Benesse 「よく生きる」

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とことん支える

AIを活用し、
高校生のアダプディブな学びを実現
高校生大学受験進研ゼミ
AI StLike
プロジェクトリーダー
石田 洋輔
入社以来、高校生向けの教材編集を担当。「進研ゼミ 高校講座」の次世代型学習アプリ「AI StLike」の開発初期から携わり、現在は、開発チームのプロジェクトリーダーとして、アプリのさらなる進化を目指し、日々挑戦を続けている。
忙しい高校生の日々の学びをサポートする学習アプリ『AIStLike』。「プロ講師によるアダプティブ授業(映像授業)」と「AIによる問題演習」の組み合わせによって、高校生一人ひとりの理解度、習熟度に合わせた最適な学習(アダプティブラーニング)の実現を目指す。2020年3月20日に数学をリリースし、2021年度は英語・国語をリリース予定。
2020年に、第17回 日本e-Learning大賞(一般社団法人e-Learning Initiative Japan主催)において「経済産業大臣賞」を受賞。
こだわりポイント
  • AIを活用した “アダプティブ”を実現
  • “アダプティブ“を実現するための「作り方」にもこだわり
  • 高校生の声、実際のデータを見て常にアップデート
  • 社外のパートナーとの高め合いによって、モチベーションのアップするアダプティブを実現

”アダプティブ“の徹底と、それを実現するための「作り方」の変革

石田
『AI StLike』の学習の流れは、映像授業で理解した後、AIの分析結果によって出題される問題演習に取り組みます。学習の中で、最もこだわったのは、“アダプティブ”です。
「その人自身」と「その他の多くのユーザー」のビックデータを毎秒AIが解析し、AI自身もアップデートし続けることで、約2000億通りの学び方の中から、その人にとって最適な「学び方」をお届けする。人の力だけでは実現できなかった超個別な最適学習が実現可能になりました。問題演習だけでなく、映像授業もアダプティブです。チャプター機能や補足動画の機能をつけることで、つまずきどころはより深く学べ、わかっているところはポイントを押さえつつスキップできるようにしています。アプリだからこそできる、一人ひとりにとって本当に学習しやすい環境の実現にこだわりました。
石田
高校生のスマートフォンにはたくさんのアプリが入っています。その中から、日々の学習で使うアプリとして選んでいただくためには、目に見える「コンテンツ」や「機能」以外の操作性やUIUX面でも妥協できません。他の映像アプリや競合アプリを研究し、リリース直前まで改善を繰り返しました。
また、「個別化」を実現するためには、出題する問題や解説も大量に必要になります。しかし、従来の作り方ではAIの進化のスピードに教材制作が追い付かない。そこで、1つの問題から複数の類題とその解説を自動生成する仕組みも研究し、一部の分野で複製に成功しました。このように、「作り方」の変革もセットで行うことにこだわりました。

高校生の声を聞き、データを見て、常に進化し続ける

石田
アプリやAIは、実際に使ってもらいはじめて明らかになる操作のつまずきや要望、AIが導く新しい発見が無数にあります。誌面や内容をお客様に見ていただき完成形を作り上げる「紙教材」とは違う改善サイクルを取り入れる必要がありました。
『AIStLike』は、開発段階で実際に高校生に数週間使ってもらい意見をもらったり、AIによる最適化が機能しているか、ということを調査し、改善・チューニングをした上でリリースしています。できるだけ高いレベルに引き上げた状態でリリースする。そこに賛同してくれる高校生の声に後押しされながら、開発を進めてきました。
リリース後もアプリを使ってくれている高校生の意見をいかして毎月バージョンアップをしています。コロナの影響もあり、直接会って意見を聞くことは難しくなりましたが、アプリの中から意見・要望を開発チームに直接送れる機能を導入することで、利用者の生の声をリアルタイムでキャッチアップし改善に生かしています。
例えば、志望大に応じた演習パックを生成する機能や、「思考力」「論証力」など数学で必要な分野横断的なスキルの実力をチャートで示し、実力を高められる機能。これは、高校生の「自分が何を選べばいいかわからない」「必要な学習内容を教えてほしい」という声から、リリース後に追加しました。英語と国語の追加リリースも「『AI StLike』の学び方で学習したい」という高校生の声を受け準備を進めています。

教育アプリとしての価値を高めてくれる社外パートナーの存在

石田
『AI StLike』は、教材や映像を制作する会社だけでなく、アプリ開発会社、AIのアルゴリズム開発会社など、多くの社外の方々が関わってくださっています。パートナー会社の方々とは、初めにどういう学びを届けたいのか、という目的から話し合いを行い、お互いが納得してから、それを実現するための方法や実装を検討していきます。
各領域のプロの視点から意見をいただき、企画を根本から見直したり、「教育の知見があるなら、そこはAIを使わないほうがいいのではないか」と提案をもらい、はっとさせられたこともありました。
そうした関係性を築けているのは、ビジョンの共有によるものです。
『AI StLike』が実現したい世界は、学年や学校の進度、その人の置かれた学習環境の制約を超えて、自分に合ったペースと方法で「学び」をどんどん先に進めることができる世界。そしてその結果、教育アプリとして圧倒的No.1となること。
『AIStLike』のStLikeは、Study+Likeが由来です。そのため、使いやすさだけにとどまらず、モチベーションがあがるものを届けたい。例えば高校1年生の時から同じ志望大を目指すライバルの中での自分の位置がわかるような仕組みも取り入れています。
多様な領域のプロの方々と、「最高の学びを届けたい」という1つの目的に向かって議論し、トライ&エラーを繰り返すことが、質の高い学びをお届けできることにつながっていると確信しています。

受験直前の高校生からもらえた「アプリで初めて苦手が克服できた」

石田
『AIStLike』は学年を超えて学べるため、開発当初は、数学が得意な高校生が先取り学習のために使うケースが中心なるだろうと考えていました。しかし、実際には、受験直前期の高校生から“アプリで初めて苦手克服ができた”という声や、“休校で授業がない時も映像授業と演習学習を前に進められた”、“学校の予習・復習で毎日使っている”など、いろんなシーンで高校生の課題の解決につながっている声をいただくことができました。
進研ゼミ高校講座が生まれて50年。高校生のつまずきの分析やそれを解決するノウハウには、50年分の知見が蓄積しています。
その知見をそのままお届けするのではなく、デジタル化したうえで日々アップデートしていく仕組みを作ることで、私たちも想定していない学習ルートをたどって解けなかった問題を解けるようになっていく様子が見えてきました。AIによるアダプティブ学習により正答率が向上した、という学習効果の実績も出ています。
さらに多くの方にこのアプリを使って学んでもらい、人とAIの力で教育の知見をアップデートし、それを一人ひとりの学びの最適化に還元したいと思います。
学びの質を上げる挑戦をこれからも続けていきたいと思います。

(「経済産業大臣賞」を受賞した第17回 日本e-Learning大賞 受賞式の様子)

撮影:デザインオフィス・キャン

(2020年12月取材)

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