Benesse 「よく生きる」

EPISODE 人と社会の
「Benesse(よく生きる)」
をめざして

ベネッセと自治体による新たな
ネットワークで、全国自治体の
DX・リスキリングを推進
共創自治体社会課題社会人Udemy

株式会社ベネッセコーポレーション
社会人教育事業本部事業戦略部
池田いづみ

ベネッセコーポレーションは2023年5月、全国45自治体とともに「全国自治体リスキリングネットワーク」を発足しました。
自治体内のDX人材育成、中小企業のDX推進、市民へのリスキリングの機会提供など、社会変化のなかで対応を急がれるテーマに取り組む「自治体のためのコミュニティ」づくりを目指しています。立ち上げの経緯と活動の様子を、ネットワーク事務局の池田が語ります。

「進め方がわからない」から一歩踏み出すには、
自治体間の情報交換と交流が必要

「全国自治体リスキリングネットワーク」を発足させた理由を教えてください。
池田
いま日本全国の自治体にとって共通の課題は、庁内のデジタル化や地元中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、それを担う人材の育成に向けたリスキリング(学び足し)です。

ベネッセコーポレーションでは「Udemy(ユーデミー)※」などを活用した社会人教育の事業を行っているため、自治体にお話を聞く機会も多いのですが、この課題に対してどのようにアプローチするか、ほとんどの方が手探り状態でいらっしゃったのです。

何かサポートできることはないかと、全国34自治体との実証研究やワーキンググループの開催を重ね、実態把握やノウハウの発見・蓄積を行ってきたことが背景にあります。
どのようなことでお困りだったのでしょうか。
池田
具体的というよりは、「そもそもDXとは?」、「先進的な自治体はどう進めているのか?」といった、何をどう進めればよいかがわからないというお話がほとんどでした。

そこで、オンラインで情報交換を行う企画をご提案したところ、「自分たちも参加したい」という反応をたくさんいただけたんです。実際やってみると、それぞれがオープンに悩みを話されたり、「ほかの地域にも貢献できるなら」と先を進む自治体から事例紹介をしてくださったりと、大いに盛り上がりました。

もともと自治体の方は、よい事例はしっかり取り入れようという意識が高いので、横のつながりや知見共有の仕組みがあれば役立つはずと想像していましたが、ネットワークをつくることの有効性を改めて実感しました。

それならばと、事業でつながりのある自治体の皆さんに声をかけ、「全国自治体リスキリングネットワーク」の発足へとつながっていったのです。
2023年5月にキックオフイベントが開催され、自治体の代表者なども登壇した。

民間ならではの情報力と知見で
自治体の取り組みをサポートする

どのような自治体が参加されていますか。
池田
立ち上げ時は弊社のサービスを導入してくださっているところが主でしたが、いまはそれ以外の数のほうが上回っています。2023年10月末時点で47都道府県の4割に広がり、計86自治体が参加されています。

なかには、庁内のDXを推進されているご担当者が育成に関心のある人事の方に声をかけ、「一緒に参加することにしました」とつなげていただいたケースもありました。間口を広げて多くの方に参加していただけるとよいなと思っています。
ベネッセコーポレーションの役割は?
池田
事務局として参画しています。主な活動の一つは、ベネッセからの定期的な情報発信。日々の「こういう事例を知りたい」という声にお応えできるよう、メールマガジンを通じて、専門家のセミナーレポートや取材記事などをお届けしています。

もう一つは、半期に1回程度の定期的なイベントや情報交換会を設け、自治体の皆さんが地域を超えてつながるコミュニティになっていくよう推進しています。
いわゆる「事業活動」とは、一線を画す取り組みのようですが…。
池田
もちろん、ベネッセのできることやポテンシャルを感じていただき、事業活動への関心につながればという思いはあります。

ただそれ以上に、一人ひとりの「Benesse(よく生きる)」の実現を支援するという、ベネッセグループの企業哲学を起点にした取り組みなのだと捉えています。

先ほどお話ししたように、私たちは事業を通じて全国の自治体と接点があり、先進的取り組みなど他エリアにも参考になる実績を知る機会があります。また民間の立場だからこそ、広く企業や専門家の方々からの知見を集めることもできます。そういった強みを生かして自治体の方々をサポートできれば、いずれは社会全体の課題解決に貢献できるはずだと考えています。

