はたらく人のウェルビーイング、「社会貢献意識」の影響は?
2023年5月、パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・立教大学経営学部 中原淳教授(ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ)は、「就業者の社会貢献意識(ソーシャル・エンゲージメント)に関する調査」の結果を公表しました。この記事では、その結果をもとに、「社会貢献意識」とそれに影響する「経験」、はたらく人のウェルビーイングの関連について掘り下げます。
※「ベネッセ ウェルビーイングLab」の情報です、『ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ』の情報ではありません。
「社会貢献意識」 と、働く人のウェルビーイングを掘り下げる
SDGsの認知は高くなる一方で、社会課題や環境問題などへの意識や行動は国際的に低いとされる日本人。その実態を探るべく、今回の調査では、就業者の社会課題への関心の強さなどを「ソーシャル・エンゲージメント」(社会貢献意識)として測定、また、「はたらくことを通じて、幸せを感じている」など個人の主観的な幸せやジョブ・パフォーマンスなども測った上で、幸せな活躍との相関が分析されました。
その結果、社会貢献への意識が高い、ソーシャル・エンゲージメントが高い層は、低い層に比べて幸せな活躍をしている人の割合が2.9倍。
さらに、目の前の仕事に主体的に取り組み、学びの意欲が高く、業務上の成果や主観的ウェルビーイングの実感も高いことがわかったといいます。
「社会貢献意識」 が高い人の特徴とは
社会への関心をもつことが、個人の働き方や主観的ウェルビーイングなどさまざまな点においてプラスの影響・相関がありそうなことがわかりますが、そもそも社会貢献意識が高い、ソーシャル・エンゲージメントが高い人とはどんな人なのでしょうか。
調査で明らかになったその特徴から、行動やマインドにおいてもさまざまな違いがあることがみてとれます。
<ソーシャル・エンゲージメントが高い人の特徴>
いずれもソーシャル・エンゲージメント高層とソーシャル・エンゲージメント低層との比較により、ソーシャル・エンゲージメント高層の方が高い結果となっているもの
- ・環境や人権に配慮した行動などSDGsに関連した行動を行っている割合が高い。
- ・人間関係やコミュニケーション、健康をより大切にしている。
- ・自己実現、学び、体験や経験全般に対して意欲的である。
- ・「社会」 という言葉から思い浮かべる範囲が大きい(日本全体や地球全体まで含めた空間的な広がりをもって社会をイメージする人が多い)
- ・メディア接触として、「インターネットラジオ」「ライブ配信サービス」の視聴、FacebookやInstagramなどのSNSを利用している人が多い
このような特徴から、日頃より様々なことに情報感度高くアンテナを張り、広い視野をもって様々なことに意欲をもちながら主体的に行動するような人の姿がイメージされます。
とはいえ、このような特徴を個人が急に身につけようとしても、かなりハードル高く感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
社会貢献意識、ソーシャル・エンゲージメントを高めるコツのようなものはあるのでしょうか。
社会人になってからや、学生時代の 「経験」 がカギ
今回の調査でもう一つ明らかになったことが、「経験」と、ソーシャル・エンゲージメントとの関連性です。
社会人になってからさまざまな経験をつむことが、ソーシャル・エンゲージメントにプラスの影響が見られたというものです。
その経験とは、例えば以下のようなことだといいます。
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- ・手触り体験:仕事や社会参加における直接的な身体感を伴う経験
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- -汗水たらして頑張った経験
- -上司と、対面で本気で議論したり、本心で語り合ったりした経験
- -競技会・イベント・祭りへの参加
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- ・見渡し経験:組織や仕事を俯瞰してみる経験
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- -他部門や外部組織と連携しながら仕事をした経験
- -長期にわたるプロジェクトの遂行
- -部下や後輩の育成・相談役
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- ・踏み出し経験:仕事以外での越境経験
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- -ボランティア
- -生活圏が変わる引っ越し
- -PTA活動
その他にも様々な経験があり、これらの中で一つ以上「経験がある」という人も多いのではないでしょうか。
なお、社会人にいたる手前の学生時代の経験としては、主体的な学びをしていること、職業につながるような学びをしていること、多様な人との交流があることがソーシャル・エンゲージメントにおいてプラスの関連が見られたといいます。
経験がソーシャル・エンゲージメントに影響し、それが働く上での幸せにもつながるのだとすれば、目の前の仕事、やるべきことにただフォーカスするだけでなく、時には未経験のことに挑戦してみる、ともすれば少し面倒と感じるようなこともやってみる、そして心の壁を取り払って人と対峙してみる。こうしたちょっとした意識の持ちかたや行動の変化が、未来の私たちのウェルビーイングへとつながるのかもしれません。
「ベネッセ ウェルビーイングLab」 では今後もさまざまな人がウェルビーイングに生きるための気づきやヒントとなるような情報をお届けしていきます。
※「ベネッセ教育総合研究所」が、立教大学経営学部 中原淳教授・パーソル総合研究所とともに実施する、『ハタチからの「学びと幸せ」探求ラボ』では、未来を生きる高校生~若手社会人が、未来をワクワクして描き、意欲を持って学びや行動へと向かうための様々な調査を継続的に実施しています。