ウェルビーイングってなんだろう

最近よく聞く「ウェルビーイング」。 人生100年時代を生きる私たちや、 これからの社会にとって重要な キーワードとされていますが、 具体的にどういう状態を 意味するのでしょうか? そして、どうすれば 実現できるのでしょうか? このページではそんな 「ウェルビーイング」について、 みなさんと一緒に 考えていきたいと思います。

1「ウェルビーイング」 とは

ウェルビーイングとは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか?

ウェルビーイング(Well-being)は、well(よい)とbeing(状態)からなる言葉。
世界保健機関(WHO)では、ウェルビーイングのことを個人や社会のよい状態。健康と同じように日常生活の一要素であり、社会的、経済的、環境的な状況によって決定される(翻訳)と紹介しています。1)

「よい状態」とは、なんともあいまいな定義。「よい状態って、一人ひとり違うんじゃない?」と思われるかもしれません。実はそのとおりなのです。ウェルビーイングとはどういうことなのか、自分にとってのウェルビーイングとは何なのか、それぞれの考え方がある自由な言葉なのです。

図1:ウェルビーイングとは
参照元:WHOの資料「Health Promotion Glossary of Terms 2021」を基に、ベネッセホールディングス作図

主観的ウェルビーイングと
客観的ウェルビーイング

ウェルビーイングには「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」の2種類があります。

「主観的ウェルビーイング」とは、一人ひとりが自分自身で感じる認識や感覚によって見えてくるもの。
それを測る指標として、「人生への幸福感や満足感」「生活への自己評価」「うれしい、楽しいなどの感情」などが挙げられるでしょう。例えば、「自分にとってよい人生とは?」「自分は今どんなきもちだろうか?」と自分自身に問いかけることも、主観的ウェルビーイングを把握するために有効です。「よい状態かどうか」の感じ方は一人ひとり異なります。

一方で、「客観的ウェルビーイング」とは、客観的な数値基準で把握できます。
例えば、平均寿命や生涯賃金、失業率、GDP(国内総生産)、大学進学率、収入に占める家賃の割合、労働時間や有休取得率、人と関わる時間、保育所待機児童数、育児休業取得者数、介護時間など、統計データで測れるものです。これらの統計データは、国別や県別などウェルビーイングの充実度を比較するときに利用されることがあります。

図2:ウェルビーイングの種類
参考:ベネッセホールディングス作図

このように、ウェルビーイングは一人ひとり異なり、いろいろな要素から形づくられているのです。

なるほど。
ウェルビーイングって一人ひとり異なり、今日と明日では違うのものなのかも。
だからこそ、今の自分にとってのウェルビーイングはどういうものかを考えていくことが大切なのですね。
1)
引用:World Health Organization. “Well-being”. Health Promotion Glossary of Terms 2021, 2021, 10p.

「ウェルビーイング」 は
100年かけて議論が進む
重要な概念

ウェルビーイングの語源

オックスフォード英語辞典によると、ウェルビーイングの語源は、イタリア語で幸せや福祉を表す「benessere(ベネッセレ)」で、16世紀ごろから言葉が使い始められたとされています。(Benesseは、ラテン語の「bene=よく」+「esse=生きる」を組み合わせたもの。「Benesse(よく生きる)」が実現できているときは、ウェルビーイングな状態と言えるでしょう。)

ウェルビーイングの歴史

「1925年にカナダの団体が、『健康状態』であることを『たんなる病からの自由だけではない、ウェルビーイングな状態』と定義した」 ことが報告されており2)、この時代にはウェルビーイングが議論され始めていることがわかります。
この報告が起源となり、考え方をWHO(世界保健機関)が継承。3) 1946年には、WHO憲章の中で健康の定義として次のようにウェルビーイングを用い、言葉としてのウェルビーイングが世界に広まることとなりました。

健康とは、病気ではないとか、
弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてがよい状態にあることをいいます。
(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)4)

さらに、2015年の国連総会で採択されたSDGs の宣言文には、どんな社会にしたいかを述べる段落の中で身体的・精神的・社会的にウェルビーイングな社会5)と目指す方向性が盛り込まれたことで、世の中により浸透していきました。

また、WHOは2021 年、ウェルビーイングを紹介する文章の中で健康と同じように日常生活の一要素(翻訳)6)としており、非常に重要な概念としてウェルビーイングを捉えていることが分かります。

Well-being is a positive state experienced by individuals and societies.
Similar to health, it is a resource for daily life and is determined
by social, economic and environmental conditions.
6)
ウェルビーイングは、100年かけて議論が進むような、世界にとって重要な概念なんですね。
今後はどうなるのでしょうか?

