Benesse 「よく生きる」

EPISODE 学びを支えるストーリー 可能性を広げる
きっかけがある

学校の先生が実現したい
小学生英語の指導を支える
小学生英語
左:「スピーキングクエスト」企画・コンテンツ開発担当 松村 百合野
入社以来、小中学校や高校生の学校向け商品における、英語の育成教材の開発を約5年に渡り担当。「スピーキングクエスト」のコンテンツ開発を推進。
右:「スピーキングクエスト」営業推進リーダー 瀬川 裕也
小中学校、教育委員会向けに、英語力向上や学力向上、ICT活用提案などを軸とした、行政コンサル業務に10年以上携わる。英語のパフォーマンステスト*「スピーキングクエスト」などの営業推進を担当。
*パフォーマンステストとは、記述試験ではなく、プレゼンテーションやインタビュー、ディスカッションなど児童・生徒のコミュニケーション能力を測るテストです。
2020年度から始まった、小学校5・6年生での外国語の教科化に対応。小学校英語に特化したベネッセ独自のAIを搭載し、出題から採点・評価までをタブレットPCで実施できる英語のパフォーマンステスト「スピーキングクエスト」。
2021年の第18回日本e-learning大賞「総務大臣賞」を受賞。
こだわりポイント
  • 学校の先生の課題に真摯に向き合い、先生が実現したい指導を具現化することに徹底的にこだわった商品開発で、児童の意欲を引き出すオリジナルのパフォーマンステストを実現
  • 学校現場での活用状況や児童の学びの状況を追い続け、改善・改良を続けていく
2020年度に小学校英語が教科化され、学校現場では、英語の専科教員以外の先生が指導や評価をつける難しさなどの課題に直面していました。「スピーキングクエスト」での学校・先生のご支援と、その先にある児童の「やりたい」「楽しい」を引き出す“学び”へのこだわり・想いをご紹介します。

「先生の課題を解決したい」「英語を学び続ける意欲を育みたい」
その一心から企画をスタート

瀬川
小学校英語が教科化されると文部科学省から正式に発表があったのが2017年度です。当時、小学校や教育委員会の先生と話をする中で、学校現場に求められる変化がとても大きいことが見えてきました。
「聞く・話す・読む・書く」の4技能の指導や言語活動の実践に加えて、成績評価をすることが学校現場での大きな変化でした。英語の専科教員の先生がいる学校は限定的で、小学校で英語を指導し評価するのは学級担任の先生が中心です。すでに校外学習で学んでいる英語が得意な児童と初めて学ぶ児童がいる中で、指導ができるのか。学級担任の先生が評価までできるのか。知識の定着を問われるようなペーパーテストが重視されると、英語嫌いの児童が増えるのではないか。そうした不安が学校現場で生まれていることを、先生とのお話の中で感じていました。
また、学校現場の支援を続けてきた中で、地域差が拡大する課題を感じていました。ALT(外国人指導助手)や専科教員の配置状況、教育委員会による学校の先生向けの研修体制など、自治体ごとに状況が異なる状態でした。
指導、評価をつける難しさ、ALTや外部人材との連携も難しい状況がある。そのような中で、求められる内容は高度化し、英語嫌いな児童が増えてしまうのではないか。目の前で起ころうとしている変化を成功させたい。成功させることで、将来英語で悩むことからの解放につながっていく。そう考え、「スピーキングクエスト」の企画検討をスタートさせました。
松村
新学習指導要領の発信を受け、「外国語活動」から「教科化」への移行措置期間が始まりましたが、地域によって授業時間や履修状況に差異があることがわかりました。教科化への準備についても差がある中で、新しく採用された「教科書」を元に指導をしなくてはならない点、成績をつけなくてはいけない点、さらに、その評価自体を英語が専任ではない先生がしていかないといけないという掛け合わせの大変さは、商品担当としても大きな変化かつ、課題だと捉えていました。
移行措置期間を前に、英語教育に力を入れている自治体からの依頼を受けて自治体独自のパフォーマンステストの作成を担当しました。先生方とともに新学習指導要領を踏まえ、テストで出題する問題や評価観点を作りました。また、テストでの先生と児童とのやり取り(入室→先生の質問に答える→その場で採点し評価を出す)と、評価の仕方がわかる研修動画を作り、動画での児童の回答をもとに「3段階の評価において、今の回答なら1か、2か」と評価基準の理解を深められるよう、具体例をあげて解説を行いました。
いざ、テストを実施すると、「この子は普段よりがんばったから、1ではなく2ではないか」と評価観点とは異なる観点が入ってしまうことがあります。日頃の学びをみとられているのは先生ですので、「主体性」は加味されて、最終的な成績につけられるべきではあります。ただ、テストにおいて、がんばったからと加点されると、先生ごとに評価がばらばらとなり、統一したテストの実施にならない懸念があります。テスト問題の作成や採点のルール作りを学校ごとにどこまでできるのか、どの先生が推進されるのか。別の自治体でも本テストを実施したのですが、テスト問題や研修動画の用意があったとしても、物理的な運営の大変さが見えてきていました。
こうした学校現場の様子から、オンラインで一斉にテスト実施できるようになれば、先生方の負担を軽減できるのではないか、それが「スピーキングクエスト」開発の大きなきっかけです。正しく採点し、即時に得られるテスト結果から、成績をつけるうえでの重要なデータとして活用いただく。また、正答率から定着度が低い単元が即座にわかるので、どのように授業改善するかを先生方に検討いただけるようになる。すべてを先生方だけで何とかするのではなく、ベネッセとしてできることがあると強く感じていました。

