Benesse 「よく生きる」

EPISODE 学びを支えるストーリー 将来必要な力が
身につく

「どう生きたいか」を考える場へ
キャリア教育の挑戦
中学生キャリア教育進研ゼミ
右:
進研ゼミ中学講座
ミライ科 チームリーダー

王身代 りょう
オンラインライブ授業の企画・開発に加え、「ミライ科」を本年度から担当。チームリーダーとして「ミライ科」を率いている。
左:
進研ゼミ中学講座
ミライ科 担当者

野木 伶那
中学講座で届けている中学生向け情報誌の編集などを経て、昨年度から「ミライ科」を担当。立ち上げ初期から携わる初期メンバー。
進研ゼミ中学講座では、キャリア教育コンテンツ「ミライナビ」(Webサービス)を、2021年4月号から「ミライ科」へリニューアル。中学生がミライに向けたライフキャリアを考える場として、職業検索、様々な職業のかたのインタビュー、中学生同士で将来についてコメントできる掲示板などのコンテンツを提供している。
こだわりポイント
  • これから重要になる「様々なものを見て、自分がどうしたいかを考えて試行錯誤する力」を育てる新しい“科目”として「ミライ科」が誕生
  • 職業を知って終わりではなく、“自分がどう生きたいか”までを考える他にはないサービスへの挑戦
  • 様々な職業の大人の生き様を徹底して伝えていく
「ミライ科」のコンセプトは、『まだ知らない自分に出会う場所』。
一般的な職業検索サイト・情報提供サイトにとどまらずに、中学生自身の「考える」を引き出せるサービスの実現に向けて、大切にしていることとは?

自分がどう生きたいか“を考える場にしたい

「ミライナビ」から「ミライ科」へリニューアルした理由を教えてください。
王身代
世の中の変化が激しくなり、「こうやっていればなんとなく正しそう」「困ることはなさそう」というのが成り立たなくなりつつあることを、コロナ禍でまさに実感するようになったと思います。思わぬ変化があった時に、観察をして、自分なりの答えを出す力がこれから大事になります。そのため、読み物コンテンツの1つではなく、“新しい科目”として位置付けて、重要性を伝えていこうと考えました。
また、「ミライナビ」の「ナビ(ナビゲ―ション)」は、ルートを指し示すというイメージがあると思います。ですが、これからは、様々なものを見て、自分がどうしたいかを考えて試行錯誤する力が必要です。他の教科と同じぐらい「ミライ科」の力は大切だというメッセージを「ミライ科」という名前に込めています。
「ミライ科」を通じて、中学生にどうなってもらいたいと考えていますか。
王身代
今見ている世界がすべてではないことを知ってもらいたいです。私が中学生のころを思い出しても、家と学校、自転車で行けるところが世界のすべてでした。でも、他にもいろいろな場所があり、生き方があります。それを知らない限り、選択肢は広がりません。たとえ今いる世界に居場所がないと感じていても、そこから飛び出すことができることに気付いてもらえれば、それだけでも意義があると考えています。その上で、どんなことを目指したいかを考えていくサポートができたらいいなと思います。
野木
自分がどう生きたいかを考えられるようになってほしいです。中学生にとって、今はまだピンとこないこともあるかもしれません。ですが、10年後に職業選択を迫られた時に、他者の意見に左右されることなく、理屈でもなく、自分の責任で生きて、道を選んでいけるようになってほしいと考えています。

教えるのではなく「気づく」学び

大事にしていることについて教えてください。
王身代
中学生の興味・関心がある入口や切り口から世界をつなげていく伝え方へのこだわりです。紹介する職業の幅を広げ、中学生が日々の生活から興味を持ってもらえる職業や人気のある職業を取り上げていますし、日常生活や学校行事と関連付けて、「こんなことに興味がある人は、こんな職業の記事を見てみよう」とつなげていくような記事の作り方をしています。
そして、「ミライ科」が伝えたいことは、職業についてではなく、その人の生き方について。なぜそれをやってみようと思ったのかを伝えることを大事にしています。
野木
大人は成功体験から子どもに教えたくなってしまうことがありますが、「ミライ科」ではあえて教えないことを大事にしています。「ミライ科」が目指すのは、教えるのではなく、「気づく」学びです。キャリア教育で身につく力は5教科と異なり点数化されるものではありません。自分がいかに納得した選択をしたかです。気付きのフックになるようなことを大事にしていて、自分のことに置き換えて、選択し続けることにつなげてもらえるようにしています。そのため、中学講座の情報誌などでは、記事の最後は、こういうことを得てほしいとまとめて終わることが多いのですが、「ミライ科」ではあえて「こう考えてみよう」という表現でまとめています。

