Benesse 「よく生きる」

EPISODE 人と社会の
「Benesse(よく生きる)」
をめざして

介護スタッフの専門性とAIの活用で一人ひとりに最適な介護を!
社会課題デジタル介護高齢者

(左から)
株式会社ベネッセスタイルケア 東関東・北日本エリア事業本部 長嶋洋(Hiroshi NAGASHIMA)
株式会社ベネッセスタイルケア まどか東葛西
介護スタッフ 小川友香(Yuka OGAWA)
ホーム長 甲谷健介(Kensuke KABUTOYA)
看護職員 及川朋子(Tomoko OIKAWA)

日本は高齢社会を迎え、介護の需要がますます高まっている一方、介護サービスに関わる人材の不足という課題も抱えています。
有料老人ホームの運営など介護事業を展開する株式会社ベネッセスタイルケアでは、独自の専門資格「マジ神」(※1)制度を設定し、介護人材の充実をはかるとともに、AIを活用した「マジ神AI」(※2)を開発。ご入居者様のQOL(Quality Of Life)向上、ご家族に安心していただけるホームの運営によって、ご入居者様が「その方らしく」生活していただける環境を提供しています。「マジ神AI」のホームへの導入を推進している長嶋、積極的に活用している「まどか東葛西」(東京都江戸川区)ホーム長の甲谷、看護職員の及川、介護スタッフの小川に話を聞きました。

(※1)ベネッセスタイルケアの「マジ神」
ベネッセスタイルケア独自の専門資格制度(社内呼称「マジ神制度」)によって、「認知症ケア」「介護技術」「安全管理と再発防止」「医療連携&ACP(※3)」において高い専門性と実践力を認定された「介護の匠」(スペシャリスト)。

(※2)ベネッセスタイルケアの「マジ神AI」
高い専門性をもつ介護スタッフ「マジ神」の思考手順や行動をAIに学習させたシステム。

(※3)ACP
アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)。人生の最終段階の医療・ケアについて、本人を主体に、家族や医療・ケアチームなどが、事前に繰り返し話し合うプロセス。

データから一人ひとりのお困りごとを的確に発見し、最適な介護サービスの提供を目指す

「マジ神AI」をまどか東葛西に導入した経緯を教えてください。
長嶋
ベネッセスタイルケアでは、元々、「サービスナビゲーションシステム」という介護記録システムを活用してきました。「まどか東葛西」はデータ活用のトライアルホームとして、2022年には睡眠センサーを、2023年には「マジ神AI」を導入し、段階的にさまざまなデータを複合的に活用しています。

普段の食事や水分摂取量、排泄の頻度などの情報や、スタッフがご入居者様の様子から気づいたことなどを入力し、お一人ずつのカルテのようなものをつくっており、「マジ神AI」では、一定期間を遡り、データをグラフ化して見られるので、体重や血圧の変化も確認しやすく、ケアをする際のヒントになっています。
長嶋は、2020年度から東関東・北日本エリア事業本部においてサービスナビゲーションシステムの活用推進を担当。2023年度よりエリア事業本部内での「マジ神AI」を活用したアセスメントを推進する。
今までのシステムと、「マジ神AI」では、どのような点が異なるのでしょうか?
甲谷
お一人おひとりの情報をより詳細に、関係するスタッフ全員で見られるようになったことがポイントです。より確かな情報をもとに、看護職員、居室担当の介護スタッフ、ケアマネジャー、ホーム長といった多職種で協議し、食事・排泄・睡眠など、その方にとって注意するべきポイントを絞りこみ、最適なケアについて、より深く検討できるようになりました。また、対応した後も、その結果を共有しやすくなりました。
マジ神AI画面の一例。AIが、「認知症の行動・心理症状」や「認知症の周辺症状」および体調変化の要因を予測し、対応のヒントを提示。