(小学校英語に特化したAI音声認識システムを導入)

テスト結果の先にある、児童たちの英語への意欲を引き出したい

瀬川
「英語が楽しい!」「もっと使いたい!」という気持ちで小学校を卒業してもらいたいのですが、学ぶ量が多く、十分に定着しないままテストをし、英語が嫌いという児童が出てしまっていると先生から伺っています。「スピーキングクエスト」を通して、授業で取り組んだ表現が「使えるようになった!相手に伝わって嬉しい!」という経験をしてほしい。もし、「使えなかった」「うまくできなかった」と思っても、「もう1回、がんばりたい!」と思える好循環を「スピーキングクエスト」で生み出したいと考えています。
そのため、「スピーキングクエスト」ではトレーニングモードの機能や、結果を踏まえて学べるよう「<Challenge English> for school」(*)も一緒に使っていただけるようにし、児童のがんばろうと思う気持ちに応えられることを大事にしています。
*<Challenge English> for schoolは、習熟度別のトレーニング教材で、「聞く」「語い」力を個人のペースで学べるデジタル学習コンテンツです
松村
英語が教科になったから学ぶのではなく、英語を学ぶことで、様々な国の人とコミュニケーションが取れるようになれることをどんどん体験してほしいです。今日授業で勉強した内容が伝わった体験を通して、英語で話すことでやり取りは広がっていくんだ、ということを児童に届けていきたいと思っています。
商品名に「クエスト=冒険」とつけたのにも理由があります。いろいろな場面で、画面上に登場するキャラクターから、英語で教えてほしいと問われる冒険仕立てのストーリーにすることで、英語を使うと、知りたい情報もわかるし、キャラクターと気持ちも伝わるし、ストーリーも進んでいく。英語が楽しいという体験を一番届けたいと、こだわって制作しました。

(RPGの主人公となり、キャラクターとの会話を通して学びを進めていく)

児童にとって、知らないことを英語で答えるのは辛いですし、できていることがしっかりと確認できることが大切です。テストで話せていない状態が続けば、途中でお手本をリピートする問題を出題し、テスト終了までに一言も話せず、できなくて悲しかったという思いをさせない、無言にさせない工夫を取り入れ、「『スピーキングクエスト』は楽しそう!もっと英語話してみたい!」と児童に思ってもらえることを追求しました。

徹底して現場の先生の声を具現化する

瀬川
開発の際、先生100人へのヒアリングや学校でのモニター実施を実施したところ、先生から児童に対してポジティブな声かけができる設計にしてほしいという声を多くいただきました。中でも児童が何を話していたか、どう答えているかを一問ごとに再生できるようにしてほしいという声を多くいただいていました。その声を元に、AIの判定後、先生も全ての問題で児童の回答音声を聴けるようにしたところ、普段の授業で発言が少ない児童が想像以上にたくさん話していることがわかった等の反応を先生から頂き、ヒアリングの成果を感じています。

