「ウェルビーイング」 は
100年かけて議論が進む
重要な概念
ウェルビーイングの語源
オックスフォード英語辞典によると、ウェルビーイングの語源は、イタリア語で幸せや福祉を表す「benessere(ベネッセレ)」で、16世紀ごろから言葉が使い始められたとされています。(Benesseは、ラテン語の「bene=よく」+「esse=生きる」を組み合わせたもの。「Benesse(よく生きる)」が実現できているときは、ウェルビーイングな状態と言えるでしょう。)
ウェルビーイングの歴史
「1925年にカナダの団体が、『健康状態』であることを『たんなる病からの自由だけではない、ウェルビーイングな状態』と定義した」 ことが報告されており2)、この時代にはウェルビーイングが議論され始めていることがわかります。
この報告が起源となり、考え方をWHO(世界保健機関)が継承。3) 1946年には、WHO憲章の中で健康の定義として次のようにウェルビーイングを用い、言葉としてのウェルビーイングが世界に広まることとなりました。
健康とは、病気ではないとか、
弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてがよい状態にあることをいいます。
(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)4)
さらに、2015年の国連総会で採択されたSDGs の宣言文には、どんな社会にしたいかを述べる段落の中で身体的・精神的・社会的にウェルビーイングな社会
5)と目指す方向性が盛り込まれたことで、世の中により浸透していきました。
また、WHOは2021 年、ウェルビーイングを紹介する文章の中で健康と同じように日常生活の一要素(翻訳)
6)としており、非常に重要な概念としてウェルビーイングを捉えていることが分かります。
Well-being is a positive state experienced by individuals and societies.
Similar to health, it is a resource for daily life and is determined
by social, economic and environmental conditions.6)
今後はどうなるのでしょうか?
ウェルビーイングの重要性が広がる中で、新たな動きも出てきています。
SDGsとの関連、次の国際共通の目標をウェルビーイングにする動きも
現在、国際社会はSDGs(Sustainable Development Goals)を共通目標とし、誰一人取り残さない社会のための17の目標を掲げています。しかしSDGsが掲げる未来は2030年まで。次なる目標として、人々の主観的なウェルビーイングを重視した新たな国際目標をつくっていこうとする動きが日本でも始まっています。
それが、さまざまな国際機関や企業で提唱され始めている「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」であり、「みんなで持続可能なウェルビーイングの状態を目指す」という目標です。
- 2)
- 引用:田瀬和夫,SDGパートナーズ.SDGs思考 社会共創編 価値転換のその先へ プラスサム資本主義を目指す世界,インプレス, 初版, 2022, kindle版52p.
- 3)
- 引用:同上, 52p.
- 4)
- 引用:公益社団法人日本WHO協会. “世界保健機関(WHO)憲章とは”. 公益社団法人日本WHO協会.(参照 2023-03-07)
- 5)
- 引用:United Nations. “Our vision”. Resolution adopted by the General Assembly on 25 September 2015, 2015, 3p.
- 6)
- 引用:World Health Organization. “Well-being”. Health Promotion Glossary of Terms 2021, 2021, 10p.
ウェルビーイングって一人ひとり異なり、今日と明日では違うのものなのかも。
だからこそ、今の自分にとってのウェルビーイングはどういうものかを考えていくことが大切なのですね。