客観的なデータから仮説を立て、解決することで、ご入居者とご家族に安心して日常を過ごしていただきたい

実際のケアの中で、どのように生かされているのでしょうか。
小川
あるご入居者様の食事量が急激に落ちていることを「マジ神AIダッシュボード」から発見したことがありました。介護スタッフの関わりと食事量に何らかの関係があるのではないかという仮説を立てて、スタッフのシフトと食事摂取量を照合してみました。すると、新人スタッフが対応するときに、食事量が減っていることに気づきました。経験のあるスタッフの関わり方を新人スタッフにアドバイスしたところ、食事量が元に戻ったケースがあります。
また、この方のそれまでの生活記録を確認したところ、顔なじみのご入居者様のお部屋が他のフロアに移動すると食事量が減るなど、お気持ちの不安が食事量に現れやすいという傾向もわかるようになりました。日常生活のなかで、ご不安になる要素がないか、何かある場合は通常以上にお声がけするようにしています。
さらに、睡眠の深浅についても記録が残るので、日勤の介護スタッフから夜勤担当者へと状態を共有しやすくなり、日々のケアに生かせるようになりました。
「まどか東葛西」介護スタッフの小川。専門職としてのスキルを高めるため、学び続けることをモットーとしている。
甲谷
「眠れていない」ということを訴えるご入居者様のデータを見たところ、逆に昼間はよく眠れていることがわかりました。昼夜逆転を改善すれば、眠れないという不安が解消できると仮説を立て、日中、日光浴に取り組んだところ、夜間の睡眠が改善しました。
眠っていらっしゃるかどうか、以前は近くで見ないとわからなかったのですが、今はセンサーでわかるので、ご入居者様を起こしてしまうようなこともなくなりました。
「まどか東葛西」ホーム長の甲谷。様々な取り組みを進めるため、ホームのスタッフと共に業務改善に携わる。
日々の具体的なデータから仮説を立て、ケアに生かしているのですね。
及川
はい。食事や睡眠についてだけではなく、医療的な観点では、血圧なども、短期的にも長期的にも客観的なデータに基づいて医師と確認することができるので、薬の量の調整につながることもあります。
データから仮説を立てて、ご入居者様のお困りごとの解決策を考え、対応していく。ご家族様にもデータをもとにお話しすることで安心していただけています。
2004年の「まどか東葛西」オープン時から、看護職員として勤務している及川。薬剤処方の適正化を図る取り組みにも力を入れる。

AI活用は、介護スタッフの成長にもつながる。「入居してよかった」と思っていただけるように!

介護のあり方はこの先も進化していくと思いますが、これからどのように取り組んでいきたいですか。
小川
私は、「マジ神」の中の「介護技術」の資格取得を目指しています。「マジ神」に求められるのは、ご入居者様やご家族様に根拠をもって説明ができるということ。お一人おひとりの課題を解決していくことで、ご入居者様にもご家族様からも、信頼されるスタッフになりたいです。
及川
「まどか東葛西」オープン時から20年勤続しています。長く勤務していると、経験で対応しがちですが、そうではなく、「マジ神AI」など裏づけになるデータを持って語れることを目指していきたいです。
甲谷
ご入居者様やご家族様に「このホームに入居してよかった」と思っていただけることが、自分たちの仕事のあるべき姿です。データを活用しながら信頼を築き、喜んでいただけるような取り組みを進めていきたいです。
長嶋
まずは、「マジ神AI」を多くのホームに導入し、根づかせていきたいです。データを活用することで、ご入居者様お一人おひとりの変化に気づくことも増え、介護スタッフそれぞれの成長にもつながっています。また、介護スタッフが成長すれば、ご入居者様に適した介護サービスを提供することができ、QOL向上にもつながります。
ベネッセスタイルケアが目指す「自分や自分の家族にしてもらいたいサービス」・「その方らしさに、深く寄りそう。」ことをもっと深化させていければと思います。

撮影:デザインオフィス・キャン ※ご紹介した情報、プロフィールは2024年9月取材時のものです。

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