ウェルビーイングの重要性が広がる中で、新たな動きも出てきています。

SDGsとの関連、次の国際共通の目標をウェルビーイングにする動きも

現在、国際社会はSDGs(Sustainable Development Goals)を共通目標とし、誰一人取り残さない社会のための17の目標を掲げています。しかしSDGsが掲げる未来は2030年まで。次なる目標として、人々の主観的なウェルビーイングを重視した新たな国際目標をつくっていこうとする動きが日本でも始まっています。
それが、さまざまな国際機関や企業で提唱され始めている「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」であり、「みんなで持続可能なウェルビーイングの状態を目指す」という目標です。

図3:今後の国際社会の共通目標
参考:石川善樹氏の発表資料「(広義・狭義)ウェルビーイング産業」と石川善樹氏への取材により、ベネッセホールディングス作図
2)
引用:田瀬和夫,SDGパートナーズ.SDGs思考 社会共創編 価値転換のその先へ プラスサム資本主義を目指す世界,インプレス, 初版, 2022, kindle版52p.
3)
引用:同上, 52p.
4)
引用:公益社団法人日本WHO協会. “世界保健機関(WHO)憲章とは”. 公益社団法人日本WHO協会.(参照 2023-03-07)
5)
引用:United Nations. “Our vision”. Resolution adopted by the General Assembly on 25 September 2015, 2015, 3p.
6)
引用:World Health Organization. “Well-being”. Health Promotion Glossary of Terms 2021, 2021, 10p.
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2どうしてウェルビーイングが
注目されているの?

どうしてウェルビーイングという言葉が注目されるようになったのでしょうか?
そこには、いくつか理由があります。

  • 1990年頃

    経済的な豊かさが幸せとは限らない社会で、生活の実態が大切にされる

    かつて、経済的な豊かさが国民の幸せと捉えられており、経済の豊かさを表すGNP(国民総生産)が、社会の豊かさの物差しとして使われてきました。しかし、国の経済力が増加しても、生活者の生活が豊かでなければ、社会が豊かとは言い切れません。そのような中、真の豊かさの実現を目指して、「健康で長生きすること」「知的欲求が満たされること」「一定水準の生活に必要な経済手段が確保できること」など、生活の実態を大切にすることが必要という考え方が出てきました。そこで、平均寿命、教育水準、一人当たりの国民所得の3分野において、各国の達成度を測る物差し「HDI(人間開発指数)」が、1990年に登場しました。7) このHDIは、生活者のウェルビーイングを客観的に測る物差しです。HDIが国際的に広まると同時に、客観的なウェルビーイングが注目されるようになりました。

  • 現 在

    成熟社会では、「実感できる豊かさ」 が求められる

    経済が発展・成熟したいま、モノやサービスがどれだけ売れたかという経済の豊かさが幸せであるとは限らず、心の豊かさや幸福を重視する社会が望ましいとの価値観が、世界で広がっています。そのため、「物質的な豊かさ」ではなく、一人ひとりが「実感できる豊かさ」、いわゆる主観的なウェルビーイングを重要視しようという動きがあり、ウェルビーイングに注目が集まっています。現在、経済の豊かさであるGDP(国内総生産)が、国の豊かさを測る物差しとして活用されていますが、GDPを補う指標として、国民の実感できる豊かさ(ウェルビーイング)を測定するGDW(国内総充実:Gross Domestic Well-being)の活用が検討されています。8) GDPが「物質的な豊かさ」を客観的に測る物差しであるのに対し、GDWは「実感できる豊かさ」として主観的に測ることが大きな違いです。

    図4:GDPとGDW
    参照元:Well-being Initiativeのホームページを参照し、ベネッセホールディングス作成

SDGs 17の目標の先にある 「地球全体のウェルビーイング」 へ

2030年をターゲットに17の目標達成を目指そうとしているSDGs(Sustainable Development Goals)。ウェルビーイングはそのSDGsの次なるグローバルゴールとして「ポストSDGs」とも呼ばれ、今や急速に注目を集めるようになりました。
そもそもSDGsの3番目の目標である「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」には、言葉としてウェルビーイングが含まれています。
SDGsは「地球上の誰一人取り残さない」を掲げながら、個人や社会、ひいては地球全体が持続可能な状態を目指すグローバルゴールであり、17の目標を達成したその先には地球全体のウェルビーイングな状態があるはずと考えられているのです。