(児童一人ひとりの回答音声を手軽に確認ができる)

最後まで悩んだところが、評価・評定の出し方です。テスト後、児童の結果画面に得点を出すか、出さないか。最終的には、自分自身のできていることがわかるCAN-DO形式にし、先生側では得点率が確認できる設計にしました。前向きな気持ちでテストを実施しながらも、きちんとフィードバックをしたいという現場の先生からの意見を伺い、こだわったところです。ほかにも、トレーニングモードでは、児童が話した瞬間にAIが正解・不正解が判定されますが、話した直後に「×」と表示されるのは心がくじけてしまうため、「チェックマーク」で表示するようにした点も、先生からいただいたご意見をもとに工夫をした点です。
「スピーキングクエスト」は、これまで接点のなかった先生や、全国の教育委員会の先生からも広く意見を伺い、複数の視点をいただき進めてきました。結果、再生機能やCAN-DO形式での返却など、小学校らしい温かみのある商品になったと思っています。
松村
児童に返すメッセージは「英語が好き」という気持ちのモチベーションに絶対つながるように、できるようになったことを具体的に書き、うれしいという気持ちを引き出せるよう工夫しました。児童にとっては、ALTの先生を前に話すよりも、画面越しのキャラクターだと緊張せずに話しやすいこともあり、いつもより話せている、がんばっているから総合評価で加点したいということも先生から伺いました。そこで、先生向けの管理画面上で、AIが採点した結果を、先生が変更できる機能もつけることになりました。目の前で児童と向き合い、日々の変化を見ている先生だからこそわかる、児童1人1人ができていることを認め、評価につなげられる設計を、現場の先生の声から作り上げていきました。

先生・児童の活用状況に合わせて、改善・改良をし続ける

瀬川
商品をリリースした後も、授業見学や、先生からの改善のご意見を取り入れながら、改修の議論や検討をしています。また、学級担任の先生は、使い方や、実施するタイミングなどで悩んでいるかたも多いため、専科教員の先生の工夫や評価での活用事例を紹介するウェブセミナーを実施していて、今後、こうした活動を増やしていきたいと考えています。
テストだと普段は緊張するけれども、「スピーキングクエスト」だと楽しい、話しやすい、取り組みやすい、という声を多く頂いています。その中でも、「とまどってしまったところがあったので、自主勉しようと思った」「次からは単元のことを理解してからテストをやろうと思った」「言えたけど、止まらずにすらすら言えるようになりたい」という児童の声が印象的でした。アウトプットを自分で確認して、もっと質を高めたいとインプットに戻る。小学校5・6年生でも英語の学習サイクルが実現できていることが実感でき、嬉しく思っています。
松村
商品として、日ごろの学びのサイクルに活用いただけるための支援の強化を考えています。児童の英語の回答データを見ると、小学校5・6年生で習う単元の中でも定着できている・できていない表現があることが見えてきています。例えば、「私の宝物」という単元では、「My treasure is ~.」という表現を使うのですが、一見すると難しいと思えるこのフレーズはどの児童もよく使えています。一方で「You can ~.」は回答できている割合が低い傾向が見えました。こうしたデータを分析し、単元別にどのような傾向があるかを元に、授業を進めながらも課題がある単元は、どのように授業活動に組み入れると理解・定着が深まるかといった先生向けの指導提案や、児童が1人で学べる個人学習モードのより一層の拡充などを視野に入れ、分析を深めていきたいと考えています。
児童から先生に、「放課後の時間に『スピーキングクエスト』をやってもいいですか」と聞いてくれることがあるそうです。やらされているものではなく、使ってみたい、やってみたいと思ってもらえることが、児童の気持ちに寄り添えていると感じています。授業で学んだことが使えて、楽しくできる。評価の品質にも先生から共感をいただけており、先生・児童の一助になれていることを嬉しく思います。

第18回 日本e-Learning大賞
「総務大臣賞」受賞

企業・学校・自治体などにおける、e ラーニングを活用したコンテンツ・サービス・ソリューションの中から、特に優れたものを選出するアワードです。教育をテーマとしたアワードの中で、経済産業省、文部科学省、総務省、厚生労働省の 4つの大臣賞が付与されるのは他に例がなく、毎年大きな注目を集めています。 日本e-Learningアワードの詳細はこちら

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