グローバル化という言葉が今後の人材育成のキーワードとして日本でも取り上げられるようになったのは2005年にトーマス・フリードマンによる「フラット化する世界」からではないかと思います。
「フラット化する世界」の中で、どのような段階を経て日本の企業はグローバル化していくのでしょうか?ここでは、グローバル化をビジネス英語教育の視点から考えてみます。
目次
全世界へのビジネス展開=グローバル化の三段階
Global=地球規模の ・地球全体の ・全世界の ・全体的な ・包括的な ・球状の ・球形の・といった意味です。決して、英語化ではありません。
グローバル、つまり、全世界的にビジネス展開をしていくことをグローバル化と称していますが、トーマス・フリードマンによると、このグローバル化には三段階あると書かれています。
第一段階:International=国際化
海外から商品や部品を調達し安く国内市場に提供したり、海外(主に中国や東南アジア)に安いコストを目的とした生産拠点を確保したりしている段階です。
国内への輸入、国内からの輸出といった、自国を軸とした単なるノウハウの海外移転の段階です。
第二段階:Multinational=多国籍化
1989年ベルリンの壁が崩壊し、共産主義が一気に経済圏に流入し世界経済が大きく変容し、世界は急速に第二段階に移行します。
国外の市場を求め、欧米・アジア諸国へ進出、または逆に外国企業の国内進出が増え、企業は「多国籍化(Multinational)」の段階に向かいました。
企業は世界各地に複数の拠点をもち、国内以外の様々な国が供給側にも市場にもなりうる段階です。
第三段階:Global=フラット化
2000年に情報技術革命(=IT革命)が起こり、人・モノ・金・時間の流れが一気に変わりました。
企業体はそれぞれの国の得意分野を活かした国際分業が行われる段階に入りました。
この段階では、国籍や人種や宗教の違いを超えたビジネス上の価値観が共有され、ITツールの整備などにより国と国との間の距離や時差に関係なく、世界最適解の中で効率を重視したプロセス重視のビジネスが行われます。
このグローバリゼーション3.0と呼ばれる世界の中で、企業は今までの国境や距離、時間、言葉をいった障壁を超え、人・モノ・金の経営資源を最適化させてきました。
全く足りないグローバル人材
世界がどんどんフラット化していく中で、特に日本は他先進国の中でも英語教育改革が大幅に遅れ、グローバルに活躍できる人材の不足が叫ばれています。
中でも日本に衝撃を与えたのは2009年にIMD(International Institute of Management Development)が発表した国際競争力ランキングではないでしょうか?
IMDでは、この2009年から総合的競争力を構成する255の指標を公表するようになりました。
その中で、日本は先進国57か国中【管理職の国際経験】52位、【語学能力】55位に位置づけました。この衝撃は当時の新聞紙面を見ても驚きを持って報道されました。
結果として、日本は高学歴人材が最も国際移動をしない国となり、OECD諸国からの人材の流入も流出もないという現象が発生し、英語教育改革が本格化することになります。
日本はグローバル対応の過渡期
そのような中で、日本企業も遅れを取り戻すかのように各社がグローバル人材育成に乗り出しました。
しかしそのスピードやアプローチは様々であり、英語公用化などを謳った企業群でも、成果や実態は一様ではありません。
また、ここ10年の英語を取り巻く環境は大きく変わってきました。その変化を表にまとめてみました。
グローバル化に伴い変化する人材育成の考え方
これほどまでに、語学研修費用に社費を使っている日本は諸外国から見ても稀な存在です。(語学研修費用がなかなか海外のHQから理解されないという話をよく耳にします。)
しかし、各企業が人材育成の考えを変えてきている理由はもっと別の所にあると我々は考えています。
最近の問題意識は大きく2つに分かれます。
1つ目は働き方改革の一環です。
業務の効率化を社員に追及させているので、とにかく現場に時間がない、働き方改革を要求する中で、なかなか語学の研修に時間を要して欲しいと言いにくい、という話です。研修費用として社費を投入しても研修の充足率は決して高くないという実態のようです。
もう1つは、技術革新が目覚ましく新しい技術や知識の習得が急務になっており英語以外に学ばなくてはならないことが急増しているという話です。
CEFR基準でグローバル人材育成を考える
加速化するビジネスのグローバル化という環境の中で、人事はどのようなグローバル人材育成戦略をすべきなのでしょうか。
昨今キーワードになっているのはCEFR(※1)です。
自社の肌感覚でグローバル人材を規定するのではなく、このCEFR基準の中でグローバル人材を定義し、この4技能(聞く・読む・書く・話す)が測れるアセスメントを導入する企業が増えています。
まずはCEFRという基準で「使える英語力」と御社に必要なグローバル人材像を明確にすることが初めの一歩です。
※1)CEFR:「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)」
目指すは持続可能な企業の人材育成
最後に、「学習する組織」というキーワードを耳にすることが多くなってきましたが、人材育成を持続可能にするために組織としてどのようにLayerを変えていかなくてはならないのかをご紹介します。
この図にも記載があるとおりLayerを変えるにはChangeという程度の変革では間に合いません。
語学学習などは1st Layerと位置づけ2nd、3rdと英語以外の学びが促進できる持続可能な企業の人材育成を目指しTransformしませんか。