地球全体のWell-beingへ

教育現場でもウェルビーイングが重要とされ、注目が高まる

教育に関してもウェルビーイングを重視する動きが広がっています。OECD(経済協力開発機構)は、各国の教育改革に取り組み、2030年を生きる子どもたちの学習の枠組み「ラーニング・コンパス2030」を提唱。将来予測が困難な「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、あいまい性)」の時代に、「教育の目的は、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの2つを実現することである」と提示しています。2018年には世界各国の教育者向けにビジョンを共有し、ウェルビーイングを重視した教育を加盟各国に求めました。9)

7)
参考:UNDP 東京事務所. “人間開発指数(HDI)とは”. 人間開発ってなに?, 国連開発計画(UNDP). 2007.
8)
参考:GDW. “GDWについて”. GDW(参照 2023-03-07)
9)
参考:OECD. “ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030”. OECD. 2020 (参照 2023-3-22)
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3みんなどんな取り組みを
しているの?

みんながウェルビーイングを感じられるために、
世界の国々や日本政府、自治体や企業、教育機関はどのような取り組みをしているのでしょうか?

世 界

国を挙げてウェルビーイングに取り組む

フィンランドは、誰もが尊重され自分らしく生きられる社会を目指してウェルビーイングや平等、人権を国の基本原則に据え、公共政策として早くから推進。教育費は小学校から大学まで無償、社会における男女平等の浸透など、多様な施策を推し進めています。
また、ニュージーランドでは、2019年にウェルビーイングをコンセプトにした予算「ウェルビーイング・バジェット(幸福予算)」を発表。国や国民の幸せを体系的に考え、予算に落とし込んでいます。

日本政府

国民の生活の満足度 (ウェルビーイング) を計測

日本政府は、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)で、政府の各種の基本計画にウェルビーイングに関するKPI(成果指標)を設定することにしました。各省庁が各分野で国民のウェルビーイングを定期的に測定し、目標と照らし合わせて取り組みを推進していきます。
また、内閣府は2019年度から「家計と資産」「仕事と生活」「健康状態」「あなた自身の教育水準・教育環境」「社会とのつながり」「子育てのしやすさ」「介護のしやすさ・されやすさ」など13分野で国民の生活の満足度(ウェルビーイング)を調べる、「満足度・生活の質に関する調査」を行っています。国民の生活の満足度を把握することで、政策運営に生かすことが目的です。調査結果はグラフで可視化され、WEBサイト上で公開されています。

企 業

従業員のほか、お客さまや地域住民などのウェルビーイングに取り組み始める

企業でもウェルビーイングに対する動きが活発になっています。

企業の経営方針や人材戦略の中心にウェルビーイングを取り入れる企業が増えています。例えば、従業員のウェルビーイングを目指し、テレワークを推し進める企業やオフィスの環境を整える企業、賃上げする企業があります。従業員の働きやすさを向上させるほか、多様な人材が能力を発揮できる環境を整備することで企業価値を高めることにつなげています。

さらに、従業員のウェルビーイングのみならず、企業に関わる「ステークホルダー(お客さま、地域住民、株主、行政機関、取引先)のウェルビーイング」を実現することが、経営の役目であると多くの企業が考えるようになりました。この背景には、いわゆる株主資本主義からステークホルダー資本主義へと、考え方がシフトしていることが考えられます。

自治体

独自にウェルビーイングの指標や制度を開発する

地域住民のウェルビーイングに向けて、自治体も独自の取り組みを進めています。

富山県では、ウェルビーイングを県の成長戦略の中心に位置付けており、ウェルビーイングの実感を把握するため独自の指標を設けました。指標は、理想の生活をイメージしたとき、どれだけ満たされているか、生活の調和とバランスがとれているかを問う「総合指標」、心身の健康や経済的なゆとり、自分らしさ、自分時間の充実などを問う「分野別指標」、家族や友人、学校、地域、職場などとのつながりを問う「つながり指標」の3区分です。県民のウェルビーイングの実感を可視化するほか、政策の立案に活用する見込みです。

