社であるベネッセインフォシェルに入社、2023年の統合を受け、同年7月よりベネッセコーポレーションに転籍した。新卒入社時からインフラエンジニアとしてベネッセサービスのITインフラ環境の構築を担当している。

ISSUE(課題)

単なるクラウド移行にとどまらない
スピードと低コストを目指して

私が所属しているインフラソリューション部はベネッセが提供する各種サービスのITインフラを担っています。以前、ベネッセが提供している英語検定「GTEC」のインフラをクラウド移行するプロジェクトがありました。オンプレミス(自社所有)のサーバーで運用していた同サービスをクラウドに移行するというプロジェクトです。

ベネッセでのクラウド利用はそれまで、「IaaS(Infrastructure as a Service)」と呼ばれる利用形態が一般的でした。IaaSはカスタマイズできる範囲が広く、セキュリティー設定の細かい対応も可能であるなど、高い自由度を持つ特徴があります。半面、構築に時間がかかるほか、管理費用などのコストがさほどオンプレミスと変わらないケースが数多くありました。

GTECのクラウド移行では、PaaS(Platform as a Service)と呼ばれる利用形態で実現しました。PaaSはIaaSと比べて管理コストが大幅に削減でき、しかも素早く構築できる特徴があります。もちろんカスタマイズの自由度で比べればIaaSに軍配が上がりますが、その特性に合わせて設計していけば、PaaSでも必要最低限のカスタマイズで十分移行に堪えうるのです。従来、IaaSでなければできないと考えられていたベネッセの様々なサービスのクラウド基盤をPaaSでどう実現するかをまず考える、“PaaSファースト”をどのように進めていくかが現在の私たちの実行テーマです。

SOLUTION(ソリューション)

未踏の領域に抱える不安を払拭
地道な検証を積み上げる

IaaSで実現してきたクラウド環境を突然PaaSに切り替えるといわれても、各サービスの担当者は戸惑ってしまいます。加えて、すべてのサービスがどれも同じ方法で実現できるわけでもありませんから、きちんとサービスが動くのか心配になるのは当然です。そのため、各部門と協力しながらIaaSで動いているサービスをPaaSで動かしてみてナレッジを貯め、検証した上で切り替えをお願いしていく必要があります。
現在はトライアル&エラーを繰り返しながら標準仕様をつくっているところです。まだ、PaaSで動いているサービスは一部ですが、安定してサービス提供ができているPaaS設計をお手本として示しながら徐々に広げていければと考えています。

RESULT(結果)

スピード要する案件
1カ月半で実現したPaaSの威力

PaaSを活用した案件で基本設計から環境構築までを1カ月半という短期間でリリースできたケースがあります。具体的には志望理由書案件システムと呼ばれるもので、推薦入試のために利用者が書いた志望理由を添削するサービスです。トライアル的になるべく早く利用者に実際に使ってもらいたいという部門側のニーズにPaaSをつかって応えることができました。
これまでのようにIaaSで実現しようとしていたら、サーバーの構築だけでも3カ月、サービス開始に半年間を要していたかもしれません。構築にかかるコストも削減できましたし、短期間で実現したことも成果の一つですが、「安くて早い」というPaaSの認識が広がったこともまた、大きな成果と捉えています。

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

ベネッセに入社した理由はなんでしょう?

もともと大学ではフランス文学を専攻していました。ITに関する知識は皆無で、Excelすら触ったことがありませんでした。ただ、私自身、小さな頃から勉強が好きな子どもでした。勉強が好きで、学校以外でも学習したかったのですが、自宅や学校周辺には塾がありませんでした。そのときに頼ったのがインターネットです。様々な教材があって、これらを使って自分自身の学力を上げることができました。そのおかげもあって志望校に合格できた経験があります。その経験から人の学びをITで支援したいという思いが強くなり、文系にもかかわらず、ベネッセインフォシェルというベネッセグループ内各社の情報システムの運用・保守を担う企業に入りました(2023年7月にベネッセホールディングスが吸収合併)。

仕事を通じてどのような未来を実現したいですか?

私の仕事はサービスを企画するといったフロントの仕事ではないので、子どもたちに直接影響を与えられるわけではありません。ただ、インフラ基盤をできるだけ安くしたり、早くサービスをつくれる環境を整えたりすることで、間接的に貢献することはできます。インフラにかかるコストが下がればそれだけサービスの提供コストが下がりますし、より多くの子どもたちにサービスを届けられるからです。
もちろん企業全体の利益にも貢献できますし、なるべく早くサービスをリリースすることで競合に対して優位に立つことができます。インフラ部門は縁の下の力持ち。こう思って仕事に取り組んでいます。

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