それぞれの「生き様」を中学生に届ける

「ミライ科」こその挑戦はどんなところにありますか。
野木
職業内容を知ることができるサービスは世の中にたくさんありますが、職業について知り、その先に自分らしくどう生きるかを考えられる他にはないサービスを届ける。それが一番の挑戦です。仕事の傍らで趣味を極めている人、高校中退の決断をして飛び込んだ美容師の世界でNYのヘアサロンで活躍している人・・・。そこには、一人ひとりそれぞれの選択があり、それぞれのやりがいが存在します。そういうかたの今に至る経緯を伝えることにフォーカスし、伝え続けていきたいと考えています。
<起業家、お化け屋敷プロデューサーなど、様々な職業の生き様を紹介>
王身代
中学生のコミュニケーションの場を届けてきた中学講座の「ミライ科」ならではのところとして、他の中学生がどんなことを思っているのか、それを見て自分はどう思ったのかを感じられるアウトプットの場(掲示板)があります。その“ならでは”なところを続けていくことを大事にしています。「ミライ科」が目指すのは、生き様を伝えることです。ただ、中学生にはいきなりは伝わらないかもしれません。そこに、中学講座として脈々と届けてきた中で得られた子どもたちに伝わる・届けるノウハウを活かして、子どもたちの知らぬ間に、すっと伝えていきたい。それが挑戦です。

中学生の気持ちが変わる瞬間がやりがい

中学生からはどんな反応をいただいていますか?
王身代
4月に実施したオンラインイベント「春フェス2021(*)」で、ゲストの皆さんの「夢はたくさんあってもいい」「やりたいことはどんどん変わっていっていい」「やりたいことは何個あってもいい」という言葉が、心に響いたと思ってくれた中学生がたくさんいたんです。参加してくれた中学生の気持ちが変わる瞬間を感じ、「ミライ科」を立ち上げて、続けていく意味を実感しました。
野木
同じイベントで、「今まで興味がなかった職業を知りたいと思った」「自分の夢に直結しなくても、挑戦してみることの大切さを感じた」という感想も寄せられていて、普段、普通に生きていたらその子が知りえなかったことを少しでも広げてあげられたと感じ、やっていてよかった!と思った瞬間でした。
*「春フェス2021」・・・部活と将来をテーマにしたオンラインイベントを開催。夢をかなえた先輩や著名人・スポーツ選手が登場し、夢の実現に向けて悩んだこと、乗り超え方、チャンスの掴み方をトークセッション形式で紹介。
最後に、これからの「ミライ科」で実現していきたいことを教えてください。
野木
キャリア教育は必然性が薄く、勉強・友達・部活・恋愛などいろいろなことがあると、優先度が下がってしまうのが現実です。でも、日常的に自分の人生を考えることは、大事なことだと思います。「ミライ科」がインフラとなり、就職活動で慌てて考えるのではなく、将来について考えることが当たり前になる。そこに挑戦したいです。自分にじっくり向き合う時間や、普段会えない大人の話を聞くこと、社会全体で育てるといったことができる「ミライ科」だからこそ、知らない世界のすそ野を広げていってあげたいと思っています。
王身代
中学生にとって、「ミライ科」が家でも学校でもない第三の場所のような存在になりたいです。つらいこと、生きづらいことがあっても、「ミライ科」に来ると他の世界とつがっている扉があり、居場所があると感じてもらえたらいいなと思っています。
大人ほど経験がない中学生の時は、他の人の話を腑に落ちるまで理解することは難しいかもしれません。今この瞬間は伝わらなくても、何となく話の内容やエピソードがキーワードとして残り、その後人生で急に何かとつながって理解できたり、何かを決断するときに「あの時のあれだ、そうだ!」とつながるような、5年後、10年後につながる種がたくさんまけるサービスを目指していきます。

撮影:デザインオフィス・キャン

(2021年6月取材)

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