また、福岡市では、働く人のウェルビーイングに取り組む事業者を登録する「福岡市Well-being&SDGs登録制度」を実施しています。登録されると、市ホームページなどで事業者名や取り組み事例が紹介されるほか、市の融資制度で金利が有利なメニューを利用できます。

大 学

ウェルビーイングの研究や学びが活発に

大学でもウェルビーイングの研究や学びが活発になってきました。神戸大学ではウェルビーイングへの取り組みを進めるため、学内に「ウェルビーイング推進本部」を設置するほか、ウェルビーイングに関する先端研究の中心拠点として「ウェルビーイング先端研究センター」を設立しています。また、武蔵野大学は2024年度にウェルビーイング学部を開設予定で、社会課題をウェルビーイングの視点で横断的・統合的に学べるカリキュラムがそろう見込みです。そのほかにも、岡山大学はベネッセホールディングスとともに、3年間にわたり、瀬戸内国際芸術祭会場の島々に暮らす島民の幸福度(ウェルビーイング)を探る研究を行ってきました。

国・自治体・企業・教育機関と、みんながウェルビーイングを考える優しい世界ですね。
これから、ウェルビーイングが私たちにとってもっと身近なものになりそうです。
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4ウェルビーイングであるか、
どうやってわかるの?

一人ひとり異なるウェルビーイングですが、
自分がウェルビーイングであるかは、どのように測定すればよいのでしょうか?

例えば、アメリカで世論調査などを手掛けるギャラップ社は、次の5つの領域で、「主観的ウェルビーイング」を各国で計測しています。10)

キャリア ウェルビーイング
仕事に納得感を持っていて、日々の仕事を楽しんでいるか
ソーシャル ウェルビーイング
生活の中で、他者と深い関わりや愛情を持つことができているか
ファイナンシャル ウェルビーイング
支出や収入をうまく管理することにより、経済的に満足ができているか
フィジカル ウェルビーイング
心と体が健康で、自分がしたいと思ったことをする十分なエネルギーがあるか
コミュニティ ウェルビーイング
地域とつながっていると感じられている
図5:ギャラップ社による「個人のウェルビーイング」を測定する指標
参考:ギャラップ社サイト内の「The Five Essential Elements of Well-Being」と前野隆司氏・前野マドカ氏の書籍「ウェルビーイング」を基にベネッセホールディングス作図
ウェルビーイングの測り方は、今まさに研究が進んでいるそうです。
測り方が変われば、また違う見方ができるかもしれないですね。

ほかにも、ウェルビーイングを測るための理論や方法にはいろいろあります。
代表的なものを3つ紹介したいと思います。

  • 人生をハシゴに見立てて測る「キャントリルの梯子(ハシゴ)」 法

    人生をハシゴと見立て、自分にとって理想の人生から最悪の人生の間を10段階に分けたとき、「いま自分はどこに立っていると感じるか」について答えることで、自分の幸福度を測定することができます。11) アメリカのハドレー・キャントリル博士が開発した測定手法です。

  • 5つの質問に答えると幸福度が測れる「人生満足度尺度」

    「人生満足度尺度」は、自分の人生にどの程度満足しているかを数値化する方法。イリノイ大学名誉教授エド・ディーナー博士が開発した方法です。「ほとんどの面で私の人生は理想に近い」「私の人生はとても素晴らしい状態だ」など5つの質問に「非常によく当てはまる」「だいたい当てはまる」「どちらともいえない」「あまり当てはまらない」など7つの尺度で答え、その合計点数で幸福度を測ります。12)

  • オンラインで幸せが測れる「幸福度診断(Well-Being-Circle)」

    幸福度診断」は、幸福学を研究する慶應義塾大学の前野隆司教授と株式会社はぴテックが共同開発した、幸せの見える化サービスです。インターネット上で72問のアンケートに答えると、「やってみよう力」「ありがとう力」「職場の幸せ力」「ストレスの低さ」などの分野から、34項目にわたって多面的にあなたのウェルビーイングを調べることができます。13)
    https://www.well-being-design.jp/measurement/measurement1/

こうして測ってみると、自分は今ウェルビーイングな状態なのか、どうすればそうなれるのか、
考えるよいきっかけになりそうですね。

「世界幸福度ランキング」 と 日本の順位(2023年)

