2022年2月、IT業界にとって大きなニュースが飛び込みました。エンガジェット日本語版・TechCrunch Japanサービス終了の知らせです。前者は2005年、後者は2006年から、それぞれ世界の最新IT情報を長く世間に配信し続け、多くの人に愛されてきました。読者の中には、驚いた方もいるでしょう。
このニュースは、単にエンガジェット日本版・TechCrunch Japanが読めなくなるという小さな問題にとどまりません。もっと根幹の部分で考えるべきことがあります。
本コラムでは、両サービス終了の背景にある日本市場の課題、そしてこの問題がどのように人事に影響していくのか、IT業界でこそ求められる英語力育成の必要性について解説します。
目次
外国企業、外資系企業が日本から撤退する要因と英語力の必要性
エンガジェット日本版とTechCrunch Japanはどちらも、アメリカの企業であるBoundless株式会社によって運営されていました。つまり今回のサービス終了は、外国企業による日本市場からの撤退例の一つと言えます。
こうした外国企業・外資系企業のニュースを最近ほかで目にしたことはないでしょうか。例えば2019年に全店舗を閉店した大手アパレルブランドの「FOREVER 21」。ハワイの高級コーヒーを扱うカフェレストラン「ホノルルコーヒー」など、調べるとたくさんの事例が出てきます。
もちろん、アパレル業界や飲食業界だけに限った話ではありません。経済産業省の調査によると、2019年度に日本市場を撤退した外資系企業は86社で、そのうち情報通信業を営んでいた企業は13社。IT業界も外資系企業が定着しづらい業界の一つなのです。
では、その原因は何でしょうか。先に挙げた経済産業省の調査では、「日本で事業展開する上での阻害要因」について、最大の要因が「ビジネスコストの高さ」で、2番めの要因が「人材確保の難しさ」だとされています。
参考:経済産業省 第 53 回外資系企業動向調査(2019 年調査)の概況
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/gaisikei/result/result_53/pdf/2019gaikyou-k.pdf
さて、「この人材確保の難しさ」、具体的には何だと思いますか。そう、「英語でのコミュニケーションの難しさ」です。どれだけビジネススキルが秀でていても、コミュニケーションが取れないのであれば、そのスキルを生かせません。外国企業、外資系企業にとって、日本人の英語力はそれだけ課題視されているのです。
英語ができないとIT業界の最新情報にアクセスできない危険性がある
みなさんにより直接的な問題として考えていただくために、もう一度エンガジェット日本版・TechCrunch Japanの撤退に話を戻しましょう。
もし今後同様の動きが広まって、「日本語で読める」ITメディアがどんどんなくなっていくとしたらどうでしょうか。間違いなく、日本語でIT関係の最新情報を手に入れるのは難しくなっていくでしょう。プログラミング言語は世界共通なのに皮肉ですね。しかし、外国系企業、外資系企業にとって日本市場に魅力がないのであれば、現実味のある話でしょう。
英語は約10倍、中国語は約8倍、日本語よりも多くの情報がインターネットに流れていると言われています。みなさんもすでに実感されているかもしれませんが、IT業界においても最新情報を手に入れるうえで、英語の必要性が増しつつあります。先に見たように、これからはこの傾向がさらに加速していくかもしれません。
ITは日進月歩。次々と新しい技術が生まれ、メインストリームが変化しています。外国企業に対抗する、外国のクライアントと取引するといった大きな視点だけではなく、国内ビジネスを完結させるにしても、「英語ができるかどうか」は非常に重要な軸となるでしょう。
成長戦略に見合った英語力向上の投資を進めよう
では、具体的にどう社員の英語力を強化していけばよいでしょうか。これは事業成長の方向性によってケースバイケースではありますが、以下に2つの事例を紹介しましょう。
e-Jan ネットワークス株式会社
シーメンス株式会社
前者は開発職の外国人スタッフとのやりとりに必須である英語力を、アセスメントを活用している事例です。一方後者は、海外製品の仕様書を読むため、外国のスタッフにメールをするため、そして前者同様外国人スタッフとコミュニケーションするためといった英語力を、やはりアセスメントで評価している事例です。
どちらも「どこで、どう英語を用いるか」を分析したうえで、解決策を検討している点が見本になるでしょう。まずは今、どの場面で、どのような英語力(Reading、Listening、Writing、Speaking)が必要なのかを振り返り、課題を明確にしましょう。
社員の英語力を育成する術は様々です。英語を社内共用語に定めて活用シーンを増やす、語学研修ベンダーが提供する体系的な育成サービスを導入するといった方法はとても一般的ですし、そもそものマインドセットとして、英語力の必要性を認識させる啓発セミナーも有効。中には独自の研修プログラムを自力で開発する企業も見られます。
どのような方法を採用するかの検討においても、事業成長のために今本当に求められている英語力は何か、社員の英語力を見える化するという点で、アセスメントの活用はやはり効果的でしょう。
ご参考:活用事例詳細はこちらから
・e-Jan ネットワークス株式会社様 GTEC-Business活用事例
・シーメンス株式会社様 GTEC-Business活用事例
これからのIT業界には英語力がますます重要になる
これまで見てきたように、IT業界やエンジニアにとっては、少なくとも最新情報を得るといった面で、Readingスキルは間違いなく必要性が増すだろうという見立てがあります。世界、そして国内の競合他社に遅れを取らないよう、必要なスキルや対象の見極め、そして英語力の育成方法をじっくりと考えてみてください。