ここ数年、これまでになくビジネス現場で通用する英語のスピーキング力を強化したい、測定をしたい、といった問い合わせが急増しています。
背景にはコロナ禍になり“海外に出張する“という物理的な距離を超えるという壁が取り払われたことが考えられます。
ダイレクトに海外とのTV会議がセッティングされ、いきなり英語で本社会議に参加することになったという事例を耳にすることが多くなりました。
このような時代に通用するスピーキングスキルをどのように攻略すべきかをここでは紹介していきます。
目次
英語の話し言葉の95%は1,500語でできている
スピーキングの学習を考える上で、まず理解をしたいのは、ライティング時に使われる語彙とスピーキング時に使われる語彙は全く違うという事です。
OANC ( Open American National Corpus )をご存知でしょうか?1990年以降、一般的なアメリカ英語コーパスを研究しているデータベースですが、非常に興味深い資料があります。
一般的アメリカ英語を分析すると、書き言葉と話し言葉では、求められる語彙数が全く違うという報告です。具体的にご紹介しましょう。
OANCによると、書き言葉の90%は語彙レベル5,000語程度の知識がなければカバーできないのに対し、話し言葉の90%は語彙レベル600語程度で網羅されているという内容です。
中学校の英語教科書の語彙レベルが950~1,200語程度であることを考えると、アメリカ英語の90%は中学レベルの語彙で構成されているということになります。
また話し言葉の95%は語彙レベル1,500語程度です。高校1,2年生の英語の教科書の語彙レベルが1,700語程度ですので、我々は、既に一般英会話ができる準備はできているのです。
日本人が英語を話せない原因は中学・高校時のスピーキング学習法にあり
では、なぜ日本人の大半が「私は英語が話せません」と言うのでしょうか。
原因は口語(話し言葉)で使われる英語と文語(書き言葉)で使われる英語の違いを認識していないことです。
多くの方が、中学・高校での英語教育時に、「読み・書き中心、ときどきヒアリング」という授業を受けてきました。スピーキングに至っては、「読み上げ」という学習でしょう。これは文語体で書かれた文章を音読してきたに過ぎません。
しかし、この学習習慣が悪影響を及ぼし、文語体レベルの語彙数を操らなければならないという感覚から脱することができず、多くの方が英語を口にすることに躊躇してしまう、これが日本人の英語が話せない原因の1つなのです。
ビジネス英語のスピーキング力を上げる3つの方法
それでは具体的にビジネス英語のスピーキング力を上げる方法を3つほどご紹介いたします。
1. アウトプット原理
面白い事例とともにアウトプットの原理に関してご紹介します。
昨日、アメリカ出張から帰ってきたばかりなので、時差ボケで疲労しているに関わらず、“時差ボケ“という単語が出てこなかったために、「How are you, today?」という同僚からの声掛けに「I’m fine.」と答えてしまう日本人の事例です。
多くの日本人は「昨日アメリカから帰ってきたので時差ボケで疲れている」と言おうとします。
そもそもアウトプット基礎原理では元となる日本語文を考えてはいけません。まずは最も伝えたいメッセージを決めます。
つまり「疲れている」ということ=I’m Tired.を口に出します。「時差ボケ」と言いたくても、その英語での表現が分からなければ無視をすればいいのです。
「時差ボケ」が言いたくて、「う~」とか、「あ~」などと、意味不明な発語をする人が非常に多いのですが、これはネイティブが一番嫌がる発語です。
I’m tired.が言えたら、その続きに何故なら・・・という形で理由をつなげます。
つまり、アウトプット基礎原理とは、日本語で言えることを100%英語にしようとするのではなく、
- “日本語で言いたいこと”の情報量を削減し、
- “今言いたいこと”に70~80%程度情報量を引き下げ、
- “自分で言える英語のレベル”つまり中学レベルに語彙を下げて発話するという原理です。
という原理です。
I am tired because I came back from America yesterday.
ここまですれば同僚は、Oh, that’s jet lag, right? (あ~、時差ボケだね)と返してくれるでしょう。
双方向のやり取りの中で情報量を100%に近づけていくことこそがオーラルコミュニケーションなのです。
2. 思考節約フレーズの獲得
ビジネスでのスピーキングシーンでは、当然、自分が言いたいことを論理的に思考するという時間は英語でも日本語でも共通して必要になります。
そのような場合でも日本語であれば、適切な接尾語や考える時間を稼ぐための会話の技術をビジネスパーソンであれば持っていることでしょう。
しかし英語になると、適切に時間を稼ぎながら自分の発言を整理する、つまり思考のWorking Memoryをなるべく空けておくスキルが無いケースが多いのではないでしょうか。
つまりビジネススピーキングスキルを上げる効果的な学習とは、思考節約フレーズをできるだけ獲得するという手段です。思考節約フレーズとは常に定型として多用される文と文を結合させるものを指します。
・・・に関しては=Regarding・・・・
今までのところ・・・=so far, as of now
とりあえず・・・・=for the time being
あるいは、プレゼンテーションを始める最初のオープニングの定型フレーズや会議を始める際の定型フレーズなど、思考を節約してくれるフレーズは必ずビジネスシーンで役に立ちます。
特に日本のビジネスパーソンが苦手なのは、数字を表現するフレーズ類やグラフ・表を参照するフレーズです。
対昨年の3/4・・・・、競業と比較し4倍・・・・この円グラフの〇〇が示すように・・・・、8億4千万の目標に70%到達・・・・
日々日本語で使われている数字の表現、グラフや表を参照させるフレーズは思考を節約する心強い武器になるはずです。
3. 英語を使ってみる
当然、スピーキングスキルをトレーニングするには、「英語を使ってみる」に限ります。
しかし、そう頻繁にネイティブと英語で話す機会があるわけではない人も多いでしょう。
「英語を使ってみる」のレベルも多岐にわたりますが、1人でできるスピーキングトレーニングとして2つほどご紹介いたします。
1)シャドウイング=ネイティブの英語の音声に合わせて(後追いで)発声する
口の周りの英語筋肉を鍛えるのに最も手短な手法の1つです。
まずはスクリプト付きのネイティブの音声を入手します。少し前まではスクリプトとCDの付いた学習教材を探して下さいと言っていましたが、最近ではシャドウイングトレーニングと検索をすれば無料の教材がネット上に多数あります。
ポイントは自分の分かるレベルの内容、文章であること、つまり口語の語彙レベルのシチュエーションであることです。
まずはスクリプトを読みながら何度もシャドウイングを行います。慣れてきたらスクリプトを見ないでシャドウイングしてみましょう。
2)「起きてから寝るまで」練習
なかなか英語を話す機会が無いならば、自分で機会を作ってしまおうというトレーニングです。
これは起きてから寝るまでの間に自分の行動・思考や目の前にある情景を、頭の中で英語を使って解説し続けるという方法です。
書店には「起きてから寝るまで」シリーズが数多く発売されており、電車の中での独り言、会議中の独り言、食事中の独り言、ありとあらゆる「起きてから寝るまで」の状況を英語で解説した書物があります。
これを日々実践してみましょう。1人でできる身近なトレーニグから始めてみるのもひとつの手段です。
スピーキングスキルは英語を口にした時間に比例して伸びる
スピーキング学習法の一例をご紹介しました。
ビジネス現場で使える英語が話せるようになりたければ、まずは英語を口にしてみる、これが鉄則です。スピーキングスキルは英語を口にした時間に比例して伸びていきます。
さぁ、Let’s Speak English!