ウェルビーイングとも関連した世界調査として、国連の持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)が毎年発表している世界各国の幸福度を調査した「世界幸福度ランキング」があります。ギャラップ社の世論調査をベースに、各国約1000人に「最近の自分の生活にどのぐらい満足しているか」を0(完全に不満)から10(完全に満足)までの11段階で選択してもらう方式で幸福度を測定。過去3年間の平均(一部の国は2年間)をもとにランク付けがされています。

2023年の世界幸福度ランキングでは1位はフィンランド。上位には欧州、特に北欧の国が目立って入る結果となっています。その中で日本の順位は47位(全137国中)、前年の54位から上昇する一方で主要7か国(G7)の中では最下位となりました。上位の国々と比べると、「健康寿命」ではスコアが高いものの、「人生の自由度」「他者への寛容さ」などの項目で下回る結果となりました。

世界幸福度ランキング2023の主な順位 ※「World Happiness Report 2023」より一部の国の順位・スコアを抜粋。 シンガポールと中国は2022年のデータがないため、2020年と2021年の調査データをもとにスコアを算出。
10)
参考:TOM RATH AND JIM HARTER. “The Five Essential Elements of Well-Being”. GALLUP(参照 2023-03-07)
前野隆司, 前野マドカ. “社会とウェルビーイング”. ウェルビーイング. 日経文庫, 2022, kindle版, 36-37p.
11)
参考:GALLUP. “Understanding How Gallup Uses the Cantril Scale”. GALLUP(参照 2023-03-07)
12)
参考:Diener, E., Emmons, R. A., Larsen, R. J., and Griffin, S. The Satisfaction With Life Scale. Journal of Personality Assessment, 1985, 49, p.72.
13)
参考:株式会社はぴテック, 前野隆司. “幸福度診断Well-Being Circle”. 一般社団法人ウェルビーイングデザイン(参照 2023-3-22)
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5ウェルビーイングで
いられるためには?

どうすればウェルビーイングでいられるのでしょうか?
ウェルビーイングでいられる方法は、国内外でさまざまな研究が行われています。
その中から、2つを紹介します。

  • セリグマン博士の「PERMA(パーマ)」モデル

    アメリカの心理学者マーティン・セリグマン博士らは、ウェルビーイングでいられるためのモデル「PERMA(パーマ)」を提唱しています。PERMAとは、Positive Emotion(ポジティブな感情)、Engagement(何かへの没頭)、Relationships(他者との関係性)、Meaning(生きる意味)、Accomplishment(達成)の5つを満たしている人が幸せというものです。14)

    具体的には、以下のように解説されます。

    • ポジティブな感情(Positive Emotion)
      うれしい、おもしろい、楽しい、感動、感謝などのポジティブな感情を持つ。
    • 何かへの没頭(Engagement)
      時間を忘れて何かに没頭する。
    • 他者との関係性(Relationship)
      人とのつながりを持つ。
    • 生きる意味(Meaning)
      生きる意味を自覚する。社会に対して自分のできることは何かを考える。
    • 達成(Accomplishment)
      何かを達成したり、成し遂げたりするために頑張る。
    図6:「PERMA(パーマ)」モデル
    参照:前野隆司氏・前野マドカ氏の書籍「ウェルビーイング」を基にベネッセホールディングス作図
  • 前野隆司先生の「幸せの4つの因子」

    幸福学研究の第一人者、慶應義塾大学前野隆司教授によると、幸せには4つの因子 「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」があり、この4つの因子を少しでも高めていくことが幸せにつながるといいます。15)

    以下が、それぞれの因子の概要です。

    • やってみよう 因子――自己実現と成長
      やりがいや強み、目標を持ち、主体性が高い人は幸せ。
    • ありがとう因子――つながりと感謝
      つながりや感謝、利他性や思いやりを持つことが幸せ。
    • なんとかなる因子――前向きと楽観
      前向きかつ楽観的で、なんとかなるというポジティブな人は幸せ。チャレンジ精神が大事。
    • ありのままに因子――独立と自分らしさ
      自分と他者を比べ過ぎず、しっかりとした自分らしさを持っている人は幸せ。
    図7:幸せの4つの因子
    参照:前野隆司氏・前野マドカ氏の書籍「ウェルビーイング」より、ベネッセホールディングス作図
1つの要素だけが強くても、ウェルビーイングを高めることにはならないのかも。
でも、ウェルビーイングは自分で意識することで、高めることもできるんですね。

