STRATEGY

「人が主役」のDX

ベネッセは、デジタルテクノロジーを活用した提供価値の向上に長年努め、デジタル技術を前提としたビジネスモデルの変革にチャレンジし続けてきた。そして今さらなるDX推進を加速させるための新たな取り組みが行われている。組織体制の強化とD Xの加速化を推し進めるベネッセグループDX推進の最高責任者CDXO橋本英知が、ベネッセのD X戦略のビジョンと目指すゴールについて語る。

橋本 英知

専務執行役員 CDXO(Chief DX Officer)兼
Digital Innovation Partners 本部長

1998年ベネッセコーポレーションに入社。セールスプロモーションの企画・制作から、新商品開発、新規事業開発、経営企画などを経験後、マーケティング戦略・組織人事・業績管理・コンプライアンス・ITなどに広く携わる。
こどもちゃれんじ事業、英語教育事業、進研ゼミ事業の責任者を務めたのち、20年からベネッセグループ全体のDX推進責任者を経て、22年より現職。
社外では、DX、マーケティング、人材・組織開発、テクノロジー、ベンチャーファンド領域での活動を中心に、講演・寄稿など多数。

横断組織「DIP」を軸にベネッセグループ全体のDXを推進

ベネッセグループのDX戦略と実行を担うため2021年にバーチャル組織として発足した「Digital Innovation Partners (デジタルイノベーションパートナーズ、以下「DIP(ディーアイピー)」)は、翌年にグループ横断型の実体組織となり、デジタル部門、IT部門、人事部門、DX推進のためのコンサル部門を統合したグループ横断型の組織として、戦略の立案から資源・投資配分、具体的施策の推進まで事業部門・会社の垣根を越えてDX推進を牽引してきました。
2023年7月にはシステム開発や保守・運用、セキュリティ対策を行ってきたIT機能会社のベネッセインフォシェルを合併し、サプライチェーンマネジメント機能も、DIPに統合させたことで800名を超える組織となりました。
各カンパニーの事業計画に基づき、事業部門のメンバーとDIPのメンバーがプロジェクトチームとして連携することで、ベネッセの商品・サービスのDX化は着実に進んでいます。今後もDIPを軸に、グループ全体のDX能力のさらなる向上を実現していきます。
また、「既存事業・サービスのDXの推進」と「新規事業の共創」を目指し、2021年11月に設立した「Digital Innovation Fund」(以下、DIF)の投資先は、10社にまで拡大しました。今後は、DX推進のための技術力向上や、新事業の創出を実現するためのシナジー構築に力点を移していきます。力のあるベンチャー企業がもつ技術力や成長性には大きな価値があり、ベネッセも一緒に成長していくことで、社会に対しより大きな価値を生み出せると考えています。今後も当社グループが蓄積してきた知見やノウハウといったアセットも可能な限り提供し、双方の成長を実現していきます。

常にお客様にとって、
最良の商品・サービスを提供できる会社であり続ける

私たちベネッセグループの商品・サービスは、現時点ではお客様から一定の評価をいただいていますが、新たなテクノロジーが登場・進化する中で、それらを活用したディスラプターが次々と誕生しています。こうした状況のなかでは、ベネッセの現在の商品・サービスが今後もお客様にとってベストであるとは限りません。
ベネッセがDXで高めたいのは「こういうサービスがあったらいいな」とお客様が思われた時に、それを実現できる力です。デジタルはあくまでその実現のための手段であり、かつデジタルだけが手段でもありません。これまでの歴史の中でベネッセグループが積み上げてきた、顧客基盤、教育・介護の知見、そしてたくさんの関係者・スタッフに、今の時代のテクノロジーとビジネスモデルを掛け合わせることで、「常にお客様にとって、最良の商品・サービスを提供できる会社であり続ける」ことが、ベネッセが目指すべきDXのゴールであると考えています。

「人が主役」のDXを

何のためにこの事業を進めるのか?と問われたとき「一人ひとりが、よく生きるために」と即答できるのがベネッセです。それは私たちの企業理念である「よく生きる」に込められた、人間一人ひとりが自分らしく生きていくための力になるという想いがあるからです。
その思想は、テクノロジーの活かし方にもつながります。例えば、AIでの自動化による省人化や生産性向上も必要ですが、ベネッセでは、機械が実施した方が品質が高い業務は機械に任せる、そして人間しかできないことを人間が追求していく、「人が主役」のDX推進に取り組んでいます。

例えば、介護事業におけるテクノロジーの活用で言えば、夜間の見守りは、人間だと一晩で4・5回程度になってしまうところが、センサーを使えば24時間365日見守ることが可能です。しかし、それにより入居者さまにどう声をかけるか、どうサポートするかという人の気持ちに寄り添ったクリエイティブな仕事までは機械にはできません。そのため、ベネッセは、テクノロジーをお客様に寄り添う時間や方法を創造するために活用します。その着想の背景には、ベネッセの企業理念「よく生きる」があるのだと思います。テクノロジーは道具です。時代ごとに必要な道具を使いこなして、お客様も私たちも自分らしく「よく生きる」ことを実現するのが、ベネッセらしいDXであり、ベネッセだからできるDXなのだと思います。

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