また企画時点では「行政特化型の人材育成コミュニティ」はほかに見当たらなかったので、新しく立ち上げることの意義・使命感もありました。
最近の動きを教えてください。
池田
2023年9月に、第2回目となるイベントを開催しました。オンラインで22自治体、33名の方が参加し、第1部は経験豊富な専門家による「DX戦略の要点と実践のための人材像」のセミナー、第2部はグループに分かれての情報交換会を行いました。
情報交換会のトピックは?
池田
デジタルの得意・不得意といった人材の二極化への対応、人材育成研修のプログラムの組み方、学びのモチベーションづくりなど各現場の困りごとに対し、事例や最新情報の共有、対応のポイントなどの意見が交わされました。とくに、研修でインプットした内容の定着や学び続けてもらう方法、何を成果とするかの目標の立て方は、どの自治体でも共通の課題のようです。

事務局からの情報提供は引き続き進めていきますが、例えば同じ困りごとを持つ方々での分科会や、近隣地域のご担当者を集めてのオンライン/オフライン会を設けるなど、皆さんの要望に沿いながらコミュニティ活性のアイデアをご提案していきたいですね。

また、DXやリスキリングは世の中の動きとともに毎年ニーズやフェーズが変わるので、全体を俯瞰して見落としのないようにしていかねばとも思います。

自治体のご担当者が取り組みの成果を実感し、
「市民のために」行動し続ける後押しをしたい

池田さん自身、このネットワークにどのような意義を感じていますか。
池田
自治体の方々とコミュニケーションするなかで強く感じるのは、皆さんが「市民のために」を大命題に掲げ、どの業務を担当されていても必ずそこに行き着くことです。「誰ひとり取り残さない社会をつくる」ことに真摯に向き合っていらっしゃいます。私たちのできることでその活動に弾みがつき、市民に還元されていくとすれば、それは大きなやりがいになります。
これからさらに、どのような取り組みを進めたいですか。
池田
何といってもこのネットワークの主役は自治体のご担当者です。悩まれていることだけじゃなくて、「実際にこんなことができるようになった」、「こんな取り組みを始めました」というアクションや事例を発信するお手伝いもしたいですね。

皆さんすごく謙虚で、「こんなの成果じゃないです」とおっしゃるのですが、「こういう結果が得られたのですから、それは成功ですよ」という後押しができればと。

ベネッセも「正解」を持っているわけではありませんから、実行した成果を可視化するサポートなどをして、「自分たちの努力が、市民の暮らしにも活かされている」という手応えを持ちながら取り組んでいく自治体が増えるとよいなと、心から思っています。
自治体ご担当者より
鳥取県 商工労働部 雇用人材局 産業人材課 未来創造人材室 田中拓也(たなか たくや)さん

鳥取県は「Udemy」を通してベネッセコーポレーションとお付き合いがあり、県内企業へのヒアリングを一緒に行ったりしています。リスキリングの機運醸成を図る「リスキリング共同宣言」に加え、「全国自治体のネットワーク化」のお話を聞いた際には、より具体的な活動につながっていくのではないかと感じました。

たとえば行政では新たな取り組みを始めるにあたり、他地域の事例を参考にしたり、ほかの自治体に対し施策アンケートを実施したりすることがあります。ネットワークをつくることで「人材育成に関する自治体間の情報交換の場が少ない」といった課題を解消できればと思っています。

一方、名を連ねて事例が紹介されるだけではネットワークの効果が限定的です。短期間で担当者が変わることもあるため、どのような仕掛けで自治体を巻き込んでいくかが大切になるのではないでしょうか。担当者向けにDXやリスキリングに関する理解を深める機会をつくる、自治体のリスキリング事例の表彰をするなどの工夫もあるとよいなと、期待しています。
池田いづみ(Izumi IKEDA)
メーカーの営業・企画職、NPO法人・ベンチャー企業でのマーケティング職を経てベネッセコーポレーションに入社。ネットワーク運営の経験を活かし、「全国自治体リスキリングネットワーク」の立ち上げをはじめ、自治体向けの営業・マーケティング業務を担う。

※Udemy, Inc. と(株)ベネッセコーポレーションは、日本における独占的事業パートナーシップを結んでいます。

撮影:デザインオフィス・キャン  ※ご紹介した情報、プロフィールは2023年10月時点のものです。

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