英語の学習方法に関する誤解がなかなか解けません。
これは学生時代の「成績を取る」ための学習方法と「使える英語」を習得する学習方法が違うということを誰も教えてくれないからです。
ここでは「使える英語」を習得するための学習方法の基礎に関してご紹介します。
目次
ビジネス英語学習の基礎となるLearning Cycleとは?
Learning Cycleという言葉をご存知でしょうか?
我々がなにかを習得する際にはLearning Cycleというものが存在しスポーツや言語、スキルを身につけていきます。
これは第二言語でも同様の考え方が当てはまります。
まず、英語を全く知らない状態から、中学生になり英語の教科書を使って英語の先生が英語を教えてくれました。
この「学習」の段階が学生時代の学びです。
英語が苦手な方の大半は、「英語を知っているけどできない」と言います。それは学生時代の「学習」の段階で止まってしまっているからです。
あるいは、入試などで、「練習」の段階まで進んだ方も多いはずです。大学卒業程度の学歴のある方であれば、学生時代は「ゆっくり考えてやればできた」のではないでしょうか?
テニスで例えると、これはまだ「素振り」のフェースです。
大学入試やセンター試験対策などで十分に学び「学習」→「練習」の段階まで来ているのであれば、ビジネスパーソンになってまで、改めて「学習」→「練習」の段階に戻ってはいけません。
「使える英語」を習得するためにはこの段階から脱却し、「実践」の段階に進まなくてはなりません。
ビジネス新聞から見る中学レベルの英単語の重要性
ここで1つ面白い事例をご紹介しましょう。世界中で購読者数を多く抱えるFinancial Timesという世界版日経新聞のようなビジネス新聞があります。
この1つの記事で使われている英語の語彙数がだいたい350~400語程度です。
では、この350~400語の中で、基本の1000語と呼ばれる中学レベルの英単語は何パーセントだと思いますか?
驚くことに、世界版のビジネス新聞であるFinancial Times誌でさえ、70~80%は基本の1000語で構成されているのです。
中学レベルの語彙があれば、早々に「実践」の段階に進むべきというアドバイスが理解できるのではないでしょうか?
ビジネスシーンにおける語彙の深さの重要性
では、中学レベルの語彙を持ち合わせているにも関わらず、なぜ英語が出来ないのでしょうか?
単語の知識には「サイズ」と「深さ」があります。大半の方は自分の語彙が足りないと語彙の「サイズ」にばかり言及をされます。
しかしここが大きな落とし穴です。
語彙には「深さ」があります。中学レベルの超基本の動詞は、この「深さ」が重要であり、基本の意味から多義語を使い分け使い切る学習の方がはるかに重要なのです。
基本語彙の「深さ」を理解するために、”run”という単語を使っていくつか文章を作ってみましょう。
A dog runs. (犬が走る。)
This river runs across the state. (この川は州を横切って流れています。)
My father runs a grocery store. (私の父は食料品店を経営しています。)
He likes to run a risk. (彼はリスクを冒すのが好きだ。)
I have a running nose.(鼻水が出ます。)
Make sure no applications are running. (アプリケーションが実行されていないことを確認してください。)
Nylon stockings often run.(ナイロンストッキングはよく伝線します。)
いかがでしょう?皆さんはどのくらい理解ができますか?
“run=走る“という意味しか覚えていない人は、表層的な意味しか掴んでおらず、基本動詞の深さを取得していないことになります。
また、さらにやっかいなことに、ネイティブが口にした英語の意味が分からず、聞き直すと、ネイティブが分かりやすく伝えようとして、runのような基本動詞に置き換えて言い直してくることが多くあります。
しかし、それこそが日本人にとっては更に難しくなってしまう、そんなジレンマがビジネスシーンでは多発しているのです。
お得な学習法はカタカナ語を正しい英語にするだけ
中学レベルの語彙では、ビジネスシーンでは幼稚過ぎる、という方もいるはずです。それならばビジネスシーンで多用されているカタカナ語を正しい発音、正しいスペル、正しい意味に置き換える学びはどうでしょうか?
三省堂から出版されている『コンサイスカタカナ語辞典』を手に取ってみて下さい。どこかで耳にしたり、ビジネスシーンでよくでるカタカナ語がなんと47,000語集録されています。例えばコンプライアンス。この正しいスペル、正しい発音、正しい意味が分かりますか?語彙を増やさないと英語ができない。という言い訳をやめ、まずはできることから始めることが肝心です。
ビジネスで使える文法も中学レベルから
ここまで語彙に関してご紹介してきましたが、全く同様のことが文法にも言えます。
皆さん「仮定法」「比較級」「最上級」など、英語の文法を“説明”するカテゴリー語をよくご存じです。しかし驚くことに文法を使えるかというと、ほぼ使えないとの声を聞きます。
面白いことに4つか5つの選択肢の中から、消去法で正解らしい1つを選ぶことができる方は多いのですが、自分がビジネスシーンで英語をアウトプットする時は、なぜか第一~第三文型までが限界、という方が多いことに驚きます。
これも「学習」→「練習」段階で止まってしまっていることが原因です。
複数の選択肢から正解を選ぶという「練習」段階の学習を続ける限りでは英語をアウトプットできるレベルにはなりません。英語の演習量を増やす学習行動に切り替えなければ、いつまで経っても「使える英語」を獲得することはできません。
学生時代の英語学習方法から脱却しよう
学生時代に「和訳」という学習行動が多かった記憶がありませんか?
中高生の学習行動を分析すると、英語学習の半分以上は英語を通じやすい日本語に「和訳」するという、いわゆる英語ではなく日本語をつくることに時間を要しています。
これは「学習」段階としては必要な学習行動ではありますが、ビジネスで必要な「英語脳」を獲得するには最もふさわしくない学習行動です。
ビジネスパーソンがこれから英語を学習するのではれば「和訳」「英訳」といった日本語を介在させる「学習」の段階から脱し、とにかく「実践」することに注力することが肝心です。