自分らしく、
ウェルビーイングでいられる
方法を探してみよう

上記で紹介した法則や方法論は、とても概念的なもの。具体的にどんなことに取り組むとよいのでしょうか?
最近は、毎日を生き生きと過ごせるように、ウェルビーイングを意識して暮らす人が増えてきています。

例えば・・・

  • ・栄養バランスのよいおいしい食事で体の内側から健康を心掛ける
  • ・ヨガやランニングなどの運動を通して、心身を鍛える
  • ・友人や家族とのコミュニケーションを図り、他者とのつながりを感じる
  • ・お気に入りのアロマや快適な寝具、ワークスペースなど自分が心地よく過ごせる環境を整える
  • ・マインドフルネス(瞑想)を取り入れて、精神状態をポジティブに保つ
  • ・人生100年時代を自分らしく生きるために、スキルの再習得(リスキリング)に挑戦する
  • ・スマホの電源を切って、趣味や勉強・仕事を含めたやりたいことに集中し、没頭する時間をつくる

これらは、ウェルビーイングに暮らすための一つの手法に過ぎません。ウェルビーイングな状態は一人ひとり異なりますし、誰もがずっとウェルビーイングであり続けられるわけではないかもしれません。
だからこそ、自分なりに工夫して、自分に合う方法を探していくことが大切です。

ウェルビーイングは、知ったり、話したり、考えたりすることが大切なようですね。
ウェルビーイングでいられる自分らしい方法を探したり、多様な人たちと考えをシェアしたり、ちょっとしたことから始めてみたいと思います。
14)
参考:前野隆司, 前野マドカ. “ウェルビーイングの研究”. ウェルビーイング. 日経文庫, 2022, kindle版, 51-53p.
15)
参考:前野隆司, 前野マドカ. “ウェルビーイングの研究”. ウェルビーイング. 日経文庫, 2022, kindle版, 56-59p.

ウェルビーイングを知る、学べる本

ウェルビーイングについて知りたい、知識を深めたいという方に初めに読む1冊としておすすめの書籍をご紹介します。

  • ウェルビーイング
    前野 隆司・前野 マドカ著
    日本経済出版社

    ウェルビーイングってなんだろう?と思う方に。幸福学研究の第1人者である前野隆司氏と前野マドカ氏の共著で、ウェルビーイングについての基本的知識を得ることができるほか、各国や自治体・企業の取組み事例を知ることができます。

    Amazon
  • むかしむかし あるところに
    ウェルビーイングがありました

    石川 善樹・吉田 尚記著
    KADOKAWA出版社

    人気のポッドキャスト番組を再編纂し読みやすくまとめられています。欧米的なウェルビーイングではなく日本の文化を読み解きながら、幸せやウェルビーイングへのたくさんの気づきや示唆を得られる一冊です。

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ウェルビーイングに関する研究は日々進んでおり、同時に一人ひとりが自分のウェルビーイングについて考えることが大切な時代となりました。

「Benesse(よく生きる)」をフィロソフィに掲げるベネッセでは、「ベネッセ ウェルビーイングLab」を立ち上げ、情報発信と対話の機会を提供していきたいと考えています。専門家の知見も頂きながら、ウェルビーイングに関する活動を推進していきます。

「ベネッセ ウェルビーイングLab」フェローからのコメント

  • すべての人は、幸せで健やかに生きる権利を持っていると考えるべきだと思います。つまり、ウェルビーイングを目指す権利です。ウェルビーイングの研究者として、そのための活動をさらに深めていきたいと考えており、ベネッセさんの活動に賛同し、応援しています。

    慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司教授

    ウェルビーイングな働き方のデザイン、地域づくり、コミュニティーづくり、教育など、さまざまなウェルビーイングを研究。

  • 時代が動くとき、同じような考えを持った人が同時に声を上げ動き始めるという特徴があります。まさにいま、日本のみならず世界において、産官政学民が力を合わせて「ウェルビーイング」というあいまいな概念を具体化しようとしています。ぜひこの大きな流れがどのように進化していくのか、ご一緒できるとうれしいです。

    公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川善樹氏

    専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念進化論など。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして研究。

ラボに関する取材依頼やお問合せは以下までお願いします。
benesse-brand-cp@mail.benesse.co.jp

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